いつ、どこで COVID-19 が感染拡大するかを、もし予測できたら?

ウイルスの軌跡だけでなく、感染の波の場所と時期を予測します。

パンデミック収束への道のり


「まったく不満はありません。この機器はまったく新しいもののように感じます。サービスも保証も優れています。私たちに後悔はありません」
- Denina Simmons

これはまさに、カナダのオンタリオ工科大学で生物学の教鞭をとる Denina Simmons 助教授が研究対象としていることです。

Simmons 助教授は、COVID-19 の原因となるウイルスの検出、および人口における COVID 急増の予測の可能性を判断するために、微量の SARS-CoV2 についてオンタリオのダラム地域全域の廃水サンプルを分析しました。同助教授による研究の初期の結果で、この地域で陽性者数の急増が報告されるおよそ 10 日前に、廃水に含まれるウイルスが急増していることが明らかとなりました。

「このことが証明されれば、これを初期の警告信号として捉えることができます」と、Simmons 助教授は試験プロトコルについて述べています。試験プロトコルでは、研究現場での SARS-CoV2 の存在を示すタンパク質存在量を測定するために、アジレントの液体クロマトグラフィー四重極飛行時間型質量分析計(LC/Q-TOF MS)を採用しています。

これは、2019 年後半に学部で同分析計を購入した際に Simmons 助教授が考えていたことではありません。この分析計を使用して、魚タンパク質と代謝物に含まれる環境汚染物質の濃度を測定することを計画していましたが、それが叶うことはほぼありませんでした。大学の予算に、新しい機器が含まれていなかったからです。

しかし、アジレント認定整備済機器(Certified PreOwed Products: CPO)プログラムにより、購入が実現したのです。機器をアップグレードするラボから古くなった機器を買い戻し、修理調整して再販売するこのプログラムは、お客様により広範な選択肢をもたらしてきました。その優位性には、より強化された化学製品管理のほか、環境に配慮したサプライヤであるという点などがあります。

一方で、お客様は品質やサポートを犠牲にすることなく、価格面での恩恵を得られます。「これは完全に、価格の問題でした」と、中古システムを購入する大学の判断について、Simmons 助教授は述べています。また同大学は、認定整備済みのガスクロマトグラフィー質量分析装置(GC/MS)を購入したほか、プログラムを利用して、今後液体クロマトグラフィートリプル四重極質量分析装置(LC/QQQ MS)を購入する予定です。

しかし、機器が納入されたとき、Simmons 助教授の仕事は魚タンパク質の研究だけではありませんでした。オンタリオ工科大学理事会のあるメンバーが、オーストラリアで実施中の SARS-CoV2 に関する廃水分析のレポートを紹介し、同大学の研究者たちに同様の研究を行うことを推奨したのです。

パンデミック収束への道のり
写真:提供:Denina Simmons 助教授。

Simmons 助教授は即座にその意見に同調し、研究を自分流にアレンジしました。

その時点までの研究では、廃水に含まれる SARS-CoV2 のリボ核酸(RNA)の測定に焦点を当てていました。

「しかし、RNA を測定できるなら、タンパク質を測定できるはずだと思ったのです。通常、タンパク質は RNA よりも多く含まれており、より安定的であるからです」と、Simmons 助教授は説明しています。

パンデミック収束への道のり

Simmons 助教授の研究は 9 月に、オンタリオ州の 5 つの都市(エイジャックス、クラリントン、ピカリング、オシャワ、ウィットビー)の廃水処理センターからのサンプルの分析で始まりました。

サンプルを析出および遠心分離した後に、残留している半固体のパレットをペプチド(アミノ酸の小さな鎖)へと分解しました。次に LC Q-TOF MS によりこれらのペプチドの質量と配列を測定しました。それらを用いることで、SARS-CoV2 ウイルスのものを含め、既知の遺伝子の配列とタンパク質にマッピングすることができます。

「実に見事です」と、Simmons 助教授は語っています。多くの研究者たちは、SARS-CoV2 の RNA や、ウイルスを人間の細胞と結合させる、棒状の突起部であるスパイクタンパクのみに注目しているからです。この手法は、ウイルス検出の可能性を向上させます。つまり、特定の地域における COVID-19 の感染拡大に準備する時間的猶予を保健当局に与えられる可能性があります。ただし、廃水分析のメリットはこれに留まりません。

「感染と関連している可能性がある、ウイルスではなく人間のタンパク質が 1 つか 2 つ確認されています。しかし、さらなる調査が必要です」と、Simmons 助教授は語りました。COVID-19 以外にも拡大する可能性を秘めた手法であるとし、廃水を分析することで、他の種類のウイルスが見つかる可能性を示唆しています。

「もし上手く行き、政府機関がこのシナリオから学習すれば、今後のモニタリングが変化する可能性があります」

そして、これはすべて、アジレントの CPO プログラムによって可能になったと Simmons 助教授は述べています。「私のチームがこの作業を実施できる唯一の理由が CPO プログラムです。このプログラムがなければ、アジレントのシステム(LC/Q-TOF MS)を購入することは不可能だったでしょう」と言います。「まったく不満はありません。この機器はまったく新しいもののように感じます。サービスも保証も優れています。私たちに後悔はありません」

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