Access Agilent 2016年7月号

新しい Agilent 8900 ICP-QQQ による感度、確度、生産性の向上

Ed McCurdy、杉山 尚樹、アジレント ICP-MS マーケティング

タンデム質量分析 (MS/MS) は分析化学の多くの分野で優れた成果を上げており、多くの業界の有機化学ラボで GC/MS/MS と LC/MS/MS が使用されています。2012 年にアジレントの 8800 トリプル四重極 ICP-MS (ICP-QQQ) が発売されて以来、無機 (金属) 分析を行っているラボでも、タンデム MS (ICP-MS/MS) の性能によるメリットを享受できるようになりました。

Agilent 8800 ICP-QQQ の機器は、世界中の民間および研究/学術機関に数百台も導入されており、分析分野における導入が急速に進んでいます。この機器は、ライフサイエンスおよび医薬品開発、環境および放射性同位体のモニタリング、食品安全性、石油化学分析、地球化学、地質年代学の分野の発表における画期的な研究に使用されています [1]。また Agilent 8800 は、ACCSI、Instrument Business Outlook、R&D 100、SelectScience などの団体から、さまざまな名誉ある賞を授与されてきたことで知られています。

図 1. 第 2 世代の新しい Agilent 8900 ICP-QQQ

図 1. 第 2 世代の新しい Agilent 8900 ICP-QQQ

第 2 世代の新しい Agilent 8900 ICP-QQQ (図 1) は、マトリックス耐性 (最大 25 % の溶解固形分) と感度の向上、バックグラウンドの低下、柔軟なセルガスオプション、および新しい検出器 (最大 11 桁のダイナミックレンジと高速な時間分析 (TRA) 機能に対応) により、実用的なアプリケーションでの性能と生産性が向上しています。

MS/MS 処理での干渉の問題を解決

反応の化学的性質を利用すると、特定のセルガスでの反応速度の違いに基づいて、分析対象イオンと干渉イオンの信号を効率的に区別できます。ただし、従来の四重極 ICP-MS では、質量選択がコリジョンリアクションセルの後ろの四重極マスアナライザで 1 回行われるだけでした。つまり、サンプル (およびプラズマ、溶媒など) がセルに入るのを防ぐことができないため、反応の化学的性質を制御できません。実際に、次のような現象が発生します。

  1. セルガスに反応するマトリックスまたはプラズマ由来のイオン (またはその他の成分) によって、新しいプロダクトイオンが生成されます。これらのプロダクトイオンは、元の質量で、または分析対象プロダクトイオンとして、分析対象の質量数と干渉する場合があります。
  2. セルガスと低速で反応する (または反応しない) 既存のイオンの質量は元のままであり、その質量で測定される成分プロダクトイオンと干渉する可能性があります。

図 2. A: MS/MS モードでの SO+ プロダクトイオン。共存する C、Ca、および Ti からの影響はありません。B: 「シングル四重極」モードでの同じ重ね表示では、SO+ イオンで、ArC+、Ca+、Ti+ からの同位体テンプレート。

図 2. A: MS/MS モードでの SO+ プロダクトイオン。共存する C、Ca、および Ti からの影響はありません。
B: 「シングル四重極」モードでの同じ重ね表示では、SO+ イオンで、ArC+、Ca+、Ti+ からの同位体テンプレート。

Agilent 8900 では、ORS4 コリジョンリアクションセルで分けられた 2 つの四重極 (Q1 と Q2) を含むタンデム質量分析計の構成を使用しています。(セルの前の) 最初の四重極は、セルに入って反応する可能性があるイオンの制御に使用されます。(セルの後ろの) 2 番目の四重極では、検出器に成分イオンやプロダクトイオンが選択的に渡されます。この二重の質量選択 (MS/MS) が、ICP-QQQ の干渉制御機能が優れている主な理由です。

「シングル四重極」処理および MS/MS モードによるリアクションガスメソッド間の性能の違いについては、図 2 を参照してください。このスペクトルは、一般的な酸素マスシフトリアクションモードで測定した、硫黄 (S) の分析における 2 つの一般的な元素 (カルシウム (Ca) とチタン (Ti)) の効果を示しています。S+ はすぐに O2 セルガスと反応し、M + 16 で SO+ プロダクトイオンが形成されます。このため元の多原子が質量 32、33、34 で S 同位体と干渉することはありません。 図 2A は、10 ppb の S 標準の MS/MS モードで測定された SO+ 同位体パターンを示しています。これは、5 % のイソプロピルアルコールのブランクマトリックス (IPA、青色の重なったスペクトル)、1 ppm の Ca (緑色の重なったスペクトル)、および 1 ppm の Ti (ピンク色の重なったスペクトル) と重なっています。測定した S ピークの信号に対する、IPA、Ca、および Ti マトリックスからの影響は最小限です。これは、理論上は同位体アバンダンスと一致します (赤の枠線で表示)。これに対し「シングル四重極」モードでは、ArC+、Ca+、および Ti+ イオンをセルの前で排除することができません。このため、これらのイオンが質量スペクトルに残り、すべての SO+ プロダクトイオンで干渉の原因となります (図 2B)。

高度な材料や新しいアプリケーションでのトリプル四重極 ICP-MS の使用について

Agilent 8900 ICP-QQQ の新機能の一部について、シリカ (SiO2) ナノ粒子 (NP) の精密分析という新しいアプリケーションで説明します。NP の測定は、環境サンプル、および食品安全性や人体に対する NP の影響の評価において重要です。NP は製造工程、加工品、一般消費財でも広く使用されています。

図 3. A: 測定した信号、B: 周波数分布、C: 50 nm の SiO2 ナノ粒子 (40 ng/L) の粒子サイズ。

図 3. A: 測定した信号、B: 周波数分布、C: 50 nm の SiO2 ナノ粒子 (40 ng/L) の粒子サイズ。

NP の分析方法の 1 つは、各 NP が ICP を経由して原子化およびイオン化されるときの信号を測定することです。このためには、非常に高速な検出システムが必要です。Agilent 8900 ICP-QQQ では高速な TRA 機能を搭載した新しい検出器を使用しているため、0.1 ms のドウェルタイムを使用できます。この高速検出器と専用ソフトウェアを組み合わせて信号を処理し、粒子サイズとサイズ分布を特定します。

シリカ NP を ICP-MS で使用すると、特定の問題が発生します。Si の主要な同位体は質量 28 で測定され、N2 および CO からの多原子干渉を受ける可能性があるためです。Agilent 8900 では、H2 セルガスによる MS/MS モードを使用することで、N2 と CO の干渉を除去するため、低レベルの Si を正確に測定できます。このためバックグラウンド信号から (50 nm 以下の) 小さい粒子を区別でき、図 3 のように、SiO2 の NP 分析における真度が非常に高くなります。

アジレントの 8900 ICP-QQQ による新しい可能性

アジレントのトリプル四重極 ICP-MS 機器によって新しい可能性を広げられます。ICP-QQQ を使用すれば、高純度の製品を扱う化学メーカーや半導体メーカーが、自社製品の不純物測定を低レベルで行うことができます。ライフサイエンス研究者は、化合物固有の標準を使わずに、タンパク質やペプチドの絶対定量の結果を報告できます。食品科学者は、サンプルマトリックスが多様であっても、毒物の微量元素の真度レベルを確実に報告できます。また地質学者は、同重体干渉を解消して利用できます。ICP-QQQ は MS/MS を使って反応の化学的性質を制御できるため、これらすべての、またはそれ以上のアプリケーションに利用できます。

ICP-MS 技術の詳細については、こちらのビデオを参照するかアジレントの担当者にお問い合わせください。アジレントの ICP-MS システムアクセサリ消耗品ソフトウェアについて、より詳しくご確認いただけます。