Access Agilent 2016年9月号

Agilent 1290 Infinity II LC によるビール中の苦味、クローブ様香気の高速分析

Gerd Vanhoenacker、Mieke Steenbeke、Frank David、Pat Sandra Research Institute for Chromatography、Belgium
Udo Huber Agilent LC アプリケーションマネージャ

良質なビールの香りは、多種多様な化学物質から作り出され、とても複雑です。Agilent 1290 Infinity II LC システムは、瓶ビール中の苦味化合物やクローブ様香気を持つフェノール化合物 4-ビニルグアヤコールの測定に最適です。この記事では、ビールの品質管理で重要となる化合物を 6 分間で測定することのできる UHPLC メソッドを紹介します。このメソッドでは、ダイオードアレイ検出器 (DAD) と蛍光検出器 (FLD) を直列で用いることにより、これらの化合物すべてを定量することが可能です。FLD は ppb レベルの 4-ビニルグアヤコールを優れた選択性、感度、および精度で測定するうえで、特に重要な役割を果たします。

ビールの品質管理で重要な化合物

ホップ (Humulus lupulus L.) やホップ抽出物にはα酸またはフムロンが含まれており、ビール醸造時に煮沸麦汁に加えることでビールに苦味を与えることができます。フムロンはほとんど無味ですが、煮沸工程で苦味のあるイソα酸 (IAA) またはイソフムロンに変化します。さらにビールの泡持ちおよび光安定性を高めるために、テトラヒドロイソα酸 (テトラヒドロイソフムロン、TH) などの還元 IAA が添加されます。

一部のビールに含まれるもう 1 つの重要な香気化合物として、4-ビニルグアヤコール (4-VG) があります。4-VG はクローブ様香気を与えるフェノール化合物であり、小麦ビールや一部の特殊ビールには大量に含まれますが、一般的なビール含有量は微量濃度 (0.05~0.25 ppm の範囲) です。4-VG の香気閾値は比較的低く (約 0.1~0.2 ppm)、微量の 4-VG を定量するには、高感度で堅牢なメソッドが必要になります。

ビールの品質管理では、IAA、TH、および 4-VG を正確に測定することがきわめて重要になります。この記事では、瓶ビールに含まれるこれらすべての化合物を分析する高速かつ高感度の UHPLC メソッドについて紹介します。DAD と FLD を直列で使用する Agilent 1290 Infinity II LC システム DAD なら、必要な分析が 1 回で行えます。

サンプル前処理なしでも優れた定量データを実現

今回の実験の主な目的は、サンプル前処理をまったく行わずに脱気したビールを直接注入して苦味酸および 4-VG を同時に分析できるメソッドを開発することでした。この分析法開発で最も困難だったのが、複雑なビールマトリックス中に ppm 以下の濃度で存在する 4-VG の測定でした。そこで、分析開始時にアイソクラティック分離を用いるグラジエントメソッドを構築しました。アイソクラティック分離を組み込むことで、 4-VG のピークに干渉する隣接ピークのリスクを抑えることができました。加えて、4-VG の溶出後にグラジエント分離を行うことで、IAA およびテトラヒドロイソフムロン (THIAA) でもシャープなピークが得られます。そして、分析時間も短縮することができました。4-VG は DAD および FLD で検出しました。IAA および還元 IAA の検出は DAD で検出しました。

図 1. 約 1 ppm の 4-VG、20 ppm の IAA、および 5 ppm の TH が含まれる標準溶液が良好に分離しています。

図 1. 約 1 ppm の 4-VG、20 ppm の IAA、および 5 ppm の TH が含まれる標準溶液が良好に分離しています。

図 2. 一般的なピルスナータイプのビールの分析から、4-VG が少量 (0.12 ppm) 存在していることが明らかになりました。

図 2. 一般的なピルスナータイプのビールの分析から、
4-VG が少量 (0.12 ppm) 存在していることが明らかになりました。

図 1 は、標準溶液の DAD シグナルと FLD シグナルの比較です。IAA 標準溶液にはトランス-IAA のみが含まれていますが、ビールサンプルにはシス- およびトランス-IAA の両方含まれていました。今回の実験に用いた分析条件では、シス- およびトランス-IAA、還元シス- およびトランス-IAA をすべて良好に分離し、重要な各苦味化合物を定量することができました。

注入の再現性を評価するために、標準溶液を 6 回連続注入しました。これにより得られたピーク面積の標準偏差はすべて 1 % 未満でした。そして、9 レベル (3 種類の標準溶液をそれぞれ 3 種類の注入量で使用) のキャリブレーションにより、各化合物について 0.999 以上の相関係数が得られました。

低濃度で存在する重要な香気成分の検出と定量

ビールサンプルは、分析前に超音波で脱気し、シリンジフィルタでろ過しました。図 2 は、前述のすべての苦味酸と少量の 4-VG (0.118 ppm) を含む一般的なベルギーラガービールのクロマトグラムです。DAD による 4-VG のピークはシグナル強度が低く、他の化合物のピークと隣接しているため、DAD での検出および定量が困難なのは明らかです。適切な波長設定の蛍光検出器 (FLD) を用いることで、実際のビールサンプル中の 4-VG を容易に検出し、正確に定量することができます。

このメソッドの適用性を実証するために、14 種類のビールで 4-VG、IAA、および TH を分析しました。この実験により得られた定量データとさまざまな酸の比率は、アジレントのアプリケーションノート 5991-6665EN にまとめられています。一部のビールのクロマトグラムも掲載されています。

必要な結果を高速分析で提供

開発したメソッドでは、サンプル前処理が最小限で済み、ビール中の IAA、THIAA、および 4-VG を高速かつ正確に測定することができます。ビールに含まれる多くの化合物の検出には DAD が適していますが、FLD を直列で併用することで、4-VG も高感度で検出でき、この重要な香気化合物を閾値濃度で定量できます。Agilent 1290 Infinity II LC システムにより、一連のビールに含まれる化合物を高い信頼性で定量できたことからも、このメソッドの適合性が実証されました。

ビール醸造業の事業者、そして自家ビール醸造に関心のある事業者も、ぜひこのブロクにアクセスして、ビールの分析をサポートするアジレントの幅広いソリューションをお読みください。ブログから、ビールの分析に役立つアジレントのアプリケーションノートにもリンクしています。アジレントが提供するビールの品質管理ソリューションの詳細については、アジレントの担当者までお問い合わせください