新型コロナウイルスの大流行により、わずか数か月間で物事が大きく変わりました。しかし、科学者たちの決意と創意工夫は、世界のどこであれ変わりません。世界各国の研究者が、2019 年新型コロナウイルスのワクチン開発に向けて粘り強く取り組んでいます。科学コミュニティと医学研究コミュニティは手を取り合って研究を進めています。ワクチンだけでなく、抗ウイルス薬やペプチド阻害剤、ヌクレオシドアナログ製剤、モノクローナル抗体など、効果の期待できる治療法を得るためです。アジレントはこういった研究に役立てることを、これまでになく誇りに感じています。

ウイルスの流行に歯止めをかけるための努力が続く中で、協働の効果がすでにみられています。ワクチン開発だけでなく、現在起こっている新型コロナウイルスによる影響に対しても、です。

ワクチン研究

ワクチンに入っているもの

理論上、ワクチンはシンプルなものです。まず、病原性のないウイルスや病原性を弱めたウイルスなどを人体に取り入れ、病気を発症することなく免疫反応を起こさせます。この「予備刺激」により、免疫システムは病気に対する免疫を獲得し、似たような病原体を攻撃するようになります。

しかし実際には、このプロセスはもっと複雑で、副作用を引き起こす危険があるため、ワクチン開発には何年もの時間がかかります。幸いにも、科学コミュニティは支援を得ることができました。

研究の始動 

2019 年 12 月、最初に新型コロナウィルスがアウトブレイクしたすぐあとに、中国はこのウイルスの遺伝子配列を公表しました。このことが、遺伝子配列が新型コロナウイルスと 8~9 割同じである重症急性呼吸器症候群(SARS)で行われた以前のワクチン開発での成果と相まって、研究者や製薬会社のワクチン開発を後押ししました。

効果を上げるチームワーク

新型コロナウイルスとの闘いを支援している企業の 1 社が、今はアジレントの一員である BioTek です。画像、検出、液体処理などの機器を扱っており、何千というサンプルを迅速に処理するための機器もあります。大量の PCR マスターミックス分注も、そのような処理に含まれます。BioTek の MultiFlo FX は、検体から得た RNA の抽出および精製のすぐ下流での RT-PCR マスターミックス分注に用いられています。抽出された RNA は、多くの COVID-19 研究で基本的な材料となります。


3 月末、大手の民間ラボから、800 TS 吸光度専用プレートリーダーについて問い合わせがありました。コロナウイルス研究で使うための評価を始めたい、1 週間以内の開始に向けて用意できないか、という内容でした。

800 TS 吸光度専用プレートリーダー

BioTek はそのラボと緊密に連携し、24 時間以内に計画を立てました。そして 1 週間足らずで、800 TS 吸光度専用プレートリーダーの出荷を開始しました。注文を受けた 5 台すべてが納品済みとなっています。この機器は地域コミュニティでの COVID-19 研究に用いられます。

米国疾病予防管理センター(CDC)は現在、コロナウイルス研究に用いられている数々の製品を評価しています。この中には PowerWave HT マイクロプレート分光光度計や Epoch 2 マイクロプレート分光光度計、そして 405 TS ウォッシャーがあります。

除菌して作業

社会的距離は、コロナウイルス感染症例を増加させないために必要ですが、製造面での独特の問題をはらんでいます。懸念されるシフト間の相互感染に加えて、2 メートルの距離を保ったまま共同作業を行うにはどうすればよいか、という問題です。

BioTek の製造部門では、従業員と相談し、シフトを 2 つに分けることで対応しました。つまり、午前のシフト(午前 3 時~正午)と午後のシフト(午後 1 時~午後 8 時)です。この 2 つのシフト間に、製造施設を完全に閉鎖し、清掃クルーが入って清潔に磨き上げ、従業員の健康と安全を確保します。

国をまたいだ協力

パンデミック下でも、米国と中国の科学的な協力関係はゆらいでいません。両国でマスクが不足していますが、アジレント中国では国内のベンダーから医療用マスク 2000 枚を入手することができました。そして、そのマスクをバーモント州にある BioTek の施設に送りました。

感染の危険があるため、BioTek はマスクなしでスタッフを現場に送り出したくありませんでした。BioTek のフィールドスタッフは、その多くがやはり科学者です。送られてきたマスクによって、ラボや病院の研究者や臨床スタッフと肩を並べ、新型コロナウイルスの解明に向けて働き続けることができました。

協働で大きな成果を

新型コロナウイルスは全大陸で各国に脅威をもたらしています。その一方で、稀なことですが、共通するある 1 つのことが私たちを結びつけています。私たちは協力し合うことでより強力に成果を上げていくことができます。このパンデミックを乗り越えるための下地となる研究に、数多くの製品を提供する機会を得たことに対して、誠意をもって臨みたいと考えています。

参考資料: