重要ポイント

  • 最近の調査で、82 % のラボが持続可能性の指標を採用していることがわかりました。そのうち 92 % がこれらの指標を用いてリソースの使用をモニタリングしているほか、87 % が温室効果ガス(GHG)と二酸化炭素の排出量を削減するための目標に取り組んでいることも明らかとなっています。
  • 分析ラボは、廃棄物の削減、システムおよびプロセス管理の強化、明確な持続可能性目標の設定など、持続可能性のための戦略を立てる必要があります。
  • AI や ML(Machine Learning)を始めとするデジタルツールにより、資産の使用を効率化し、全般的なラボ効率を向上させることが可能です。将来的にラボ機器に対して稼働状況をリアルタイムでフィードバックすることで、効率的な管理と持続可能性の効果を促進するインテリジェンス機能が搭載されると考えられます。

世界中の科学研究ラボが、科学的知見の推進と革新的なヘルスケアソリューション開発の基盤となっています。しかし、その業務は本質的にリソースを大量に消費するため、分析によって環境負荷をもたらしています。主な懸念はエネルギーの使用、廃棄物の生成、化学物質の処理、機器の廃棄です。そのいずれもが環境に大きな影響を及ぼす可能性があります。

国際的な持続可能性への要求がますます大きくなっている時代において、ラボは、科学的進歩と環境への責任との調和という課題に取り組んでいます。このような方向へ進展している現状は明るい兆しです。Frost & Sullivan によるラボの持続可能性ラボの持続可能性に関する最新の研究から、調査対象ラボの 82 % が持続可能性の指標を採用していることが明らかになっています。そのうちの 92 % がこれらの指標を用いてリソース使用をモニタリングしているほか、87 % が温室効果ガス(GHG)と二酸化炭素の排出量を削減するための目標に取り組んでいます。

ラボにおける廃棄物の削減

ラボにおける廃棄物の削減

廃棄物は顕著な環境問題であり、多数のラボが廃棄物の生成を削減する必要性を認識しています。小さくシンプルな行動修正でも大きな違いをもたらすことができると考えられています。例えば、ラボにとってプラスチック管理は重要な廃棄物関連の課題です。

プラスチックの滅菌、焼却、長距離の輸送などは、二酸化炭素の排出の大きな一因となっています。さらに、プラスチックを焼却すると、環境中に大量の有毒化学物質が放出されます。
一方で、プラス面としてラボでのプラスチック廃棄物管理を向上させる画期的なソリューションが市場に登場しています。そのソリューションの 1 として、機械的および化学的なプロセスを組み合わせた滅菌処理があり、この方法では炭素効率を 90 % 以上に高めることができます。この画期的なプロセスにより、圧力と時間を組み合わせた熱(蒸気)を使用してプラスチック廃棄物を消毒するオートクレーブ滅菌の必要性がなくなります。

ラボ資産のリアルタイムモニタリング

ラボシステムとプロセス管理の強化により、デジタルツールの急速な進歩を活用したイノベーションへと繋がっていきます。さまざまな分析機器で、コスト効率に優れたデータモニタリングやデータ採取業に人工知能(AI)や機械学習(ML)などの技術を組み合わせることで資産の使用を効率化し、全般的なラボ効率を向上させることが可能です。

将来的にはラボ機器に、稼働状況のモニタリングやリアルタイムフィードバックのための機能が搭載されることが予想されます。装置にエラーが生じたり、消耗品が不足した際に、ラボ技術者にアラートを通知するインテリジェンス機能が近い将来に内蔵さることでしょう。このようなリアルタイムデータにより、オペレータはより多くの情報に基づいて判断できるようになります。これにより管理の効率化、優れた科学的成果の獲得、持続可能性の向上が可能となり、ラボ資産の最適化が促進されます。

地域と業界における進展

地域と業界における進展

ラボにおいてこれまで以上に持続可能な慣行が取り入れられているという認識が広まる中、このような取り組みの速度は、市場や業界全体で著しく異なります。例えば、英国は、米国、ドイツ、中国などの国々に先駆けて持続可能性の慣行を主導してきたことが調査で明らかとなっています。

英国のラボの 86 % はすでに持続可能性の指標を取り入れており、持続可能性に向けた移行が有望であることを示しています。

しかし、持続可能性への取り組みは、幅広い調査分野の全体でみれば一様ではありません。調査により、法医学・薬物分析ラボは他の分野よりも遅れていることが確認されています。持続可能性の指標を採用しているラボの割合は、ライフサイエンス研究、医薬品、バイオ医薬品、化学、エネルギー、環境試験、食品など、他の分野の 82 % ~ 87 % に対し、法医学・薬物分析分野では 72 % に留まっています。

持続可能なラボのための戦略的知見

ラボの持続可能性のための汎用的なソリューションは存在しません。調査によれば、ラボの 72 % が採用している最も普及した慣行は、炭素および GHG 排出の削減であることが分かっています。これは、エネルギー効率に優れた機器の導入、換気システムの修正、スマートなラボ設計の実装など、特別な戦略により実現できます。

水とエネルギー使用の最適化に、廃棄物管理手法の改善を組み合わせる戦略は高く評価されており、68 % のラボで取り入れられています。科学ラボで生成される廃棄物には、有害物質、無害物質、電子廃棄物(eWaste)が含まれます。これらの廃棄物を不適切に処理すると、土壌や水の汚染の原因となります。したがってラボは、廃棄物分離プロトコルを制定し、リサイクルプログラムに着手しなければなりません。また、専門の廃棄物管理サービスと連携することにより、有害物質や eWaste(電子廃棄物)を安全に廃棄する必要もあります。

分析機器メーカーの役割

アジレントなどの分析機器メーカーはすでに、化学物質の使用と余剰廃棄物を削減するために、小型化、デジタル化、成分の最適化、製品効率の向上に重点を置いて既存のポートフォリオの再評価に取り組んでいます。例えばアジレントでは、資産管理を促進するために特別に設計されたツールを提供しており、持続可能性において大きな利点をもたらしています。このようなツールは、データインテリジェンス技術を活用することでラボ全体の可視性とコントロールを向上させ、運用効率を高めます。

これらのラボサービスは、業界における事業運営の根本的な変化を表しています。完全な統合までに漸進的な取り組みと時間を必要としますが、最終的には主要な業界改革と一致していくため、緩やかな変化でも非常に重要です。

アジレントの持続可能性の取り組みに関する詳細は、こちらをご覧ください。