ケーススタディ : 縦割り型研究の終わり - Joseph Zaia 博士

Joseph Zaia 博士

ボストン大学医学部
生化学教授
生物医学質量分析センター副所長

マルチオミクスデータの収集を支援する
アジレントのソリューション

生物は複雑です。見れば見るほど複雑さが増していきます。

それでも Joseph Zaia 博士が思いとどまることはありませんでした。

ボストン大学医学部の生物医学質量分析センター副所長を務める Zaia 博士は、これまで専門領域として独立していたプロテオミクス、グライコミクス、グライコプロテオミクスをまとめて研究しています。

「生物を十分に理解するには、データの壁を乗り越え、それらを相互に関連付ける必要があります」 と Zaia 博士は言います。

簡単なタスクでないことは、関係する可変要素を考えただけでもわかります。グリコシル化に限定して考えてみましょう。これは小胞体とゴルジ体、および部位特異的なタンパク質のグリコシル化プロセスで、さまざまな生物学的機能を司っています。

「問題は、どのタンパク質部位でもグリコシル化はもともと不均一であるということです」 と Zaia 博士は言います。「どのサイトにも 50 のバリアントがある可能性があります。一例ですが、10 種類の部位があるとしたら、どのくらい複雑な分子になるか、想像できるでしょう」

 
Zaia 博士と彼のチームはこのように多様な構造を解明するため、6550 iFunnel Q-TOF6560 イオンモビリティ Q-TOF LC/MS システムなど、アジレントの技術を使い続けています。

 

Zaia 博士は彼らが開発した分析方法と、そこから得られる質量スペクトルデータは、正常な細胞の成長と疾患に関連する細胞の成長を理解するために非常に有益であると確信しています。

その成果を得るにあたり、Zaia 博士は特に Agilent 6560 が研究の範囲を広げてくれたと述べています。

「標準的な LC/MS システムでも、ある程度、詳しいことは分かりますが、6560 はまったく新たな知見を、イオンモビリティによってもたらします。これは、グリカン構造の理解とグライコプロテオームの発掘に応用できます」 Zaia 博士は続けます。

「例えば、生物製剤では、科学者は存在量がきわめて少ないサンプルの構造特性分析を行い、これらが許容範囲内にあるかどうかを確認する必要があります。6560 では、分析データを迅速に取得し、ヒト以外の動物のグリコシル化レベルが許容範囲かどうかを確認できます」

医薬品企業 (および米国食品医薬局 [FDA] のような政府機関) は正確で詳細な分析を頼りに、安全性や効能を保証しているので、糖タンパク質に関する高品質の LC/MS データが不可欠です。

「FDA は分析化学の力を認めています」 Zaia 博士は言います。「化学的性質が十分なら、例えば、バイオシミラーではコストのかかる臨床試験を行う必要はありません」

Zaia 博士は、グリコシル化に核酸やタンパク質と同等の関心が払われるべきだと信じています。

「今では国立生物科学情報センター (NCBI) に行けば、遺伝情報やタンパク質配列情報に使用できるあらゆる種類のツールが手に入ります。最終的には、グリコシル化情報の重要度も同じレベルにする必要があります」 とコメントしています。

 

「私たちがアジレントの HILIC-C18 HPLC チップを気に入っている理由は、このチップのおかげで、糖タンパク質に関する高品質の LC/MS データを得られ、タンパク質のグリコシル化の特性分析に関する問題がスムーズに解決されるようになることです。まさに、これは大きな前進です」

 

手順を減らすには、糖鎖チップが特に有効だと、Zaia 博士は述べています。

「これで糖タンパク質を濃縮し、分析できるようになります。サンプル処理はまったく必要ありません。変動の多くはサンプル処理に由来するものですから、これは非常に大きな利点です。私はこれを成功と見ています。実に効果的で、信頼性の高いデータを得られます」

「インフルエンザウイルスの進化に伴い、グリコシル化がどのように変化するかを比較するという視点で、糖鎖チップを用い、インフルエンザウイルスのグリコシル化を特性分析します。最終的な目的は、本当に高品質のプロテオミクス、グライコミクス、グライコプロテオミクスすべてを一度に得ることにあります。アジレントの最新技術を使っているおかげで、すべてうまくいっています。」

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関連情報

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