基本設計:設計上、アジレントの ICP-MS と ICP-QQQ は多くの特性を共有し、Agilent ICP-QQQ(半導体仕様以外)は市場をリードする Agilent シングル四重極 ICP-MS と同等のマトリックス耐性と堅牢性を備えています。これらの装置は、高エネルギープラズマ(1 % という低い CeO/Ce 比を達成)と超高マトリックス導入(UHMI)エアロゾル希釈技術(総溶解固形分 25 % までのマトリックス耐性を実現)を特長とし、ルーチンアプリケーションに最適です。

Diagram showing aerosol flow through a tube from a spray chamber with dilution gas port. Labeled sections show processed aerosol moving to plasma. Arrows indicate gas

図 1. エアロゾル希釈用ガスポート付き Agilent UHMI コネクタ。UHMI は、液滴を希釈して細分化することでエアロゾルの乾燥と分解を促進します。引用元文献はこちら

ソフトウェア:どちらのタイプの装置も、役立つツールを豊富に搭載した Agilent ICP-MS MassHunter ソフトウェアからコントロールします。これらの機能はメソッド作成(メソッドウィザード、IntelliQuant)、設定(EPA メソッドなどのプリセットメソッド)、最適化(レンズのオートチューニング)、データ取り込み、レポート作成、装置のメンテナンス(EMF)をサポートし、装置の使用を簡略化します。

A scientist wearing safety goggles and blue gloves operates a computer connected to analytical lab equipment. The lab is orderly and high-tech.

図 2. Agilent ICP-MS および ICP-QQQ をコントロールする Agilent ICP-MS MassHunter ソフトウェア

コリジョンリアクションセル(CRC)技術:Agilent ICP-MS と Agilent ICP-QQQ には CRC として共通のオクタポールリアクションシステム(ORS4)が搭載されており、ヘリウム(He)コリジョンモード、高エネルギーヘリウムモード(HEHe モード)、または反応性のセルガスを用いたモードでの動作が可能です。ヘリウムモードは、重要な微量元素の正確な分析を妨げる多くの多原子(分子)干渉イオンを運動エネルギー弁別(KED)と衝突誘起解離(CID)によって解消します。

He KED モードは、セル出口でイオン間のエネルギー差を利用して、より大きな多原子干渉イオンを、より小さく可動性の高い単原子の分析対象イオンから分離します(大きな干渉イオンほど高頻度で He 原子と衝突し、エネルギーを失います)。このモードを使用することで、プラズマガスまたはサンプルマトリックス由来のほとんどの干渉を抑えられますが、HEHe や反応性のセルガスが必要になることもあります。例えば、ケイ素(Si)、リン(P)、硫黄(S)などの元素の微量測定がそれに該当します。また、He KED モードでは、分析対象イオンにオーバーラップする同重体イオン(質量が同じ)や二価イオン(M++)を分離できません。

ディスクリートサンプリング:Agilent AVS MS アクセサリは、ICP-MS および ICP-QQQ の生産性を高めることができ、ハイスループットのルーチンアプリケーションに最適です。

Agilent ICP-MS と Agilent ICP-QQQ の違い

単一イオンマスフィルタ:Agilent シングル四重極 ICP-MS は、選択された数種類の分析対象イオンに対する干渉イオンを水素(H2)など単純な反応性ガスによって除去するルーチン操作に用いられています。ただし、多様なマトリックスの複雑なサンプルを分析するために、酸素(O2)やアンモニア(NH3)など、さらに反応性の高いガスを CRC に導入すると、多くのイオンがセルガスと反応してプロダクトイオンを形成します。

これらの不要な多原子イオンはほかの分析対象イオンに干渉し、その分離以外の問題をさらに引き起こす可能性があります。図 3(セルガスとして O2 を使用したセレン(80Se)の分析)のように、分析対象イオン自体がセル内で 80Se16O+ を形成するような場合もあります。このプロダクトイオンは質量電荷比(m/z)が 96 であり、m/z 80 のイオンの干渉を受けることなく測定できます。ただし、m/z 96 の干渉イオン(Zr、Mo、Ru)が、シングル四重極 ICP-MS による Se(SeO として測定)の測定結果に偽陽性の誤差をもたらす可能性があります。

Diagram illustrating ion separation of analyte ion selenium using reaction gas oxygen. All ions enter the cell. Selenium forms SeO. Only ions with a mass-to-charge of 96 pass through a quadrupole filter at m/z 96. The ions include SeO but also Zr, Mo

図 3. シングル四重極 ICP-MS。Se はリアクションセルで O2 リアクションガスと反応し、m/z 80 の干渉イオン(Ar2+、Gd++、Dy++)とは質量数の異なる 80Se16O+ になり、m/z 96 で測定されます。ただし、Zr、Mo、Ru はすべて m/z 96 でオーバーラップするため、Se の正確なデータは得られません。

2 つのイオンマスフィルタ:この課題を解決するため、Agilent ICP-QQQ には、もう 1 つの四重極マスフィルタ Q1 が CRC の前に搭載されており、セルに進入して反応性のセルガスと反応するイオンが選別されます(図 4)。セルを出たイオンは、検出器に送られる前に第 2 の四重極(Q2)でフィルタリングされます。

このタンデム質量分析計(ICP-MS/MS)の動作により、CRC 内の化学反応が厳密にコントロールされるため、多様なサンプルのルーチン測定に有効な分析法となっています。第 2 の四重極が追加されることで、ICP-QQQ のアバンダンス感度(AS)も向上し、ピークテールのオーバーラップが抑えられます。

: Diagram depicting ion separation in a triple quadruple mass spectrometer with MS/MS. Arrows show ions moving through quadrupoles (Q1 and Q2), with reaction gas (oxygen) between them. Se is measured as

図 4. ICP-QQQ の場合 : Q1 により、m/z 80 のイオンのみがセルに進み、その他すべてのイオンは排除されます。80Se+ はセル内で O2 リアクションガスと反応して 80Se16O+ になります。Q2 では、SeO+ が m/z 96 で測定されます。Zr、Mo、Ru は Q1 を通過しないので干渉しません。

ICP-QQQ のルーチンアプリケーション

多くのルーチンサンプル試験では、Q1 をマスフィルタではなくイオンガイドとして機能させ、ICP-QQQ を He KED モードでシングル四重極 ICP-MS のように使用することができます。

ただし、分析対象イオンが同重体や M++ 干渉イオンなど強い干渉を受ける場合は、Q1 により、一度に CRC に進入するイオンを特定の m/z を持つものに制限し、その他すべてのイオンを排除することができます。この MS/MS 構成では、リアクションモードで干渉イオンをより厳密にコントロールできるため、複雑なマトリックスでも正確な測定結果が得られます。

Cd や Hg など、これまで干渉とは無縁と考えられていた高質量の元素に対しても、ICP-QQQ は威力を発揮します。カドミウムは MoO に、また水銀は WO および WOH の影響を受ける可能性があるからです。モリブデンやタングステンは多くのサンプルに検知可能なレベルで含まれており、分析結果の正確さを損なう原因になります。これらの問題は、ICP-QQQ で反応性のセルガスを用いることで解決できます。

このテーマに関する次回の記事では、ルーチン試験での ICP-QQQ のアプリケーション例を取り上げます。次号の ICP-MS ジャーナルをご覧ください。