Agilent ICP-MS システム は、高い信頼性と堅牢性、使いやすさ、そして優れた性能を備え、多くの環境試験ラボの標準装置となっています。オートサンプラ、高速ディスクリートサンプリングシステム、自動希釈装置をシームレスに統合できるため、ラボではサンプル数の増加や分析時間の短縮にも対応できます。
独自のデュアルセルシステム(DCS)コリジョンリアクションセルを搭載した Agilent 9500 トリプル四重極 ICP-MS(ICP QQQ)と AVS MS を組み合わせれば、規制遵守のために要求される精度を維持しながら、さらに高速で大量の分析ワークフローにも対応できます。DCS をアドバンスドヘリウムモード(AHM)で動作させることで、幅広い分析成分に対して卓越したデータ品質を実現できるため、日々多数のサンプルを処理するラボにとって理想的なソリューションです。AHM により、複数のチューンモード(ノーガス、He、高エネルギー He)が 1 つの最適化された設定に統合されます。ガスの切り替えが不要になるうえ、取り込み時間が 33 % 以上短縮されます。
今回の研究では、EPA 6020 B のワークフローに適合した高速で堅牢な多元素 ICP-MS メソッドを使用して、この効率的なアプローチを環境水のハイスループット分析に適用しました。
実験方法
装置構成とソフトウェアを活用したメソッド開発
分析には、標準ニッケルコーン、MicroMist ガラス製同軸ネブライザ、超高マトリックス導入(UHMI)、およびオプションの Agilent AVS MS(0.75 mL ループ)を装着した Agilent 9500 ICP-QQQ に Agilent SPS 4 オートサンプラを接続して使用しました。UHMI でのエアロゾル希釈により、多様なサンプルに対するマトリックス耐性が高まります。また、AVS MS により、大量分析時の各サンプルへの装置の曝露時間が最小限に抑えられ、長期堅牢性が向上します。
分析者によるメソッド開発を支援するため、Agilent OpenLab ICP-MS ソフトウェアで汎用の AHM のみのプリセットメソッドと UHMI 4 プラズマ条件を選択して、装置パラメータを自動的にロードしました。UHMI-4 条件下では、最大 4 % の総溶解固形分(TDS)を含むサンプルを測定できるため、500 ppm までの濃度で分析の長期安定性が保たれます。イオンレンズ電圧は、感度を最大化するようにソフトウェアによって最適化され、適用されました。
分析のワークフロー
メソッド精度を確認するために、一般的な環境サンプルの代表として NIST および HPS の水、土壌、堆積物の認定標準物質(CRM)を使用しました。ルーチンラボの条件をシミュレートするために、5 種類の環境水サンプルを追加のマトリックス適合なしで調製しました。標準溶液および品質管理(QC)溶液は、1 % HNO₃ と 0.5 % HCl のマトリックスで調製しました。2 時間にわたる標準溶液、QC 溶液、およびサンプルの分析シーケンスを図 1 に示します。「サンプル」を繰り返し分析し、10 サンプルごと「定期的 QC」を自動的に挿入しました。
結果と考察
検出性能
1 % HNO3 と 0.5 % HCl のブランクを 10 回測定し、その 10σ にもとづいて定量下限(LOQ)を計算しました。その結果を表 1 に示します。すべての LOQ が低 ppt から低 ppb の範囲内でした。

サンプルスループットが 1.5 倍に向上
一体型 AVS MS を搭載した 9500 ICP-QQQ により、DCS を AHM で使用して 26 種類の分析成分と 5 種類の内部標準(ISTD)を測定しました。合計 141 個のサンプルの分析が 138 分で完了し、各サンプルにかかった測定時間は 1 分未満でした。比較のため、同様のサンプルシーケンスを Agilent シングル四重極 ICP‑MS で分析したことろ、サンプルあたり約 1 分 30 秒かかりました1。この結果から、このワークフローによりサンプルスループットがシングル四重極 ICP-MS メソッドの 1.5 倍になることが明らかになりました。
精度:環境 CRM の分析
分析シーケンス全体にわたり、水、土壌、および堆積物の 3 種類すべての CRM を複数回分析しました。低濃度の天然水サンプルをシミュレートするため、NIST 1643e は 10 倍に希釈して測定しました。土壌および堆積物については、10 倍および 50 倍に希釈してから測定しました。各分析元素について、平均濃度、相対標準偏差の割合(%RSD)、および平均回収率を計算しました。その結果を表 2 に示します。どの CRM サンプルについても、すべての元素の結果が認証値とよく一致していました。ただし、河川堆積物 A の Co だけは例外で、回収率が 100 ± 10 % の範囲外でした。10 倍希釈と 50 倍希釈のどちらのサンプルも範囲外だったことから、この CRM が汚染されていた可能性が考えられます。

‡ 鉛の同位体 206+207+208 の合計として報告
* 1/10:1/10 希釈溶液の濃度、1/50:1/50 希釈溶液の濃度
高マトリックスサンプル分析時の安定性/堅牢性
図 3 に示すように、141 個のサンプルおよび QC 溶液における ISTD の回収率は 2 時間の分析にわたり 80~110 % の範囲内に維持されました。この結果から、AHM で動作する 9500 ICP-QQQ の優れた安定性が実証されました。
このグラフには、OpenLab ICP-MS ソフトウェアの IntelliQuant 機能により取得した、各サンプルの総マトリックス固形分(TMS)の値も示されています。IntelliQuant は全質量スキャンを約 2 秒で実行し、サンプルの半定量プロファイルを迅速に提供します2。
TDS は TMS 値の 2 倍と推定されることから、シーケンス中に、TDS 含有量が 1000 ppm を超える複数のサンプルが 9500 ICP-QQQ に繰り返し導入されたことになります。TDS がこのように高濃度であるにもかかわらず、ISTD の信号は安定した状態を保っています。この結果は、困難なマトリックス条件下における、UHMI 搭載の 9500 ICP-QQQ の優れた堅牢性を実証しています。
生産性が向上
Agilent 9500 ICP-QQQ で DCS を AHM モードで動作させ、AVS MS を装着することで、高速かつ高精度で堅牢なハイスループットの環境分析が実現します。今回の研究により、CRM で検証された精度と長期安定性を保ちながら、サンプルスループットを 1.5 倍に向上できることが明らかになりました。
参考文献
- Yamanaka, K. Wilbur, S. Maximizing productivity for high matrix sample analysis using the Agilent 7900 ICP-MS with ISIS 3 discrete sampling system 5991-5208EN
- Agilent ICP-MS IntelliQuant Software
詳細情報
Kondo, Satoshi 著「デュアルセルシステムとアドバンスドバルブシステム機能を搭載した ICP-QQQ による環境水の分析」(Agilent publication、5994-9125JAJP)
DE-015929






