新製品 Agilent 5977B (超高感度イオン源 HES 搭載)の Agilent 農薬分析用 GC/MS アナライザによる農薬分析

Melissa Churley および Bruce Quimby、アジレント シニアアプリケーションサイエンティスト

包括的な農薬スクリーニングを行う場合、複雑なマトリックス中の何百もの農薬について,フルスキャン GC/MS メソッドを用いて正確に確認できる迅速な方法が必要です。コスト削減も要求される中、より多くの農薬の同定および定量を、より短時間で実行することが求められます。そのようなニーズに対応するため、アジレントでは、微量に存在する農薬のスクリーニングを実現する包括的なソリューションを提供しています。

Agilent デコンボリューションレポート作成ソフトウェアと、農薬および内分泌かく乱物質のリテンションタイムロッキングデータベースにより、レポート作成がスピードアップし、スクリーニングされるターゲット化合物数を拡大します。新しい超高感度イオン源 (HES) を搭載する新しい Agilent 5977B GC/MSD によって、さらに分析時間を短縮して、より多くの農薬を検出・同定できます。

超高感度イオン源を用いてさらに多くの農薬の存在を明らかに

環境サンプルおよび食品サンプル中の農薬残留物のルーチン分析には、信頼性の高い同定と高感度検出、および迅速なレポート作成が要求されます。Agilent農薬分析用 GC/MS アナライザは、NIST 自動マススペクトルデコンボリューション同定システム (AMDIS) プログラム [1] を用いるデコンボリューションレポート作成ソフトウェア (DRS) と、 農薬と内分泌かく乱物質のデータベース [2] を使用して、レポート作成時間を短縮し、スクリーニングされるターゲット化合物数を拡大することで、これらのニーズに対応します。

さらに、独自のキャピラリ・フロー・テクノロジー (CFT) ののバックフラッシュ機能により、サイクル時間の短縮化、ケミカルバックグラウンドの低減、稼働時間の最適化を実現します。HES を搭載した Agilent 5977B GC/MSD を導入することにより、イオン源でイオン化されて四重極マスアナライザに送られるイオン数を増やすことで、スクリーニング性能が向上します。このようにレスポンスが向上すると、シグナルが増加するため、感度が向上します。スクリーニングプロセスでの優れたライブラリ一致によって、より多くのターゲットを検出することができます。

HES を使用した場合、食品サンプルにおける 10 ng/g の検出レベルでの検出と同定が、フルスキャンモードで可能になりました。10 ng/g および 100 ng/g の濃度で 200 を超える農薬を添加したトマトの QuEChERS 抽出物の DRS 分析によって実証しました。10 ng/g および 100 ng/g という濃度は、各農薬の 10 pg および 100 pg を注入したことに相当します。10 ng/g の濃度では、エクストラクタ EI イオン源を使用した場合は何も同定されませんでしたが、HES の使用では 38 個のターゲット化合物が同定されました。100 ng/g の濃度では約 2 倍のターゲット化合物が同定されました (表 1)。

エクストラクタEIイオン源
(atune)
超高感度EIイオン源
(オートチューン)
10 ng/g 100 ng/g 10 ng/g 100 ng/g
AMDIS スコアが 80 以上のターゲットの数 0 91 38 164
NIST ヒットの内訳
第 1 位でヒット 0 63 26 144
第 2 位でヒット 0 12 7 14
それ以下の順位でヒット 0 16 5 6
添加なし、ヒット数 3 位 以下 2* 4** 2* 8***

*フタル酸ジエチル、ベンゾフェノン
** ベンジルアミド、ベンゾフェノン、キントゼン代謝物 (硫化メチルペンタクロロフェニル)、インドキサカルブおよびジオキサカルブ分解生成物 [フェノール、2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)-]
***フタル酸ジエチル、ベンゾフェノン、ホノホス、フェノール、フタル酸、ジ (オクト-3-イル) エステル、フタルイミド、キントゼン代謝物 (硫化メチルペンタクロロフェニル)、インドキサカルブおよびジオキサカルブ分解生成物 [フェノール、2-(1,3-ジオキソラン-2-イル)-]

表 1. エクストラクタ EI イオン源 (EXR) および HES を使用して、10 ng/g および 100 ng/g でスパイクしたトマト中で同定された AMDIS ターゲットの数。HES の方が大幅に多くのターゲットを同定しました。

図 1. AMDIS によるトマト中の 10 pg のフルシラゾール (m/z 233) の分析で、優れた一致が見られます。

図 1. AMDIS によるトマト中の 10 pg のフルシラゾール (m/z 233) の分析で、優れた一致が見られます。

表 1 では、注入された農薬の量は、それぞれ 10 pg と 100 pg です。NIST ヒット数の内訳 (分布) を、1 回目、2 回目、3 回目以降のヒットのカテゴリーについて示します。同定したターゲットのうち、トマトに添加されなかったが、AMDIS 一致スコアが 80 以上で NIST ヒット回数が 3 回以下であるターゲットも示しています。ソースごとのチューニング条件を括弧内に示します。

図 1 に、フルシラゾールの AMDIS 分析の例を示します。化合物のライブラリでの一致による未処理スペクトルと抽出スペクトルが含まれています。AMDIS 一致係数は 84、レポートされた NIST 逆一致スコアは 73 でした。

より多くのターゲットを迅速に同定

超高感度イオン源を搭載する Agilent 5977B GC/MSD を搭載した Agilent 農薬分析用 GC/MS アナライザにより、農薬のスクリーニングのスピードと正確さがさらに向上します。デコンボリューションレポート作成ソフトウェアと組み合わせた場合は、フルスキャンモードを使用して、10 ng/g という低い濃度でも食品中の多くのターゲットを明確に同定できるようになりました。

手間のかかるメソッド開発が必要なシステムから、メソッドがセットになった農薬分析用のアナライザへの移行をご検討されているお客様は、Agilent農薬分析用 GC/MS アナライザ の詳細をご確認ください。

References

  1. NIST Standard Reference Database 1A, NIST/EPA/NIH Mass Spectral Library (NIST 14) and NIST Mass Spectral Search Program (Version 2.2), User’s Guide.
  2. Philip L. Wylie, "Screening for 926 Pesticides and Endocrine Disruptors by GC/MS with Deconvolution Reporting Software and a New Pesticide Library," Agilent publication 5989-5076EN.