概要
一体型デュアルセルシステムを搭載し、オプションの m-レンズを装着した Agilent 9500 トリプル四重極 ICP-MS では、高純度チタン(Ti)中の微量不純物を正確に定量することが可能です。MS/MS により Ti 由来のスペクトル干渉を抑制することで、きわめて低いバックグラウンド相当濃度が達成されました。また、添加回収試験と数時間にわたる安定性評価により高い精度と再現性が実証され、9500 ICP-QQQ が高純度物質の品質管理に適していることが明らかになりました。
一体型デュアルセルシステムを搭載し、オプションの m-レンズを装着した Agilent 9500 トリプル四重極 ICP-MS では、高純度チタン(Ti)中の微量不純物を正確に定量することが可能です。MS/MS により Ti 由来のスペクトル干渉を抑制することで、きわめて低いバックグラウンド相当濃度が達成されました。また、添加回収試験と数時間にわたる安定性評価により高い精度と再現性が実証され、9500 ICP-QQQ が高純度物質の品質管理に適していることが明らかになりました。
高純度チタンは、一般に純度 99.99 % 以上の Ti 金属として定義され、ハイテクアプリケーションに不可欠な材料ですが、微量の汚染物質でも性能低下の原因になります。半導体製造では、スパッタリングターゲットとして用いられる Ti 中の不純物が薄膜の均一性、電気特性、およびデバイスの信頼性を損なわせる可能性があります。同様に、航空宇宙グレードの Ti 製部品に汚染物質が含まれていると、機械的強度と長期耐久性に悪影響がおよぶことがあります。
そのため、純度仕様では、金属不純物(Mg、Cr、Fe、Ni、Cu、Zn)の濃度を 1 mg/kg(ppm)以下に抑制することが重視されていますが、これらの元素を確実に捕捉するには ICP-MS など高感度の分析技法が必要となります。このレベルの純度を達成するには、元のサンプルに含まれるサブ ppm の不純物を検出できなければならないからです。とは言え、ICP-MS では、Ti²⁺、TiO⁺、および Ti 水素化物のスペクトル干渉により Na、Mg、Cu、Zn、V などの分析対象元素を正確に測定することが特に難しいという課題もあります。
これらの問題を克服するのが、独自の MS/MS 構成、デュアルセルシステム、オプションの m-レンズを搭載し、優れた干渉除去、超低バックグラウンド、長期安定性を実現する Agilent 9500 ICP-QQQ です。先日実施した研究では、9500 ICP-QQQ を使用して、200 ppm の Ti マトリックス中の微量不純物を定量し、ハイテクアプリケーションにおける厳格な純度管理に対するこのシステムの適合性を評価しました。
9500 ICP-QQQ にオプションの m-レンズと Agilent I-AS オートサンプラ を装着し、Agilent OpenLab ICP-MS ソフトウェアバージョン 1.1 から制御しました。サンプル導入システムは、I-AS プローブを備えた MicroFlow PFA ネブライザ(自己吸引モードで動作)、温度制御された石英製スプレーチャンバ、および内径 2.5 mm のインジェクタ付き石英製トーチで構成しました。サンプルの調製時に HF を使用したため、m-レンズ用として、銅製ベース白金チップサンプラコーンとニッケル製ベース白金チップスキマコーンを使用しました。
チューニングプロセスとメソッドを簡略化するために、セル条件として H2 および NH3 + H2 の 2 種類のみを適用しました。H2 ガスと NH3 ガス(10 % が NH3、残り 90 % が He)を DCS に導入することで、選択的なイオン-分子反応によりアルゴン(Ar)および Ti 由来の干渉成分を除去できます。メークアップガスは、ノーガスモードにおいて CeO/Ce 比が約 0.8 % になるように調整し、その他のプラズマおよびレンズパラメータは、低いバックグラウンドレベルと高い安定性を実現するように最適化しました(表 1)。

高純度チタン粉末(99.99 %、< 100 メッシュ)は、富士フイルム和光純薬社(日本)から購入しました。このチタン粉末は、ASTM E2371-21a ガイドラインに従って高純度の酸で分解しました。今回の研究では、以下の 3 種類のサンプルを調製しました。
検量線は、200 ppm Ti 溶液に標準溶液を添加して作成しました。QC サンプルは、Ti マトリックスサンプルに標準溶液を 200 ng/kg(ppt)となるように添加して調製しました。
ワークフローの概要を図 1 に示します。
200 ppm の高純度 Ti 溶液中の元素 25 種の定量結果を表 2 に示します。Ti マトリックスの BEC から調製ブランクの BEC を差し引いて、各元素の寄与を合計することにより、総金属濃度は 31 ppm と計算されました。つまり、主要な金属不純物の合計濃度が 0.01 % 未満であることが確認されました。この結果は、この物質の規定純度(> 99.99 %)と一致しています。

Ti 粉末に、分解前に Mg および Fe 以外の元素を元の Ti サンプル 1 g あたり 1 μg(1 ppm)添加しました。Mg と Fe については、Ti サンプル 1 g あたりそれぞれ 15 μg(15 ppm)および 25 μg(25 ppm)添加しました。200 ppm Ti 分解溶液は 5000 倍に希釈して 9500 ICP-QQQ に導入したため、Mg(3000 ppt)と Fe(5000 ppt)を除くすべての元素について実際に定量された濃度は 200 ppt でした。表 3 に添加回収率の結果を示します。すべての元素について ±10 % 以内の回収率が得られており、相対標準偏差(RSD)値は多くの元素に置いて 1–3 % の間で、全元素では 5 % 未満でした。

図 2 は、分析シーケンス中に 6 回測定された QC サンプルの回収率を示しています。ほとんどの元素の回収率は ±10 % 以内であり、すべての元素の回収率は ±20 % 以内でした。この結果から、Ti マトリックスサンプルを数時間にわたり連続測定する際の 9500 ICP-QQQ の安定性、堅牢性、およびマトリックス耐性が確認されました。
T今回の研究により、高純度チタンの品質管理に適した堅牢性と信頼性を備えたツールとしての、m-レンズ搭載の Agilent 9500 ICP-QQQ の柔軟性が明らかになりました。最適化されたリアクションガス条件と MS/MS 制御により、Ti²⁺、TiO⁺、および Ti 水素化物の干渉を効果的に除去し、未希釈の Ti 分解液中の元素 25 種をサブ ppm レベルで定量することができました。また、添加回収試験では高い精度と優れた再現性が示され、安定性評価結果から、厳格な品質管理アプリケーションに対するこのシステムの堅牢性と適合性が確認されました。
Yamashita, Rentaro 著「Agilent 9500 ICP-QQQ を用いた高純度チタンの分析」(Agilent publication、5994-9024JAJP)
DE-015930