迅速なサンプル前処理による分析時間の大幅な短縮

SARS-CoV-2 の感染の防止または治療に関する研究では、モノクローナル抗体(mAbs)の開発が注目されています。この抗体は人体で作られるもので、ウイルスに対抗するための強力な武器となります。モノクローナル抗体の開発では、数百~数千もの変異体をスクリーニングして、調査対象となる主要候補物質を特定することが重要です。

抗体の凝集に関する研究

研究者はモノクローナル抗体の候補物質の選択中に、抗体の凝集傾向を調査しました。凝集体は不要な副産物であり、患者に注入されると重篤な症状を引き起こす場合があります。また凝集体の形成により、感染防止に必要な抗体の活性部分がブロックされる可能性があります。凝集するモノクローナル抗体の候補物質は通常、さらに調査するために除外されます。

研究者は現在、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いてモノクローナル抗体をスクリーニングし、その凝集傾向を調べています。Agilent 1260 Infinity II バイオイナート LC と AdvanceBio SEC カラムを用いると、サンプルあたりの分析時間を 3 分程度にまで短縮できます。ただし、数千ものサンプルを分析する場合、SEC だけでは時間がかかります。

3 秒間のプレスクリーニングステップを追加することで、モノクローナル抗体スクリーニングを高速化できます。

Agilent Cary Eclipse の分光分析製品担当マネージャである Matt Quinn は、モノクローナル抗体の凝集傾向を迅速にプレスクリーニングする手法の開発について、次のように述べています。

「1 月のパンデミック発生時に、数千ものサンプルを分析する必要性が急激に高まりました。当社はすでに既存技術を活かした 3 秒間のプレスクリーニングステップの開発に取り組んでいました。

迅速なサンプル前処理による分析時間の大幅な短縮

Agilent Cary Eclipse 蛍光分光光度計と蛍光色素を組み合わせることで、高速プレスクリーニング手法が生まれました。蛍光色素をモノクローナル抗体候補物質に添加することで、抗体に凝集傾向があるかどうかを研究者がすぐに判定できます。この色素は特にモノクローナル抗体の凝集体と結合するため、凝集するほど蛍光信号の測定値が高くなります。」

ステップを 1 つ追加することで、時間のかかる SEC スクリーニングの対象となる候補物質の数を減らし、分析時間全体を短縮できます。Cary Eclipse システムでは、凝集のスクリーニングをサンプルあたり約 3 秒で実行できます。この方法で候補物質をスクリーニングすることで、除外された 1 つの物質につき、約 5 分間の SEC 分析時間を節約できることになります。Cary Eclipse マイクロプレートリーダーには、最大 96 個のサンプルをまとめてセットできます。サンプル前処理は迅速かつ簡単に実行でき、システム操作のトレーニングはほぼ必要ありません。

迅速なサンプル前処理による分析時間の大幅な短縮

24 個のサンプルバッチの分析では、SEC のみを使用する場合と比べて、分析時間を 70 % 以上短縮できます。


分析時間を短縮するには

蛍光分光法によるモノクローナル抗体凝集分析ソリューションは、ハイスループットなプレスクリーニングによって、Agilent 1260 Infinity II バイオイナート LC SEC システムで開発される最適化されたアジレントワークフローを補完します。プレスクリーニングステップを追加することで、SEC のみを使用した場合よりもモノクローナル抗体スクリーニング時間が大幅に短縮され、SARS-CoV-2 に対して有効な抗体をより早く見つけられる可能性があります。

参考文献:

  • Ratanji KD, Derrick JP, Dearman RJ, Kimber I (2014).Immunogenicity of therapeutic proteins: Influence of aggregation.Journal of Immunotoxicology, 11:99–109.

参考資料:


クローン選択ワークフローの詳細情報については、次の資料を参照してください。