FDA、発がん性物質汚染への懸念から胸やけ治療薬「ザンタック」をリコール

2020 年 4 月、米国食品医薬品局(US FDA)は処方薬および市販薬(OTC)を含むすべてのラニチジン製剤の即時リコールを発表しました。ラニチジン製剤は、販売名ザンタックとして広く知られている極めて一般的な医薬品です。ザンタックはヒスタミン-2 遮断薬で、胃酸過多が原因で起こる胸やけなどの諸症状の予防および治療に使用されます。今回のリコールは、COVID-19 の流行により外出自粛が要請される中、未開封のザンタック薬を所持している何百万人もの消費者に影響を及ぼしたと考えられます。このため、FDA はソーシャルディスタンスが求められているこの時期は、未使用のザンタックを薬局に返却するのではなく、自宅で安全に処分するよう推奨し、その方法を提示しています。

発がん性汚染物質として知られるニトロソアミンを検出

2019 年に FDA が詳細なラボ試験を実施した結果、ラニチジン製剤中に N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)またはニトロソアミンとして知られる発がん性汚染物質が許容量を超えて検出されました。FDA は世界各国の規制当局と連携して、国際的な基準となるニトロソアミンの 1 日の摂取許容量を定めました。ニトロソアミンは塩漬け肉や焼いた肉、乳製品、野菜などの食料品や水にもよく含まれています。しかし、医薬品に 1 日の摂取許容量を超える濃度のニトロソアミンが含まれていることが判明した場合は、発がんリスクが生じるおそれがあるため、FDA は製造業者が必要に応じて当該医薬品をリコールするよう推奨しています。

変異原性不純物

FDA の調査に加えて、複数の独立研究機関による最近の検査では、ニトロソアミンを室温以上の温度で保管すると、経時的にニトロソアミンの量が増加しうることが分かりました。その結果、服用者は 1 日の摂取許容量を超えるニトロソアミン不純物に曝露する可能性が生じます。

例えば、夏の車内に放置したザンタック錠を服用した場合、高温の車内ではザンタック錠のニトロソアミン濃度が上昇する可能性があるため、予期せぬ有害な健康リスクに曝されるおそれがあります。この調査結果を受けて、FDA はザンタックとすべての後発品を市場から回収することを決定し、公衆衛生に関連するリスクについて製造業者、消費者、医療従事者に警告を発しました。

ラニチジン製剤で検出された NDMA の他にも、高血圧および心不全の治療薬で、医薬品有効成分(API)としてバルサルタン、ロサルタン、またはイルベサルタンを含む一部のアンジオテンシン II 受容体拮抗薬(ARB)において、許容できない量の NDMA およびそれ以外のニトロソアミン(NDEA、NDIPA、NEIPA、NDBA)による汚染が確認され、2018 年にリコールが実施されました。

製造工程においても発生するニトロソアミン不純物

変異原性不純物

ニトロソアミン不純物は医薬品有効成分(API)の製造工程中にも、いくつかの状況下で発生することがあります。これには、汚染された原材料や中間生成物が使用される場合や、合成中に亜硝酸とアミンが同時に存在することで、このような不純物が意図せず副生成物として生成される場合などがあります。結果として、製薬会社は API および医薬品に含まれる変異原性不純物を正確に同定および定量するよう、規制機関のより厳格な監視下に置かれるようになりました。

変異原性発がん物質と見なされるニトロソアミン不純物

NDMA などのニトロソアミンは、「cohort of concern」と呼ばれる極めて強い変異原性発がん物質のグループに属します。これらの変異原性不純物は微量であっても DNA と反応することで不可逆的な損傷を引き起こし、発がん反応に至る可能性があります。このため、WHO の国際がん研究機関は、ニトロソアミンを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」物質に分類しています。このような状況から、高度な分析ツールを用いて API および医薬品に含まれるニトロソアミンなどの変異原性不純物を確実に評価し、公衆衛生を守ることが求められています。

ニトロソアミン不純物の検出を可能にするアジレントのソリューション

WHO は必須医薬品や健康製品に含まれるニトロソアミン不純物に関する医薬品警告情報を発行し、サルタンおよびラニチジン製剤中のニトロソアミンの評価には、米国 FDA または欧州評議会の公的医薬品試験検査機関(Official Medicines Control Laboratories:OMCL)ネットワークが発表した分析試験メソッドを採用するよう推奨しました。FDA、OMCL、および世界各国の規制機関は、アジレントの高感度なシングル四重極 GC/MSトリプル四重極 GC/MS、およびトリプル四重極 LC/MS ソリューションを用いた検証済み分析試験メソッドを開発および発表しました。これらのソリューションにより、ARB およびザンタック製剤中のこれまでは同定されなかった NDMA およびその他のニトロソアミン不純物をそれぞれ確実に検出および定量することができます。

変異原性不純物

今後も先発品および後発品の創出が予想されますが、上市する前に医薬品に含まれる有害汚染物質を徹底して検出し、回避することが重要です。高性能の分析試験ツールやメソッドの発展に伴い、医薬品メーカーと規制機関は医薬品の品質および関連する安全性情報を継続的に評価できるようになりました。

アジレントの革新的な LC/MS および GC/MS ソリューションを利用すれば、ニトロソアミンなどの医薬品不純物の確実な検出および定量が可能となり、安全かつ有効な医薬品を実現することができます。アジレントのアプリケーションケミストは、ラニチジン製剤中のニトロソアミン不純物を極めて低い検出限界で確実かつ正確に測定するために、高感度の Agilent 6470 LC/トリプル四重極 LC/MS および Agilent 6546 LC/Q-TOF をベースにしたメソッドを開発しました。