未知の脅威への理解

マイクロプラスチックはプラスチック由来の合成固体粒子やポリマーマトリックスで、大きさは 1 µm から 5 mm にわたり、水に溶けません。マイクロプラスチックは現在分析対象となっており、深刻さがますます深まっていますが、環境へのリスクはまだ十分に理解されていません。世界保健機構(WHO)は最近、マイクロプラスチックの科学研究をさらに推し進め、その毒性の可能性に対する理解を深めるよう声明を発表しました。アジレントは、環境水サンプル中のマイクロプラスチックの広範な特性解析が可能な、さまざまな技術に対応する機器を提供しています。

水中のマイクロプラスチックの分析に関する質問がある場合や、アジレントの担当者からの連絡をご希望の場合は、下記よりお問い合わせください。

ご登録/お問い合わせ

マイクロプラスチック分析:FAQ

目に見えないプラスチック汚染は、各国の政府機関や学術機関にとっての懸念となっています。モデルによる予測では、海洋表層のプラスチック破片の約 14 % がマイクロプラスチックです。環境や健康への影響を把握することが喫緊の課題となっています。

「マイクロプラスチック」および「ナノプラスチック」という用語は、ポリマー粒子をサイズで区別するために使用されます。マイクロプラスチックは、サイズが 1 µm~5 mm のポリマー粒子と定義されています。さらに、小さい(1~1,000 µm)マイクロプラスチックと大きい(1~5 mm)マイクロプラスチックに分類できます。

体内に入り込み有害となる可能性があるこれらの粒子は、より大きな破片の UV による分解、機械的な分解、または生物学的分解によって形成されます。さらには 1~1000 nm というナノスケールの粒子であるナノプラスチックにまで微細化される可能性があります。

マイクロプラスチックとナノプラスチックはすべて小さい粒子ですが、分析の観点から見ると、広大なサイズ範囲に及びます。したがって、単一サンプル中に存在しうる範囲の粒子を正確に特性解析し、定量化するためには、複数の分析技法と機器が必要になります。

現在の研究では、小さいマイクロプラスチック粒子ほど、生物学的、毒物学的関連性が高くなることが示唆されています。つまり、粒子が小さいほど、大きなリスクをはらんでいるということです。このように、熱心な研究の取り組みを通じて、健康に対するマイクロプラスチックの負の影響が明らかになりつつあります。一方で、ナノプラスチックがより小さくなり、それらが生態系へとさらに深く侵入し得るということは、負の影響がさらに大きくなる可能性があることを示しています。

マイクロプラスチック汚染をめぐる規制状況は急速に発展しています。規制フレームワークを形作るために必要な回答をもたらす、長期にわたる研究が実施中であったり、開始する予定となっており、特にカリフォルニア州と欧州委員会が積極的に活動しています。これらの研究から得られるサンプリングメソッドおよび検査ガイドラインにより、マイクロプラスチックの影響を受ける業界に対し、コンプライアンスを遵守するために迅速に対応することを求める、規制の作成が促進されることが予測されます。

この質問に対する回答は、分析でどのような情報を求めているかによって異なります。ラボによって、サンプルに含まれるプラスチックの総質量を評価しなればならない場合もあれば、サイズ、形態、化学的特性など、個々の粒子の詳細な情報に関心がある場合もあります。

現在、すべての回答を提供できる単一の技術はありません。したがって、それぞれが異なるものの相補的な情報を提供する、2 つの大きなカテゴリの技術が適用されています。

質量分析計と組み合わせたガスクロマトグラフィー(GC/MS)と最適なサンプル導入技術を使用すれば、ポリマー、添加物、サンプルに含まれるその他の物質の総量について、高い精度で詳細な情報を得ることができます。しかし、粒子数、サイズ、表面積など、粒子そのものに関する情報は提供できません。

赤外線(IR)ラマン顕微分光法などの分光分析法では、特にサイズ、形状、化学的特性など、個々の粒子に関する詳細情報を得ることができますが、総質量の情報は提供できません。

GC/MS は熱分解装置(パイロライザ)または熱重量分析装置(TG)と組み合わせることが可能です。熱分解では、ガスクロマトグラフ(GC)の注入口に直接接続されたマイクロ加熱炉が使用されます。高分子量化合物は、より分子量の小さなフラグメントに熱分解され、直接 GC カラムに導入されてクロマトグラフィー分離され、質量分析計(MS)に移送されて、検出されます。GC/MS と組み合わせて、熱重量分析装置(TGA)を使用することで、熱抽出脱着(TED)を実行することが可能です。TED は、より均質なサンプルの導入、分析の自動化、さらなる堅牢性の向上という点において、熱分解法よりも多くのメリットがあります。

分光分析法の中では、FTIR 顕微鏡(イメージングおよび非イメージング)、ラマン顕微鏡(ATR-FTIR)、Laser Direct Infrared(LDIR)分光分析が一般的に使用される技法です。FTIR は、基本的なシステムを比較的低コストで導入できる、確立された技法です。非常に長い分析時間で大量のデータを処理する必要があったり、現実的な粒子サイズが最小でも約 50 µm であったり、複数の制約があります。

ラマンベースの技術では、小さい粒子をより良好に分析できますが、ターゲット粒子を分解しうる強力なレーザーを使用します。色素性粒子の分析は、さらなる問題が生じる可能性もあります。

マイクロプラスチックを対象に、LDIR は FTIR の主な制約の多くを克服します。主要なワークフローステップを自動化することにより、分析時間を数日や数時間から数分へと短縮することが可能です。また、同定を向上させる高品質の画像とともに、粒子の化学的特性、サイズ、形状に関する正確な情報も提供します。

質量ベースの分析は、例えば μg/L や ppm など、サンプルの単位体積あたりのポリマー種の量を提供します。

分光メソッドは粒子の特性解析に焦点を当て、多くの場合にレポート要件によって求められる、サンプル中の粒子のサイズ、形状、化学的特性に関する情報を提供します。さらに、一部の試験標準で要求される、任意のサイズ範囲に含まれるポリマー x の粒子数など、統計情報も報告できます。例えば、EC 指令では、以下の範囲における粒子数に従って、粒子を定量化することを求めています。

  • 20 μm ≤ 投影面積円相当径 < 50 μm
  • 50 μm ≤ 投影面積円相当径 < 100 μm
  • 100 μm ≤ 投影面積円相当径 < 300 μm
  • 300 μm ≤ 投影面積円相当径 < 1000 μm
  • 1000 μm ≤ 投影面積円相当径 < 5000 μm

サンプル前処理は、マイクロプラスチックの分析における大きな課題の 1 つです。マイクロプラスチックは環境中のいたるところに存在しており、ラボ環境も例外ではありません。したがって、汚染を最小限に抑制するために、分析のサンプル前処理を行う際に、予防措置を講じなければなりません。

分析の前に、バックグラウンドマトリックス材料からマイクロプラスチックを分離する必要があります。抽出手法はマトリックスの性質に応じて大きく異なります。サンプルを抽出するときにラミナー換気フードを使用することで、浮遊微小粒子による汚染を最小化できます。さらに、すべての試薬(Milli-Q 水も含む)は、使用前にろ過して汚染がないか確認する必要があります。ガラス容器や実験用白衣などの PPE も汚染源となる可能性があり、対処する必要があります。

最も懸念されるのは、周囲環境による汚染です。汚染による影響は、分析ワークフローの重要な側面を注意深く管理することにより、最小限に抑えることができます。

  • マイクロプラスチック粒子は、その大きさと重さにより、空気中に浮遊する可能性があります。そのため、空気の純度を最大限に高め、空気中の汚染物質レベルを最小限に抑えることが重要です。これは、サンプルを抽出するときにラミナー換気フードを使用することで可能です。
  • マイクロプラスチックは厳重にモニタリングされていないため、Milli-Q 水を含むすべての試薬にマイクロプラスチックが含まれます。したがって、すべての試薬は使用前にろ過して汚染がないか確認する必要があります。 
  • ガラス容器にも汚染のリスクがあるため、使用前に少なくとも Milli-Q ろ過水で洗浄する必要があります。可能であれば、すすぐ前にガラス器具を炉の中に入れることが推奨されます。 
  • もう 1 つの汚染源として考えられるのは、実験着などの個人用保護具です。したがって、綿 100 % の実験着を着用し、小さな繊維を取り除くのに糸くずローラーを使用することが推奨されます。

- Learn more about the methods to address common microplastic analysis challenges here.

マイクロプラスチック分析のための必須ツールは、3 つの基本的なワークフローステップを対象としています。

  • ろ過 – 適切な真空ポンプを備えた真空ろ過装置、さまざまなメンブレンフィルタ、シーブなど。
  • 空気の純度 – ラミナーフローフード、HEPA フィルタ、空気清浄機、掃除機、綿の実験着など。  
  • サンプル前処理と分析 – 超純水源、ライブラリ生成/検証のためのポリマーサンプルキット、粒子サイズ検証のためのマイクロスフェア、分析のための FTIR および LDIR 機器(必要に応じてその他の機器)。
 
マイクロプラスチック分析ラボを準備するための必須ツールおよび検討事項に関する詳細情報は、こちらでご参照ください。

Micro- and Nanoplastics: A Deep Dive into a Global Issue

Current research suggests that microplastics can further degrade into nanoscale particles, called ‘nanoplastics’, which measure in the range of 1 to 1000 nm. Agilent is prioritizing the study of micro- and nanoplastics and is committed to developing tools to help combat plastic particle pollution. Read our media backgrounder on micro- and nanoplastics for a simple introduction into a growing global concern, and the solutions Agilent provides for microplastic analysis.



High-quality Images and Spectral Data Faster than Ever Before

Find the needle in the haystack. The automated Agilent 8700 LDIR Chemical Imaging System lets you obtain high-quality images and spectral data faster than ever before. So, you can perform confident large-scale microplastic studies and monitoring activities. 



Webinar Series: Microplastics Analysis Just Got Easier

Fast and accurate analysis of microplastics is essential to fully understand the extent of the problem and develop solutions. 




マイクロプラスチック分析アプリケーション

Accurate Microplastic Analysis of Bottled Drinking Water by LDIR

See how we accurately characterized microplastics present in bottled drinking water using an Agilent 8700 LDIR Chemical Imaging System and Cary 630 FTIR

See how

What Type and Size of Microplastics Are in Your Sample?

Watch how the Agilent 8700 LDIR makes it easier to characterize and quantify microplastics that impact the environment and food chain.

Watch video

From a Customer’s Perspective

Hear from Lars Hildebrandt, Analytical Chemist at the Institute of Coastal Research, Helmholtz-Zentrum Geesthacht, on his microplastics research.

今すぐ見る

環境サンプル中のマイクロプラスチックの測定

Agilent GC/MSD 用いた熱抽出脱着-ガスクロマトグラフィー/質量分析(TED-GC/MS)は、マイクロプラスチックの自動定量に最適です。

詳細はこちら

環境サンプル中のマイクロプラスチックの定量

このアプリケーションノートでは、Agilent 5977B GC/MSD を用いた熱分解 GC/MS による低濃度のマイクロプラスチックの定量について取り上げています。

詳細はこちら

熱分析メソッドによるマイクロプラスチックの検出

このウェビナーでは、Ulrike Braun 博士が、GC/MS を用いた自動熱抽出法によるマイクロプラスチック粒子の分析について説明します。

ウェビナーを見る(英語)



環境試験アプリケーションなら、アジレントにお任せください

アジレントへのお問い合わせ方法については、「お問い合わせ」ページをご覧ください。 サインアップいただいたお客様には、教育イベント、ウェビナー、製品など、環境試験アプリケーションに関連する最新情報をアジレントからお届けします。

ご登録 /お問い合わせ

DE44476.5800347222