HILIC カラム固有の保持メカニズムを使用して LC分析で最大の効果を発揮

Anne E. Mack
アジレント LC アプリケーションケミスト

親水性相互作用クロマトグラフィ (HILIC) は、一般的な逆相液体クロマトグラフィ (RPLC) では失敗することの多い小さい極性対象化合物を保持し、分離できるため、液体クロマトグラフィでの使用が広がっています。この革新的なクロマトグラフィモードでは、強い溶離溶媒として水を使用するため、固有の保持機構が生まれます。

HILIC では、ESI-MS イオン源でより効率的なスプレー化と脱溶媒和が可能になるため、HILIC モード (下) では RPLC よりも優れた S/N 比が得られます。

図 1. HILIC では、ESI-MS イオン源でより効率的なスプレー化と脱溶媒和が可能になるため、HILIC モード (下) では RPLC よりも優れた S/N 比が得られます(図を拡大)。

HILIC では、ESI-MS イオン源でより効率的なスプレー化と脱溶媒和が可能になるため、HILIC モード (下) では RPLC よりも優れた S/N 比が得られます。

条件

システム

Agilent 1290 Infinity LC システム/
Agilent 6410A トリプル四重極 LC/MS システム

カラム

Agilent ZORBAX RRHD Eclipse Plus C18、2.1 × 100 mm、1.8 µm
(p/n 959758-902)
または Agilent ZORBAX RRHD HILIC Plus、2.1 x 100 mm、1.8 µm
(p/n 959758-901)

移動相 A

10 mM NH4HCO2 pH 3.2

移動相 B

CH3CN/100 mM NH4HCO2 pH 3.2 (9:1)

アイソクラティック

0.4 mL/min、10 % B または 70 % B

サンプル注入

モルヒネ、ノルモルヒネ、モルヒネ-3-β-D-グルクロニド (M3G)、
モルヒネ-6-β-D-グルクロニド (M6G) が
それぞれ 1 µg/mL の濃度で含まれる溶液を 2 µL 注入。
RPLC サンプルは H2O で、HILIC サンプルは CH3CN で前処理

カラム
コンパートメント

25 °C

MS イオン源

ESI+、キャピラリ 4000 V、乾燥ガス 250 °C、11 L/min、
ネブライザ 30 psi、デュエル 20 ms

MS 取り込み

SIM、m/z 286 (フラグ170 V)、m/z 272 (フラグ 170 V)、m/z 462 (フラグ 170 V)

アジレント資料

5991-0245EN

図 1. HILIC では、ESI-MS イオン源でより効率的なスプレー化と脱溶媒和が可能になるため、
HILIC モード (下) では RPLC よりも優れた S/N 比が得られます。

HILIC および質量分析による感度の向上

HILIC は有機溶媒の比率が高い移動相を使用するため、従来の RPLC と比べて LC/MS 感度に関する明確な利点があります。HILIC の移動相は従来の RPLC の移動相よりも揮発性が高いため、HILIC は、質量分析装置を使用するアプリケーションによく適しています。

図 1 に、電子スプレーイオン化 (ESI) LC/MS によるモルヒネと 3 種類の代謝物の分析で得られた抽出イオンクロマトグラムを示します。ここでは、RPLC と比較して HILIC モードが高い MS 感度を持つことがわかります。HILIC モードのほうが生成されるベースラインノイズが少なく、MS 信号の強度が高いため、感度が 4 倍に向上します。

図 1 の比較では、メソッドパラメータの一貫性をできる限り維持しました。RPLC 分析では 10 % アセトニトリルを、HILIC 分析では 70 % アセトニトリルを使用しました。いずれのモードでも強溶媒を注入したときに発生する可能性のあるピーク形状の歪みを回避するために、サンプル溶媒にはいずれも弱溶媒を使用しました。塩濃度による MS 検出の違いを排除するため、移動相の水系および有機系部分でギ酸アンモニウム緩衝液の濃度を 10 mM にしました。グラジエントフォーカスまたはカラム効率による違いを排除するために、各分析は同様の保持係数を持つアイソクラティックとしました。

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図 2. Agilent ZORBAX RRHD HILIC Plus カラムを使用したビタミン B の LC/MS 分析で、注入溶媒 (水とアセトニトリルの混合溶液) が HILIC の性能に与える影響(図を拡大)。

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条件

システム

Agilent 1290 Infinity LC システム/
Agilent 6410A トリプル四重極 LC/MS システム

カラム

Agilent ZORBAX RRHD HILIC Plus、2.1 x 50 mm、1.8 µm
(p/n 959757-901)

移動相

CH3CN/100 mM NH4HCO2 pH 3.2 (9:1)

アイソクラティック

0.4 mL/min、圧力 = 135 bar

サンプル注入

さまざまな溶媒に 4-アミノ安息香酸、ニコチンアミド、
リボフラビン、ニコチン酸がそれぞれ 5.7 µg/mL の濃度で含まれる
溶液を 1 µL

サンプル前処理

CH3CN の 100 µL 原液をクロマトグラムの左側に名前が記された
1 mL の溶媒で希釈し、各化合物の最終濃度を 5.7 µg/mL とした

カラム
コンパートメント

25 °C

MS イオン源

ESI+、キャピラリ 4000 V、乾燥ガス 200 °C、10 L/min、
ネブライザ 30 psi、デュエル 15 ms

MS 取り込み

SIM、m/z 138 (フラグ 110 V)、m/z 123 (フラグ 130 V)、
m/z 377 (フラグ 160 V)、m/z 124 (フラグ 130 V)

アジレント資料

5991-0209EN

図 2. Agilent ZORBAX RRHD HILIC Plus カラムを使用したビタミン B の LC/MS 分析で、
注入溶媒 (水とアセトニトリルの混合溶液) が HILIC の性能に与える影響

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図 3. 同じ LC/MS システムで次の注入溶媒シリーズ (メタノールとアセトニトリルの混合溶液) を使用して得られた結果 (図を拡大)。

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条件

システム

Agilent 1290 Infinity LC システム/
Agilent 6410A トリプル四重極 LC/MS システム

カラム

Agilent ZORBAX RRHD HILIC Plus、2.1 x 50 mm、1.8 µm
(p/n 959757-901)

移動相

CH3CN/100 mM NH4HCO2 pH 3.2 (9:1)

アイソクラティック

0.4 mL/min、圧力 = 135 bar

サンプル注入

さまざまな溶媒に 4-アミノ安息香酸、ニコチンアミド、
リボフラビン、ニコチン酸がそれぞれ 5.7 µg/mL の濃度で含まれる
溶液を 1 µL

サンプル前処理

CH3CN の 100 µL 原液をクロマトグラムの左側に名前が記された
1 mL の溶媒で希釈し、各化合物の最終濃度を 5.7 µg/mL とした

カラムコンパートメント

25 °C

MS イオン源

ESI+、キャピラリ 4000 V、乾燥ガス 200 °C、
10 L/min、ネブライザ 30 psi、デュエル 15 ms

MS 取り込み

SIM、m/z 138 (フラグ 110 V)、m/z 123 (フラグ 130 V)、
m/z 377 (フラグ 160 V)、m/z 124 (フラグ 130 V)

アジレント資料

5991-0209EN

図 3. 同じ LC/MS システムで次の注入溶媒シリーズ
(メタノールとアセトニトリルの混合溶液) を使用して得られた結果

HILIC モードでは、移動相は RPLC の場合よりも有機溶媒の比率が高く、揮発性が高いため、ESI-MS イオン源でより効率的なスプレー化と脱溶媒和が可能になります。この効率により、HILIC モードでは RPLC と比べて信号強度が上がり、ベースラインイズが減少します。ここでは、モルヒネ-6-グルクロニド (M6G) の MS 感度が 4 倍に向上しました。

注入溶媒の強度の変化による結果の向上

HILIC のシリカ系カラムへの保持についてはいくつかの機構が絡み合い、関連しています。最初に、水を極性のあるシリカ表面に吸着させ、液/液抽出系を生成する必要があります。ここで、吸着した水の層に極性対象化合物が出入りし、より極性の高い対象化合物とこの固定化された水との間に強い相互作用が発生します。帯電した極性対象化合物は、帯電したシリカによるイオン交換の対象にもなります。

通常は、HILIC の溶出順序は最も極性の低いものから最も高いものという順番になり、RPLC とは逆です。HILIC のメソッド開発では、溶媒強度が RPLC とは異なる点に注意することが重要です。HILIC モードでは、溶媒強度はテトラヒドロフラン < アセトン < アセトニトリル < イソプロパノール < エタノール < メタノール < 水となります。

HILIC の性能にとっては、注入溶媒に対する感度が非常に重要です。4 種類のビタミン B 関連化合物と、100 % アセトニトリルから 100 % 水または 100 % メタノールまでのさまざまな注入溶媒を使用して、このパラメータを評価しました ( 2 および 3)。この実験では、Agilent ZORBAX HILIC Plus カラムを用いた Agilent 1290 Infinity LCAgilent 6410A トリプル四重極 LC/MS を使用しました。

最も強度の高い水を注入したところ、早く溶出する化合物のピーク形状が大きく歪みました。溶出時間が遅い化合物に対する影響はこれよりも小さくなりますが、リテンションタイムはシフトしています。HILIC モードではメタノールは水よりも弱い溶媒ですが、クロマトグラフィにはその影響が見られます。100 % ~ 50 % メタノールの注入では、純粋なアセトニトリルにサンプルを注入したときよりもピークが広がります。メタノールでは保持力も失われます。これらの比較により、HILIC のサンプル溶媒はできる限り弱いものにすること、つまり、HILIC では、アセトニトリルのパーセンテージが最も高いものにする必要があることがわかります。

超低拡散による HILIC/MS の向上

同重体 M3G および M6G の分離能が 60 % 以上向上し、M6G の LC/MS 感度が大幅に上昇したことによる LC/MS システムのカラム外ボリュームの減少

図 4. 同重体 M3G および M6G の分離能が 60 % 以上向上し、M6G の LC/MS 感度が大幅に上昇したことによる LC/MS システムのカラム外ボリュームの減少(図を拡大)。

同重体 M3G および M6G の分離能が 60 % 以上向上し、M6G の LC/MS 感度が大幅に上昇したことによる LC/MS システムのカラム外ボリュームの減少

条件

システム

Agilent 1290 Infinity LC システム/
Agilent 6410A トリプル四重極 LC/MS システム

カラム

Agilent ZORBAX RRHD HILIC Plus、2.1 x 50 mm、1.8 µm
(p/n 959757-901)

移動相 A

10 mM NH4HCO2 pH 3.2

移動相 B

CH3CN/100 mM NH4HCO2 pH 3.2 (9:1)

グラジエント

0.4 mL/min、100% Bで0.25分間保持、0.75分間で100~55% B に変化

サンプル注入

CH3CN にモルヒネ、ノルモルヒネ、
モルヒネ-3-β-D-グルクロニド (M3G)、
モルヒネ-6-β-D-グルクロニド (M6G) がそれぞれ 1 µg/mL の
濃度で含まれる溶液を 0.1 µL 注入

カラム
コンパートメント

25 °C

MS イオン源

ESI+、キャピラリ 4000 V、乾燥ガス 250 °C、
11 L/min、ネブライザ 30 psi、サイクル 40 ms

MS 取り込み

dMRM、フラグメンタ 170 V
モルヒネ 286 → 152、165
ノルモルヒネ 272 → 152、165
同重体: M3G 462 → 201、286
      M6G 462 → 201、286

アジレント資料

5991-0208EN
5990-9502EN

図 4. 同重体 M3G および M6G の分離能が 60 % 以上向上し、
M6GのLC/MS感度が大幅に上昇したことによる LC/MS システムのカラム外ボリュームの減少

超高速液体クロマトグラフィ (UHPLC) カラムを最大限に活用するためには、LC のカラム外ボリュームを最小限に抑える必要があります。ここにはキャピラリ、ニードルシート、ヒートエクスチェンジャー、検出器のフローセル (使用している場合) が含まれます。このボリュームを最小限に抑えることは、特にサイズの小さいカラムで重要です。これは、サイズの小さいカラムでは、このボリュームがシステムのカラム外ボリュームに占める割合が高くなるからです。カラム外ボリュームの削減は、特に同重体化合物を使用しているときの MS 検出で重要です。

図 4 に、1.8 µm Agilent ZORBAX ラピッドレゾリューション High Definition (RRHD) HILIC Plus カラムを使用したモルヒネの LC/MS/MS 分析で得られたマルチプルリアクションモニタリング (MRM) のクロマトグラムの一部を示します。この図では、デフォルトの 1290 Infinity LC システム構成と超低拡散用に最適化された構成とを比較しています。各 MRM クロマトグラムは、最も感度の低い M6G のピークを強調するためにフルスケールで示しています。低拡散 LC/MS システムでは狭いピークが直ちに明らかになり、その結果、分離能と MS 感度が向上します。MS は一般に共溶出ピークを単離できますが、この場合はモルヒネ-3-グルクロニド (M3G) と M6G が同重体であり、正確に定量するためにはクロマトグラフィのベースライン分離が必要です。

これらの例から、HILIC が特に小さい極性対象化合物を保持し、分離できるため、液体クロマトグラフィでの使用が広がっている理由がわかります。小さい極性化合物で優れた LC ピーク形状が必要な場合は、Agilent ZORBAX HILIC カラムおよび 1290 Infinity LC の詳細をご覧ください。さらに、Poroshell 120 カラムでも HILICのラインナップが発売になりました。