ゲノミクス - 注目論文リスト アーカイブ (miRNA)

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miRNA / 遺伝子発現 / CGH / SureSelect / バイオアナライザ / その他

注目論文リスト 
miRNA
"An integrative genomic analysis revealed the relevance of microRNA and gene expression for drug-resistance in human breast cancer cells." Mol. Cancer 2011
[22051041]
miRNA : 薬剤抵抗性の獲得は、がんの化学療法において治療が不成功となる要因の一つですが、その機序はいまだ解明されていません。本研究では、がん細胞における薬剤抵抗性獲得の機序を解明することを目的として、ゲノムの構造変化と miRNA および mRNA の発現変動の統合的な解析を行いました。 まず CGH マイクロアレイを用いて、乳がん細胞 MCF7 と薬剤抵抗株である MCF7-ADR で、正常組織に比べてゲノム DNA のコピー数変化があった領域を同定し、そこにコードされている mRNA および miRNA の発現をマイクロアレイで比較することで、ゲノムのコピー数と発現変動が相関するものがあることを確認しました。また、MCF7-ADR では薬剤抵抗性を亢進させる MDR1 遺伝子のゲノム領域が増幅しており、発現も上昇していること、MCF7-ADR において発現が上昇している miRNA の結合配列を 3’UTR に持ち、かつ MCF7-ADR で発現が減少している mRNA の中には、p53 誘導性の TP53INP1 などのがん遺伝子が含まれることが見いだされ、この統合解析結果が MCF7-ADR の薬剤抵抗性の状態を明確に反映していることが示唆されました。次に、MCF7-ADR でゲノムのコピー数が減少している領域にコードされ、かつその発現が減少した miRNA 12個を、MCF7-ADR 細胞にトランスフェクションし、細胞増殖に対する影響を調べました。その結果、miR-505 が細胞のアポトーシスを誘導することを確認し、新規のがん抑制 miRNA である可能性を見いだしました。また遺伝子発現アレイのデータの GO 解析および miRNA のトランスフェクションの結果から、miR-505 は、MCF7-ADR の薬剤抵抗性を上げる遺伝子 Akt3 の発現を間接的に抑制し、細胞増殖を抑えていると考えられます。このように、複数のマイクロアレイ結果の統合解析は、がんの診断や治療のキーとなるターゲットの発見に有用であることが示されました。
"Tumor Suppressor miR-22 Determines p53-Dependent Cellular Fate through Post-transcriptional Regulation of p21." Cancer Res. 2011
[21565979]
miRNA : マイクロRNAの異常がヒトの疾患、特にがんの発症の主要な原因であると示唆されています。本研究では結腸がんにおいて腫瘍抑制的に働くマイクロRNAが効率的に特定されました。著者らは腫瘍抑制マイクロRNAを(I)結腸がん細胞で細胞増殖を阻害し、(II)正常細胞で発現しており、がん細胞では(III)高い確率で欠失し、(IV)発現が抑制されているものとしてスクリーニングを行いました。細胞増殖の阻害は、レンチウイルスmiRNA発現ライブラリと Agilent カスタムアレイ 8x15K を用いた「ドロップアウトアッセイ」によって調べています。正常細胞での発現は、Agilent Human miRNA マイクロアレイ 8x15K version 2.0 によって検討されました。さらに、がん細胞でのコピー数変化が、Human Genome CGH マイクロアレイ 244K によって取得され、結果的に6つのマイクロRNAに候補が絞られました。その中のmiR-22は、正常細胞と比較して結腸がん細胞での発現レベルが最も低下していました。最終的に、Whole Human Genome オリゴDNAマイクロアレイ (4x44K)を用いたAGO2免疫沈降法と遺伝子発現プロファイルを組み合わせた解析により、miR-22の直接の標的としてp21が特定されました。これらの発見から、miR-22は、p53腫瘍抑制ネットワークにおける固有の分子スイッチであり、p21を直接抑制することによりアポトーシスを誘導し、転写後修飾レベルでの細胞運命の決定因子として働くことが示唆されました。
"Functional screening using a microRNA virus library and microarrays: a new high-throughput assay to identify tumor-suppressive microRNAs." Carcinogenesis. 2010
[20525881]
miRNA : マイクロRNA (miRNA) は非コード RNA の一種であり、様々な細胞プロセスの維持に関わっていることを支持する報告が相次いでいます。本研究では、特定のがんの表現型に役割を担う miRNA をハイスループットに同定する 「miRNA機能スクリーニングアッセイ」 が報告されました。この系は、数百の miRNA 前駆体を発現するレンチウイルスベクターライブラリと miRNA 前駆体を検出するカスタムマイクロアレイとを組み合わせることで構築されています。Agilent のカスタムアレイ(8x15K)には、設計した 445 種類の miRNA 前駆体に特異的なプローブが 32 のレプリケート (センスとアンチセンスプローブが 16 ずつ)で配置されました。アッセイの仕組みはこうです:プールされたレンチウイルスライブラリで感染された細胞では、特定の表現型を調節する miRNA のコピー数が元のライブラリと並べて正または負に変化します。その後、miRNA 前駆体のプールを複数の異なる PCR 反応で増やし、2群に分け、その比率変動をカスタムマイクロアレイを用いて2色法でハイブリを行うというものです。この極めてユニークなアッセイの実現可能性を調べるため、膵臓がん細胞の増殖を調節する miRNA に焦点が絞られ、その結果、これまで代表的な腫瘍抑制 miRNA として知られている miRNA-34a を含む 5種類の miRNA が細胞増殖を抑える miRNA として特定されました。今後、比較的容易で自由度の高いこのアッセイによって、がん幹細胞、転移、および他のがんの特定の表現型に関する研究が推し進められることが期待されます。
"Adipocyte-derived microvesicles contain RNA that is transported into macrophages and might be secreted into blood circulation.", Biochem Biophys Res Commun. 2010
[20621060]
miRNA : 最近、興味深いことに、肥満細胞、膠芽腫、胚性幹細胞によって分泌されるエキソソームがmRNAとmiRNAを小胞内に含み、それらが他の近傍細胞に運ばれ、別の場所で機能するかもしれないという報告が相次いでいます。本研究では、マイクロアレイとRT-PCRを用いて脂肪細胞が分泌する膜小胞(ADM)が分析されました。ADMに含まれるRNAには典型的な28Sと18SリボソームRNAが含まれていません。total RNAはTrizol(Invitrogen)を使って抽出精製され、Agilent Whole Mouse GenomeオリゴDNAマイクロアレイ(4x44K、2色法)およびAgilent Mouse miRNA マイクロアレイ(Version 2)を用いた分析により、ADMは約7000種類のmRNAと140種類のmiRNAを含むことが明らかとなりました。ほとんどの脂肪細胞特異的およびドミナントな遺伝子の転写産物がADMに含まれ、その存在比は分泌細胞内のものと最も関連していました。脂肪細胞関連miRNAの存在比も同様でした。ADMは近傍および別の離れた細胞へRNAを運ぶことにより、内分泌性脂肪細胞の潜在的な細胞間コミュニケーションツールとして機能する可能性や、脂肪細胞の機能を調節する標的成分である可能性が考察されています。
"Circulating microRNAs, possible indicators of progress of rat hepatocarcinogenesis from early stages." Toxicol Lett. 2011
[21035526]
miRNA : miRNAが発がんの初期の検出を可能にするかもしれません。本研究では、化学物質を誘発したラットの肝発がんをモデルとして、様々なタイプの発がん物質によって誘導されたラット肝の血清からmiRNAプロファイルデータが取得されました。具体的には、フェノバルビタールとDDTによる構成的アンドロスタン受容体を介した肝発がん、およびクロフィブラートによるペルオキシソーム増殖因子活性化受容体αを介した肝発がんをモデルとして選択し、Agilent Rat miRNAマイクロアレイを用いて、Agilent実験プロトコル(Version 2.0)に従ってアレイデータを取得し、75パーセンタイルのシグナル正規化が行われました。さらに、2つの独立したサンプルセット(26週または36週のラットサンプル)で比較的小さなCV値を示す4つのmiRNA(miR-16、25、146a、221)でPer miRNAノーラマライズが施され、Welchのt検定を行い発現差解析が実施されました。qRT-PCRバリデーションの結果、肝発がんの進行に伴い、いくつかの血液循環性miRNA(let-7a、let-7f、miR-34a、miR-98、miR-331、miR-338およびmiR-652)の発現量が緩やかに増加することが明らかとなりました。さらに、特にlet-7a、let-7f、およびmiR-98の発現量の増加が、非常に初期の段階のラットの血清で統計学的に有意であることが示されています。今後、初期癌の重要な臨床モニタリングツールとして、血液循環性のmiRNAが用いられることが期待されます。
"Let-7 MicroRNA Family Is Selectively Secreted into the Extracellular Environment via Exosomes in a Metastatic Gastric Cancer Cell Line" PLoS One 2010
[20949044]
miRNA : エキソソームは細胞間コミュニケーションにおいて主要な役割を果たしており、最近の報告では miRNA がエキソソームに包まれ RNA 分解から守られており、循環している血漿や血清から常に検出されることが示されています。彼らは、様々な培養がん細胞サンプルのエキソソーム、細胞、培地から RNA を抽出し、Agilent Human miRNA マイクロアレイにてプロファイリングを行い、GeneSpring GX によりデータ解析を行いました。その結果、let-7 miRNA family が高転移株 AZ-P7a で細胞内および細胞外画分の両方で多量に存在することが示された一方、低転移株 AZ-521 ではその傾向が認められませんでした。Agilent 2100 バイオアナライザSmall RNA キットを用いて分析した結果、miRNA はエキソソーム画分の外、培地画分にも含まれている可能性が示されました。癌の高転移株ではエキソソームを介して let-7 miRNA family が細胞外に分泌され、自己の腫瘍形成能を維持している可能性があります。
"miRNA-mRNA integrated analysis reveals roles for miRNAs in primary breast tumors." PloS One 2011
[21364938]
miRNA : 同じ原発乳がんで miRNA と mRNA 両方の発現プロファイリングを行った研究はあまり例がありません。本研究では、ヒト原発乳がん 101検体における miRNA 発現プロファイリングが mRNA プロファイリングと広範な臨床情報とともに明らかにされました。miRNA の発現プロファイリングでは、799種の miRNA を網羅している Agilent Human miRNA マイクロアレイが使われ、mRNA の発現プロファイリングでは、同じ検体の total RNA (TRIZOL抽出) を用いて、Agilent Whole Human Genome オリゴ DNA マイクロアレイが使われました。miRNA と mRNA データの統合解析では TargetScan V5.1 を用いた miRNA の標的予測にをもとに、miRNA と mRNA の発現データの相関が解析されました。その結果、増殖、細胞接着、免疫反応のような細胞プロセスに関する遺伝子の発現が miRNA がクラスター状に発現している群で有意に増加しており、miRNA の中心的な役割がこれらの主要な経路の調節にあることが示されています。
"Identification of pregnancy-associated microRNAs in maternal plasma”, Clin.Chem. 2010
[20729298]
miRNA : 近年、miRNAs により胎盤の状態を把握できる報告が相次いでいますが、これらの新規分子の理解はまだ限られています。本研究では、妊娠初期と後期の胎盤組織サンプルおよび母方血液サンプルを用いて、Agilent Human miRNA マイクロアレイにより、胎盤で主に発現される miRNA から妊娠に関連しているmiRNAs が特定されました。これらの miRNA の多くは、第14番および19番染色体にクラスターを形成していました。妊娠が妊娠後期に進むと、第19染色体由来のmiRNA の血漿濃度が有意に増加しました。本研究により特定された妊娠関連 miRNA は、早期検出のための分子マーカー、あるいは、子癇前症、癒着胎盤、子宮内胎児発育遅延、および胞状奇胎のような妊娠関連病の出生前診断として役に立つかもしれなりと考察されています。

 "microRNA as a new immune-regulatory agent in breast milk ", Silence 2010

miRNA : 最近、血液をはじめとする体液に安定に存在する miRNA が、バイオマーカーとして利用できるとして、そのプロファイリングを得る様々な試みがなされています。本研究では、Agilent Human miRNA マイクロアレイを用いて、健常人の母乳中の miRNA の発現が検出され、免疫機能に関与する miRNA が産後 6カ月間の母乳で多く発現していることが明らかにされました。また筆者らは miRNA の安定性についても確認し、母乳中に安定に存在する miRNA が乳児の胃腸などの厳しい環境にも耐えて吸収され、乳児の免疫機能にまで影響を及ぼしている可能性を示唆しました。
"Concordance among digital gene expression, microarrays, and qPCR when measuring differential expression of microRNAs", BioTechniques 2010
miRNA : 近年、Total RNA から miRNA を網羅的にプロファイリングする技術が急速に進歩し、より簡単に正確に検出するための改良が進んでいます。本報告では、市販の標品 total RNA を用いて、Agilent 社製を含めた複数の miRNA マイクロアレイプラットフォーム、次世代シーケンサによる Digital Gene Expression (DGE) および qPCR による定量結果が比較されました。その結果、テクノロジーの違いを超えて、Agilent 製アレイ、DGE および qPCR の結果が最もよく一致することが示されました。また、他社製マイクロアレイでは増幅時のバイアスが結果に影響するのに対し、エンドラベル化法を用いる Agilent 社のプロトコルでは、よりバイアスの少ない検出が可能であると考察されています。
"BAC TRANSGENESIS IN HUMAN ES CELLS AS A NOVEL TOOL TO DEFINE THE HUMAN NEURAL LINEAGE", Stem Cells 2008
[19074416]
miRNA : 最近、幹細胞の維持と多分化能における小さな調節RNA の関わる報告が相次ぎ、基礎研究だけでなく臨床研究の分野において幹細胞におけるRNAサイレンシングの役割が大きな関心を寄せ始めています。今回彼らは、BAC transgenesisにより GFP を発現する神経幹細胞や運動ニューロンとなるヒトES細胞系列を作成し、アジレントの Human miRNA マイクロアレイ(Release 2.0)を用いてグローバルな発現解析を行いました。その結果、神経幹細胞では ES細胞の未分化マーカーとして認識され始めた miR-302 クラスターの発現が亢進される一方、運動ニューロンでは脊髄での Hox遺伝子群の発現調節で知られる miR-10 クラスターの発現が亢進されており、神経系列を規定していく上で miRNA プロファイリングが有用となることが示されました。調製した同一の total RNA から mRNA と miRNA のグローバルな発現解析を合わせて実施することが可能になったことで、今後、幹細胞の分野においても miRNA のプロファイリング解析が進むことが期待されます。
"Circulating microRNAs, potential biomarkers for drug-induced liver injury." PNAS 2009
miRNA : 近年、miRNA がホルマリン固定化組織で高い安定性を示すことが報告されるとともに、臨床診断における理想的なバイオマーカーとしての利用価値が注目されています。今回彼らは、解熱鎮痛薬として多用されるアセトアミノフェンの過剰摂取によって引き起こされる肝臓損傷の初期兆候のマーカーとしての miRNA の有用性について検討しました。彼らはマウスへの投与前後で採取した血清および肝臓組織からトータル RNA抽出を行い、アジレントの Mouse miRNA マイクロアレイ(Release 2.0)を用いて miRNA の網羅的なプロファイリングを行いました。その結果、肝臓、血清のいずれにおいてもアセトアミノフェンの投与により発現が変化する2つの miRNA(miR-122 および miR-192)が同定され、これまで診断マーカーとして用いられている GPT(肝臓の酵素)よりも血清サンプルから感度良く診断できる可能性が示されました。今回の結果は予備的なものですが、今後、体内を循環する miRNA と様々な生理病態との関係を包括的に調べることが、毒性などの症状に対する血液中のバイオマーカーの新たな発見につながる新しい切り口になるかもしれません。

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