少数のサンプルで微量または超微量濃度を測定

グラファイトファーネス AAS と ICP-MS

1 日に少数のサンプル中に微量または超微量(ppt)濃度で含まれる数種類の元素を測定するラボは、その分析法をグラファイトファーネス原子吸光分光分析法(GFAAS またはグラファイトファーネス AAS)と誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)から選択できます。

GFAAS で測定できる元素が 48 種類であるのに対し、ICP-MS ではさらに多い 86 種類の元素を測定できます。また、GFAAS では測定できず、ICP-MS で測定可能な一般的な元素として、Br、C、Ce、Cl、F、Gd、Hf、Ho、I、La、Lu、Nb、Nd、Os、Pr、Re、S、Sc、Sm、Ta、Tb、Th、Tm、U、W、Y、および Zr があります。ただし、ICP-MS でも、C に対しては十分な検出下限を達成できず、F の分析には専用の ICP-QQQ アプローチが必要です。各分析法で測定できる元素については、電子書籍『適切な原子分光分析技法の選び方』(このページの末尾にリンクを掲載)で詳しく説明しています。

金属の微量元素分析に関しては、GFAAS には、ICP-MS より購入価格やランニングコストが低いという利点があります。一方、ICP-MS は、コストは高くなりますが、分析時間がはるかに短く、直線ダイナミックレンジが大幅に広く、干渉を受けにくくなります。元素の種類やサンプル数が多い場合、ICP-MS は、サンプルあたり 2~3 分の取り込み時間ですべての元素を測定できるため、より高速でコスト効率に優れています。これに対し、GFAAS では、サンプル中の元素が 1 つずつ測定され、各元素の測定に約 2~3 分かかります。つまり、GFAAS で各サンプルに含まれる 5 種類の元素を 3 回繰り返し測定する場合は、サンプルあたり 30~40 分かかります(元素 5 種類 x 3 回の繰り返し測定 x 測定あたり 2 分)。また、1 台の GFAAS 機器により 24 時間で行える 3 回の繰り返し測定は約 240 回です。これは、240 サンプルであれば 1 種類の元素、60 サンプルであれば 4 種類の元素、24 サンプルであれば 10 種類の元素に相当します。

金属の微量元素分析に GFAAS と ICP-MS のどちらを使用する場合も、それ相応の知識と操作スキルが必要です。両方とも自動測定が可能なため、サンプルをオートサンプラにセットしたら、分析完了まで機器に任せることができます。一般的な QA/QC ラボの多くで GFAAS が選択されていますが、ラボを拡張し、将来的なサンプル数の増加に確実に対応できるようにする必要がある場合は、より多くの元素を測定でき、サンプルスループットに優れた ICP-MS なら、成長を支えることができるでしょう。


GFAAS の特長

GFAAS は、以下のようなラボに最適です。

  • 微量濃度の定量を必要とし、サンプル数および元素数が 1 日約 240 回の測定回数(24 時間で元素 4 種類 x 60 サンプルなど)を超えない(3 回の繰り返し測定を 1 回の測定としてカウントした場合)
  • 測定成分のおおよその濃度範囲がわかっており、その濃度がサンプルごとに大きく変動しない
  • 測定する必要のある元素が数種類のみ
  • 設備投資を抑え、ラボの設備費を最小限にし、運用コストを削減したい



注:アジレントでは、フレーム原子吸光機器と GFAAS を組み合わせた Duo 原子吸光システムも提供しています。このシステムでは、低濃度の元素が GFAAS で測定され、より高濃度の元素はフレーム AAS で測定されます。サンプルを両方の分析法で同時に測定できるため、サンプルスループットが向上します。ただし、フレーム原子吸光機器は自動測定ができないため、分析はスタッフが機器を監視できるときに限られます。

ICP-MS の特長

ICP-MS は、以下の場合に最適です。

  • サンプルあたり 10 種類以上の元素を測定する必要があるか、将来的に測定する元素数が増加する可能性がある
  • GFAAS では測定できない元素を測定する必要がある
  • 1 日あたり 100 サンプルを超えているか、サンプルバッチ数が 200 を超えている
  • 未知濃度で存在している可能性のある元素を測定する必要があるか、元素の濃度がサンプルによって大きく変動する



グラファイトファーネス AAS と ICP MS の比較

以下の表に、2 つの分析法を相互に比較します。GFAAS の主な利点は、機器の価格とランニングコストが低く、それほどメンテナンスが必要ないことです。一方、ICP-MS の利点は、高速分析が可能で、はるかに多くの元素をより低濃度で測定できることです。

GFAAS
製品ページ
ICP-MS
製品ページ
相対的な価格 ¥¥ ¥¥¥¥
相対的なサンプルあたりのコスト ¥¥ ¥¥¥
相対的な感度
レビュー SelectScience SelectScience
1 日あたりの最大サンプル数1 60
(元素 4 種類)
1200
(元素 50 種類以上)
測定のダイナミックレンジ 10 ppt ~ 1000 ppb 1 ppt 未満 ~ 1000ppm
相対的な必要サンプル量
相対的なサンプル中の許容固形分
元素の測定 連続 同時
測定可能な元素数 48 86
相対的な日常メンテナンスの必要性
相対的な必要オペレータスキル 2
自動分析 可能 可能
Part 11/Annex 11 GMP コンプライアンス 適合
(オプションソフトウェアを使用)
適合
(オプションソフトウェアを使用)
仕様
相対的な動作時消費電力
寸法(mm – 幅 x 奥行き x 高さ) 1030 x 600 x 5903 730 x 600 x 595
重量 119 kg 100 kg
ガス要件 99.99 % アルゴンまたは 99.99 % 窒素 99.99 % アルゴン5
保証期間4 12 か月 12 か月
アクセサリ
オートサンプラ 付属 オプション
水冷システム 冷却水の供給が必要 必要、付属していない

  1. 記載されているサンプル数を達成するには、機器にスイッチングバルブを装着する必要があります。
  2. ルーチン分析用にシンプルなインターフェース(ICPGo)とプリセットメソッドが用意されています。これにより、オペレータに要求されるスキルレベルが大幅に軽減されます。
  3. 高さは、選択するモデルによって異なります。
  4. アジレントでは、さまざまな延長保証およびサポートオプションをご用意しています。
  5. 半導体用化学薬品中の不純物を測定する場合など、汚染を管理する必要のあるアプリケーションでは、純度 99.999 % 以上のアルゴンが必要になることがあります。

関連情報

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アジレントの電子書籍『適切な原子分光分析技法の選び方』では、どの元素分析法がどのような状況に適しているのか、また現在だけでなく将来的にもラボに最適な分析法と機器を選択する方法ついて詳しくご覧いただけます。

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上記の情報は一般的な指針です。お客様の要件に最適な分析法をアジレントの原子分光分析エキスパートにご相談いただけます。アジレントまでお問い合わせください。

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