高速かつ持続可能な定量ラマン分光技術による錠剤およびカプセルの非破壊試験

透過型ラマン分光分析(TRS)はラマン分光分析の一種です。ラマン分光法によるバルク材料の定量分析を可能にする独自の光学系構造を持ち、経口投薬剤形など光を拡散散乱する小さな分析対象物の組成の特性解析に用いられています。透過型ラマン分光分析は、医薬品の定量分析において確立されている分析技法を補完する、高感度で高速な非破壊分析法です。

TRS 技術およびお客様のアプリケーションについてのご質問は、アジレントの分光分析専門チームにお問い合わせください。
 

お問い合わせ

透過型ラマン分光分析とは

透過型ラマン分光分析(TRS)では、サンプルにレーザー光を照射し、反対側で透過光のラマン信号を収集します。TRS の概念は 1960 年代に初めて考案されました。2000 年代初頭には、英国 Rutherford Appleton Laboratory の Pavel Matousek 教授率いるチームにより、錠剤やカプセルの分析への応用が開始されました。TRS が、最終剤形中の医薬品有効成分(API)や賦形剤を非破壊で定量分析するのに最適なツールになると見込んでのことでした。

後に、Matousek 教授は Cobalt Light Systems 社の最高科学責任者となりました。同社は 2017 年にアジレントに買収され、現在、TRS はアジレントのラマン型分光分析ポートフォリオの重要な役割を担っています。
 



透過型ラマン分光分析の仕組み

透過型ラマン分光分析(TRS)では、空間オフセット型ラマン分光分析(SORS)と同様に、拡散散乱媒体を通過する光の特性を利用します。TRS では、レーザー照射の反対側にラマン検出器が配置されます。レーザー光は錠剤、カプセル、懸濁液、粉末などの拡散媒体中の成分を通過し、その過程でランダムに拡散します。散乱点でラマン光子が生成され、それが出射時に収集されます。従来型の後方散乱ラマン分光法とは異なり、TRS では分析対象物の組成全体の化学情報が得られます。さらに、分析対象物の中心部からのサンプリング量が増加するため、錠剤コーティングやカプセルシェルによる寄与が最小限に抑えられるという利点もあります。



透過型ラマン分光分析のアプリケーション

TRS のアプリケーションは、医薬品製造プロセスの多くの領域におよびます。例えば、結晶化度分析、安定性のモニタリング、製造プロセスの評価、錠剤・カプセル・粉末中の混合物の定量などに活用できます。

透過型ラマン分光法は、最終剤形および混合物の高速定量分析に最適です。GMP 製造施設では、製品のリリース前に含量均一性(CU)試験の実施が求められます。錠剤およびカプセルの含量均一性試験、アッセイ、および医薬品同定には、標準分析法として世界的に HPLC が用いられていますが、利用できる分析法はこれだけではありません。TRS を用いれば、QC ラボのワークフローを改善できます。湿式化学法より試験時間やデッドタイムが数日から数週間短縮され、消耗品が不要なうえ、少ない工数で済みます。
 




医薬品の含量均一性試験のコストを削減

定量透過型ラマン分光分析は高感度でありながら高速です。一般に、トレイにセットした 200 個の錠剤またはカプセルの含量均一性試験、アッセイ、および同定がわずか数分で完了します。医薬品の QC に TRS を導入することによる利点は、Grünenthal Pharma 社のケーススタディ(または Grünenthal Pharma 社のウェビナー)で詳しくご覧いただけます。また、TRS による投資対効果の計算ツールでは、現在のワークフローからの節約額をご確認いただけます。




透過型ラマン分光メソッドの開発および教育

透過型ラマン分光メソッドの開発

規制当局によるリリース試験の承認に必要な基準に沿って定量透過型ラマン分光メソッドを開発するための手引き書をご用意しました。実行可能性から日常的な使用にいたるメソッド開発プロセスについて、基本レベルのユーザーが理解しやすい構成で説明しています。

メソッド開発ガイドをダウンロード

透過型ラマン分光法に関する FAQ

透過型ラマン分光分析による含量均一性試験、結晶多形分析、結晶化分析、および定量分析と Agilent TRS100 に関する FAQ への回答をご確認いただけます。TRS 技術、メソッド開発、医薬品 QC のコスト削減、製品の適合性、規制状況などの基礎がわかります。

TRS の FAQ はこちら

透過型ラマン分光分析のアプリケーションリソース

透過型ラマン分光法に関する資料ライブラリ

透過型ラマン分光分析について学べるアジレントのアプリケーションノート、技術概要、入門書、ケーススタディのライブラリです。

TRS の資料はこちら

透過型ラマン分光法に関する動画とセミナー

TRS のアプリケーションに関する動画、製薬会社ユーザー様のプレゼンテーション、ソフトウェアのデモビデオなどをご視聴いただけます。

ビデオを見る

透過型ラマン分光法に関するオンデマンドウェビナー

製薬業界の専門家とアジレントの演者による TRS に関するライブウェビナーおよびオンデマンドウェビナーをご視聴いただけます。

ウェビナーを見る

独自のラマン分光技術を開拓

ラマン分光法には 2 種類あります。その 1 つが、アジレントのラマン分光分析ポートフォリオの中核技術となっている透過型ラマン分光法、もう 1 つが空間オフセット型ラマン分光分析(SORS)です。これらの重要な分析技法の詳細については、主な SORS および TRS に関する査読済み論文の一覧をご覧ください。


ラマン分光分析の詳細

ラマン分光分析とは

ラマン分光分析の基礎のほか、ラマン散乱、ラマン効果、ラマン分光装置の仕組みなどに関する FAQ をご覧いただけます。

基礎を学ぶ

ラマン分光法のアプリケーションガイド

アジレントのハンドヘルド型およびベンチトップ型ラマンアナライザを活用したラマン分光分析のアプリケーションをご紹介します。
 

ラマン分光法のアプリケーションはこちら

空間オフセット型ラマン分光法(SORS)

不透明な層または容器越しに内容物を分析できる唯一の方法です。

SORS の詳細


お問い合わせ

TRS、ラマン分光分析、その他の分子分光分析法について技術スペシャリストにご相談いただけるほか、製品のデモンストレーションや見積り依頼などもお問い合わせいただけます。下記のフォームにご入力ください。アジレント担当者よりご連絡いたします。

お問い合わせ