ラボのルーチン作業を自動化することにより、生産性が大幅に向上し、繰り返しの手動プロセスによるエラーを低減できます。正確で信頼性の高い分析結果を得るためには、標準溶液の適切な調製を確実に行うようにすることが不可欠です。
ADS 2 自動希釈システムは 1 つまたは複数の検量線用標準液から検量線を作成し、また ICP-MS MassHunter ソフトウェアの新しい自動検量線作成ツールが、転記ミスによる不正な濃度の入力に関連する問題をさらに低減します。ADS 2 は設置面積が非常に小さく、図 1 に示されているように、導入にあたりラボのレイアウトを再構成する必要はありません。

すばやく簡単なメソッド設定を実現する自動検量線作成アシスタント
図 2 に示した自動検量線作成アシスタントツールには、一般的な Agilent ICP-MS 多元素原液のデータベースが含まれています。市販の標準液でも、完全にカスタムした標準液でも簡単に簡単にデータベースに追加し、必要な時にいつでも利用できます。
検量線は、原液を選択し、ADS 2 に実行させる希釈を定義するだけで簡単に作成できます。
次に、ICP-MS MassHunter が検量線レベルを計算し、サンプルリストに事前に入力します。

ADS 2 による希釈リストに基づく希釈
ADS 2 を使用して、希釈リストに基づく希釈(測定前に事前定義された値でサンプルまたはサンプルバッチを希釈)を簡単に実行できます。
目的の希釈係数(2~400 倍)を入力するか、「Autodilution」列の下にある ICP-MS MassHunter サンプルリストに直接インポートします。
バッチ内の各サンプルに希釈リストと同じ希釈係数、または異なる希釈係数を指定でき、最良の柔軟性でアプリケーションに対応できます。
ADS 2 による再希釈
再希釈では、検量線範囲を超えるサンプル測定濃度など、特定の条件に基づきサンプルを自動で希釈します。
再希釈の動作は ICP-MS MassHunter ソフトウェアの QC コントロールパネル内で定義でき、オプションのインテリジェントシーケンスモジュールにも対応しています。
範囲外の希釈濃度は、最高濃度の標準溶液の係数として簡単に定義できます。例えば、最高濃度の標準溶液の 2 倍である場合にのみ、サンプルを希釈するなどです。
再希釈はまた、内部標準が指定の QC パラメータに収まらない場合に実行することもできます(例えば、予想外に高マトリックスであったサンプルによってマトリックス抑制が生じた場合など)。
希釈リストにより ICP-MS MassHunter で簡単に希釈を設定
希釈リストでは、サンプルごとに、再希釈をトリガーする元素を定義します(図 3)。希釈リストは、ICP-MS MassHunter のサブリストと連携して、またはサブリストとは別に使用することができます。サブリストでは、選択したサンプルを、別の下位選択された分析対象物とともに測定できます。対象元素のみを分析することにより分析時間が短縮され、データが整理される可能性があります。
希釈リストの任意の元素が QC 限度を超過した場合に、再希釈がトリガーされます。希釈リストにない元素の場合、限度を超えても希釈はトリガーされませんが、測定とレポートは実行されます。

未希釈サンプルの測定時間は変化なし
未希釈サンプルを分析中、ADS 2 は希釈ループをバイパスし、AVS MS スイッチングバルブ(以前の ISIS 3)のサンプルループを直接充填します。つまり、未希釈サンプルで希釈ループを充填するための余分な時間がかからず、キャリアシリンジの調製がなく、ADS 2 キャリア溶液が不要であるということです。
特に、平均的なサンプルバッチでは 80~90 % のサンプルが未希釈で分析されるという点を考慮した場合に、この時間短縮は非常に重要です。
ICP-MS MassHunter ソフトウェアには ADS 2 最適化のためのツール群が搭載
自動希釈とバルブ注入システムは、設定、最適化、トラブルシューティングを行うのが簡単ではない場合があります。ICP-MS MassHunter は包括的なツールを備えており、モジュールで簡単に ADS 2 を設定したり使用したりできます。
「Conditions Calculator」にループサイズやオートサンプラプローブチューブの長さなど、いくつかの基本的な事項を入力すると、サンプル取り込みのためのすべてのタイミングを自動で設定できます。
高度な洗浄オプションが用意されており、ユーザーは、オートサンプラ洗浄ポートのみの使用、混合された試薬の洗浄、または完全手動による洗浄オプションを選ぶことができます。
「Timing Monitor」では、すべての取り込み、測定、洗浄のタイミングのほか、信号安定性を視覚的に確認でき、オペレータは自信をもって設定を実行できます(図 4)。
最後に、自動化システムテストにより、簡単な合否のメッセージを含む希釈性能レポートが提供されます。

超高マトリックス導入(UHMI)エアロゾル希釈
UHMI システムは、液相希釈ではなくエアロゾル相を使用する希釈オプションで、Agilent ICP-MS に標準搭載されています。 クリーンでドライなアルゴンガスを使用し、最大 100 倍までの固定値によって、標準を含め、あらゆる溶液を希釈します。UHMI のジェット希釈インタフェースがエアロゾルストリームを効果的に破砕し、必要な希釈ガスの量を削減します。つまり、ネブライザガス流量を比較的「正常」のまま維持できるため、サンプル洗浄の性能を向上させることが可能です。 UHMI は非常にシンプルで、ICP-MS MassHunter ソフトウェアによりオンデマンドでオン/オフを切り替えることができます。

技術の組み合わせで、さらなる柔軟性を実現
UHMI は ADS 2 や AVS MS と連携して、または別々に機能させることができます。すべてで希釈が必要な高マトリックスサンプルバッチの場合、すべてのサンプルに対して一定の固定希釈を実行できます。総合的なソリューションを実現する ADS 2 を追加することで、ICP-MS に自動検量線作成機能を提供したり、必要に応じてオンデマンドで、サンプル毎に追加の希釈リストに基づく再希釈を実行したりできます。
UHMI が固定希釈を実行することで、ADS 2 はすべてのサンプルで希釈を行う必要がなく、時間が浪費されないため、追加の時間や希釈が不要です。したがって、廃棄物が削減され、サンプルスループットが向上します。サンプルが範囲を超える場合(またはオペレータが追加の、指定した希釈を定義した場合)にのみ、ADS 2 により再希釈が実行されます。 表 1 に ADS 2 と UHMI の両方の特長をまとめて示します。
これら 2 つの技術は相互に完璧に補完しあうため、いずれかを選択する必要はありません。
単一のメソッド1 と高マトリックスの土壌サンプル2 を使用した、さまざまな低マトリックスサンプル/高マトリックスサンプルの分析のために、連携して機能するこれらの技術については、ADS 2 ジャーナルの記事を参照するか、下記の参考文献のアプリケーションノートリンクを直接クリックしてください。
