ICP-MS 7700x によるヨウ素 129 の分析

 

 原子力関連施設および大気核実験などにより、環境中に放出される放射性核種について、
 汚染レベルの把握及びその影響を評価することが重要視されています。
 ヨウ素 129 は、ウランの核分裂により発生する半減期 1570万年の長半減期放射性核種である上に、
 生体内に容易に取り込まれるため、多くのモニタリング機関などで監視されています。

 

ヨウ素 129 の分析法には、放射化学的分析法、中性子放射化分析法 (NAA)、加速器質量分析法 (AMS) などがありますが、これらの方法は検出感度の不足、あるいは操作の煩雑さなどが伴います。 ICP-MS は高感度に簡便に分析できる装置ですが、ヨウ素 129 を分析する場合アルゴン中に含まれる同重体であるキセノン 129 のバックグラウンドや試料に元々含まれる安定ヨウ素 127 と水由来の水素 H が結合した IH2 などによる干渉の問題がありました。

Agilent 7700 シリーズ ICP-MS では新しく開発された高エネルギーコリジョン技術を用い、キセノン 129 と IH2 のバックグラウンド低減を実現し、ヨウ素 129 の高感度定量分析が可能となりました。 129I/127I 比 (*) を保証している標準試料 NIST 3231 SRM Level I と Level II について確認したところ、ほぼ同じ値を得ることができ手法の妥当性が確認されました。

(*) Level I (certified value of 129I/127I =0.981x10-6), Level I (expected value of 129I/127I =1x10-7)

 

コリジョンを用いない場合  キセノン Xe のピークが ヨウ素 129 に干渉します。

 

高エネルギーコリジョンを用いた場合  キセノン Xe のピークが消え ヨウ素 129 が分析可能