ヒント: Agilent GC/MSD のメソッドを
Agilent トリプル四重極 GC/MS システムに
簡単に移行する方法

Melissa Churley, Agilent Senior Applications Scientist

多くのラボでは生産性を上げるため、1 つの装置で作成した GC/MS のメソッドを、別の GC/MS でも使用したいと考えています。アジレントのトリプル四重極 GC/MS なら、GC/MS システム間でメソッドを共有して、同じ GC リテンションタイムを維持することが可能で、メソッドの移行が迅速かつ簡単に行えます。さまざまな Agilentの GC/MS システム間でメソッドを再利用したり、同じリテンションタイムを維持したりする方法をご紹介します。

最近の例では、Agilent シングル四重極 GC/MS システムから Agilent トリプル四重極 GC/MS にメソッドを移行しました。既存の GC/MSD メソッドを Agilent トリプル四重極システムに移行して読み込んで、リテンションタイムを元の GC/MSD のメソッドに合わせてロックすることができます。リテンションタイムを大幅に更新することなく同じデータ分析メソッドが使用可能となり、煩わしいメソッドの調整の手間が大幅に削減でき、ラボの生産性が向上します。

図 1. GC/MSD のメソッド読み込み前の、トリプル四重極 GC/MS のメソッドが表示された、MassHunter の取り込みホーム画面。

図 1. GC/MSD のメソッド読み込み前の、トリプル四重極 GC/MS のメソッドが表示された、MassHunter の取り込みホーム画面。

図 2. メソッド変換レポートでは、これから読み込むメソッドと、現在トリプル四重極 GC/MS で設定されているメソッドのシリンジサイズが異なることが、メソッドのミスマッチとして表示されます。メソッドのシリンジサイズは簡単に変更できます。

図 2. メソッド変換レポートでは、これから読み込むメソッドと、現在トリプル四重極 GC/MS で設定されているメソッドの
シリンジサイズが異なることが、メソッドのミスマッチとして表示されます。メソッドのシリンジサイズは簡単に変更できます。

図 3. シングル四重極 MS メソッドをトリプル四重極 MS にロードした後の、MassHunter の取り込みホーム画面。

図 3. シングル四重極 MS メソッドをトリプル四重極 MS にロードした後の、MassHunter の取り込みホーム画面。

図 4. メソッドのイオン源温度を変更して、これから測定を行うトリプル四重極 GC/MS のチューニングファイルを読み込みます。

図 4. メソッドのイオン源温度を変更して、これから測定を行うトリプル四重極 GC/MS のチューニングファイルを読み込みます。

図 5. シングル四重極 GC/MS であっても、トリプル四重極 GC/MS であっても、複数の GC/MS の間でずれないリテンションタイムシングル四重極 GC/MS でリテンションタイムロッキングした後の、Agilent 5977B GC/MSD および Agilent 7000D トリプル四重極 GC/MS での PCB 分析。

図 5. シングル四重極 GC/MS であっても、トリプル四重極 GC/MS であっても、複数の GC/MS の間でずれないリテンションタイムシングル四重極 GC/MS で
リテンションタイムロッキングした後の、Agilent 5977B GC/MSD および Agilent 7000D トリプル四重極 GC/MS での PCB 分析。

GC/MSD からトリプル四重極 GC/MS へ簡単にメソッド移行

Agilent GC/MSD や Agilent トリプル四重極 GC/MS の “シングル四重極” モード、 “トリプル四重極” モードのメソッドは簡単にトリプル四重極 GC/MS で読み込めます。 MassHunter ワークステーション データ取り込み画面 (図 1) は、機器 (この場合は checkout.7000.eiex.m) に読み込まれているトリプル四重極メソッドの例を示しています。

まず、GC/MSD のメソッドを、トリプル四重極 GC/MS システムの任意のローカルディレクトリにコピーします。この例では、28 種類のポリ塩化ビフェニル (PCB) コンジナーの選択イオンモニタリング (SIM) メソッドを読み込みます。

移行するメソッドを読み込むには、Method(メソッド) > Load Single Quad (597x) Method(シングル四重極 (597x) メソッドの読み込み) をクリックします。メソッドの読み込み後に、メソッド変換レポートにこれから読み込むシングル四重極 GC/MS のメソッドと、現在読み込まれているトリプル四重極 GC/MS のメソッドの違いが表示されます。図 2 の例のメソッドでは 5 mL のシリンジサイズが設定されていますが、現在の GC の設定ではシリンジサイズが 10 mL になっています。メソッドエディタ画面で必要に応じて項目を変更し、これから読み込むメソッドと、測定で使用する GC の構成が一致するようにします。

図 3 新しいメソッドが読み込まれている MassHunter の取り込み画面次に、イオン源温度を 230 °C から 320 °C に変更します。

イオン源温度を変更するには、MS Method Editor を開きます(ホーム画面の四重極アイコンをクリックします)。シングル四重極からコピーされてトリプル四重極に読み込まれた SIM メソッドのパラメータが表示されます。これから測定を行うトリプル四重極チューニングファイルを読み込んで、メソッドのイオン源温度を入力します。図 4 を参照してください。メソッドを保存します。

イオン源が異なるメソッドの共有

機器間で異なるイオン源を使用する場合でも、あるイオン源で作成したメソッドを別の装置の異なるイオン源で測定することができますが、その場合はゲインの調整が必要になることがあります。例えば、Agilent 超高感度イオン源 (HES) は他のイオン源よりも感度が高いため、検出器の飽和を防ぐためにゲインを小さくしたり、注入量を減らしたりすることが必要な場合があります。

機器間のリテンションタイムを簡単かつ迅速に合わせる

メンテナンスでカラムをカットしたり、別の機器へのメソッドのコピーを実行した後であっても、リテンションタイムを再ロックで合わせることで、データ解析がしやすくなります。複数の Agilent GC で同じ寸法のカラムを使用する場合、Agilent リテンションタイムロッキング (RTL) を使用することで、ほぼ同じリテンションタイムの測定を行うことができます。ChemStation ソフトウェアの RTL のプロセスについては、アジレントのアプリケーションノートGC-MS-201512OS-001 を参照してください。

Agilent MassHunter ワークステーションのデータ解析ソフトウェアでは、シングル四重極、トリプル四重極 GC/MS の両方のデータファイルを扱うことが可能です。このため、プラットフォームごとに異なるデータ解析ソフトウェアを別々に使用する必要はありません。

例えば図 5 は、シングル四重極の Agilent 5977B GC/MSD で SIM メソッドを使って分析した 28 種類の PCB コンジナーのトータルイオンクロマトグラム (TIC) (上) と、同じメソッドを使って Agilent 7000D トリプル四重極 GC/MS で測定して得られた TIC (下) を示しています。7000D ではこのメソッドで一度サンプル測定をして、PCB209 のリテンションタイムである 30.71 分に再ロックして、同じリテンションタイムが得られるようにします。

時間を節約してラボの生産性を上げるためのヒント

Agilent シングル四重極 GC/MSD システムから Agilent トリプル四重極 GC/MS/MS 機器へのメソッド移行は簡単に行えるため、装置の作業負荷の分散によって装置の稼働率を上げることができ、ラボの生産性が上がります。 Agilent MassHunter ワークステーション のデータ解析では、シングル四重極もトリプル四重極も、どちらの GC/MS で測定したデータファイルで解析を行えるため、別々のデータ分析プログラムを使用する必要がありません。同じ操作性でデータ解析を行えます。