Access Agilent 2014年4月号

飲料水に含まれる超低濃度の異味・異臭関連物質の検出

By Joe Weitzel
Agilent Global Environmental Manager

飲料水の異味・異臭は、世界中の水道において、消費者から寄せられる苦情の主因の 1 つです。これらの原因化学物質には、味覚閾値および臭気閾値が極めて低い物質もあり、超低濃度の存在でも消費者が感知するがあります。しかしながら、健康影響が存在するわけではありません。このような残留化学物質の同定では、味覚および臭気閾値が極めて低いことから、とても困難な場合があります。たとえば、ジオスミンの臭気閾値は約 15 ng/L、2-メチルイソボルネオール (MIB) は 20 ng/L です。2-エチル-5,5-ジメチル-1,3-ジオキサン (2-EDD) および 2-エチル-4-メチル-1,3-ジオキソラン (2-EMD) の閾値は、いずれも 10 ng/L です。

人工および天然由来の臭い

飲料水の異味の原因には、人工の産業廃棄物に由来するものから、シアノバクテリア由来のジオスミンや微細菌由来のバイオメチル化フェノール化合物などの微生物活動に由来する天然の副生成物まで、さまざまな物質が存在します。生物由来の臭いは、夏場に発生する水生の菌類が直接的な原因になる場合や地表水中の有機物の腐敗に起因することもあります。苦情として感知される臭いの種類も、甘い臭いや石灰臭、薬品臭、泥臭さなど、多岐に渡ります。

官能試験の異味・臭気パネルと機器検査のGC/MS高速分析スクリーニングメソッドを組み合わせれば、異味・異臭の原因を効率的に特定できます。この記事では、不快な味や臭いが感知された飲料水を分析するためのメソッドを紹介します。このメソッドは、Agilent 7890B GCAgilent J&W HP-5ms ウルトライナート GC カラムAgilent 7000C トリプル四重極 GC/MS システムを組み合わせて開発されたものです。

水サンプル (10 ng/L) の標準試料クロマトグラム、内標準なし。

図 1. 水サンプル (10 ng/L) の標準試料クロマトグラム、内標準なし。(図を拡大)

水サンプル (10 ng/L) の標準試料クロマトグラム、内標準なし。
 

1. 2-エチル-4-メチル-1,3-ジオキソラン

6. 2-イソプロピル-3-メトキシピラジン

11. 2,3-ジクロロフェノール

16. 2,6-ジブロモフェノール

2. フェノール

7. 3-クロロアニソール

12. 2-イソブチル-3-メトキシピラジン

17. ジオスミン

3. 2-クロロフェノール

8. 4-クロロアニソール

13. 2-メチルイソボルネオール

18. 2,4,6-トリクロロアニソール

4. 2-エチル-5,5-ジメチル-1,
    3-ジオキサン (2-EDD)

9. 2-クロロアニソール

14. 2,3,4-トリクロロアニソール

19. 2,4,6-トリブロモアニソール

5. 2-ブロモフェノール

10. 2,4-ジクロロフェノール

15. 2,4,6-トリクロロフェノール

20. 2,4,6-トリブロモフェノール

図 1. 水サンプル (10 ng/L) の標準試料クロマトグラム、内標準なし。

水試料中ジオスミンの分析例。ジオスミン濃度 1.1 ng/L (S/N = 128/1) 。 Agilent MassHunter ワークステーションソフトウェア画面。

図 2.水試料中ジオスミンの分析例。ジオスミン濃度 1.1 ng/L (S/N = 128/1) 。 Agilent MassHunter ワークステーションソフトウェア画面。(図を拡大)

水試料中ジオスミンの分析例。ジオスミン濃度 1.1 ng/L (S/N = 128/1) 。 Agilent MassHunter ワークステーションソフトウェア画面。
 

図 2. 水試料中ジオスミンの分析例。ジオスミン濃度 1.1 ng/L (S/N = 128/1) 。 Agilent MassHunter ワークステーションソフトウェア画面。

水試料 10 L をジクロロメタン100 mL で抽出しました。抽出液を疎水性膜に通した後、0.5 mL まで蒸発濃縮しました。抽出濃縮液に内標準の d8-ナフタレンを添加しました。トリプル四重極 GC/MS 分析しました。40 ng/L の品質管理用スパイクの抽出試料も分析しました。

このメソッドで、20 種類の異味。異臭関連化合物が分析できます。検出下限は、すべての化合物で 1 ng/L 以下です。図 1 には、10 ng/L 標準試料を分析したクロマトグラムを示します。
検量線範囲はすべての化合物で 0~50 ng/L で、標準試料濃度は 0、10、20、30、40、50 ng/L です。図 2 には、ジオスミンの検量線を表示した Agilent MassHunter ワークステーションソフトウェアのスクリーンショットです。実試料の分析結果とシグナル/ノイズ比 (S/N) がハイライト表示されています。ジオスミンの分析結果 (1.1 ng/L) は、検出下限の 1 ng/L に近い値ですが、S/N で 128:1 が得られています。この結果は、英国の飲料水検査局の NS30 標準試料に合わせて完全なメソッドのバリデーションを実施すれば、一部の化合物では 1 ng/L よりも低い検出下限が得られることがわかります。このメソッドおよび結果の詳細については、アジレント文献 5991-3721EN をご参照ださい。

飲料水の保全

飲料水を前処理して Agilent 7000C トリプル四重極 GC/MS システム分析すれば、優れた検出下限が得られます。このメソッドでは、検出下限はすべての化合物で 1 ng/L 以下でした。この分析例は、アジレントの水分析ソリューションの一例です。アジレントの水分析ページでは、さらに多くの情報を提供しています。最新の水質アプリケーションブローシャもダウンロード可能です。