ソフトウェアアップグレードの重要性

日常生活において、大多数の方は身体が汚れたらお風呂で洗うでしょう。髪や爪が伸びたら切りますし、病気になったら病院に行ったり薬を飲んだりするでしょう。身体に何らかの異変が起こったら、それを修復する動作を定期的に行っていると思います。このような行動は身体に対してだけ行うものではありません。快適な生活を送るために、汚れればきれいにする、壊れれば直す、不要物が溜まれば捨てる、といった具合に物に対しても行っていると思います。

実は、ソフトウェアも同じです。購入した当時は新品でも、時間がたてば古くなってしまいます。しかし、ソフトウェアは身体や物品といったものとは異なり、古いバージョンのまま放置していても問題ないように見えます。ではなぜアップグレードする必要があるのでしょうか?

ソフトウェアの世界で起こる現象

購入したばかりのソフトウェアで問題が起こることは稀です。しかし、ここに時間という要因が加わることで問題が発生します。例として挙げると、機能や見た目の陳腐化、バグの発生・発見、セキュリティに対する脆弱性、サポートの終了などがあります。

(1) 機能や見た目の陳腐化

購入した時点では、最新バージョンのソフトウェアを入手しているはずです。しかし、ユーザーからの要望や開発者の意欲により、便利な機能を追加したりインターフェースを変更したりすることがあります。このような変更は、次のバージョンから反映されるので、アップグレードすれば変更された機能を利用することができます。ただし、古いバージョンのままで問題ない場合には、この点においてはアップグレードの必要はありません。

(2) バグの発生・発見

バグは、元からソフトウェアに潜伏していた場合と、時間の経過とともに何らかの原因で発生してしまう場合があります。しかしいずれにせよ、バグの存在は快適にソフトウェアを使用したいユーザーにとっては不快なものです。また開発者にとっても、自らの評価を落とす要因にもなるので、発見しだい修正プログラムを作成し、次のバージョンから反映させるようにします。バグを放置することは、ソフトウェアの快適な使用を放棄することになり、効率的な作業の進行を妨げることにつながります。

(3) セキュリティに対する脆弱性

コンピュータウィルス、ランサムウェア、フィッシング、バックドア・・・このような用語をどこかで目にした方もいらっしゃるかもしれません。これらは、PC やソフトウェアに干渉することで、システムをハッキングしたり、データを搾取したり、ユーザーを脅迫したりします。このような悪意に満ちたプログラムの脅威に PC やソフトウェアは日々晒されていますが、システムに脆弱な部分が存在すると、その部分から攻撃されて被害を受けてしまいます。この時、被害を受けるのは 1 台の PC だけとは限りません。同じ部屋、同じ組織、同じ会社の PC 全てが被害を受ける可能性があります。「ネットワークにつないでいないから大丈夫」と楽観してはいけません。悪意あるプログラムは USB メモリや電子ファイルを介して侵入することもあります。このような事態を防ぐために、開発者は脆弱性を発見したら早急に修正プログラムを作成します。新しいバージョンにアップグレードしないということは、このような脅威に常に脅かされ続けることになります。

(4) サポートの終了

サポートの終了は、上記 (1) ~ (3) の全てに関わります。サポートが終了すると、開発者はそれ以上何もしません。新しい機能が追加されることもありませんし、何らかの問題が発生しても、開発者は救いの手を差し伸べることはありません。よって、システムの状態が良くなることは決してなく、むしろ悪くなることしかありません。この状態になると、開発者が唯一行うことは新しいバージョンへのアップグレードの推奨です。

アップグレードを勧める理由

開発者がソフトウェアのアップグレードを勧める理由は主に 2 つ、1 つはユーザーに自社の製品を快適に使用してほしい、もう 1 つは被害を最小限に食い止めたい、です。特に、セキュリティに対する脆弱性を放置することは、他人に迷惑をかけることにもつながります。実際、脆弱性を放置し続けたためにマルウェアの侵入を許し、結果として全体のネットワークを数日にわたって遮断しなければならなくなった組織も存在します。ここまでインターネットが生活とビジネスに根付いている現代にとって、ネットワーク社会からの隔離は大損害です。このようなことを防ぐためにも、ソフトウェアのバージョンは常に最新の状態で維持することを勧めています。