Access Agilent 2014年11月号

堅牢な溶出試験メソッドへの道を開くQuality by Design

Richard Verseput
S-Matrix 社社長

Bryan Crist
アジレント科学研究マネージャ

Quality by Design (QbD) は、分析メソッド開発に理想的なツールの 1 つで、溶出試験メソッドに興味深い結果をもたらします。従来のメソッドでは、1 分間当たりの回転数が 50、75、100 回転、また試験液量が 500、900、1000 mL に制限されます。この記事では、QbD に沿った溶出試験メソッドの開発について説明します。このメソッドは、主要な機器パラメータを従来とは異なる設定にすることにより、堅牢で、識別力の高いものとなります。

表 1 に溶出試験メソッドの分析目標プロファイル (ATP) をまとめます。この表には、この実験で使用した 4 つの重要な溶出試験パラメータとその実験範囲、および日常的な使用で想定される運用上の変動量が表示されています。また、ATP はメソッドで要求されるパフォーマンスの平均と堅牢性もまとめています。日常的な使用でメソッドパラメータに複合的な変動が発生することを前提として、各メソッドは、許容下限を超える必要があります。

実験パラメータ

実験の変数

実験の範囲

想定される ±3σ の変動

pH

4.10 ≤ pH ≤ 4.90

±0.10

ベッセル内容量 (mL)

500 ≤ ベッセル内容量 ≤ 1,000

±10.0

パドル回転数 (rpm)

50 ≤ パドル回転数 ≤ 100

±5.0

界面活性剤 (%)

0.5 ≤ 界面活性剤 ≤ 1.50

±0.05

性能要件

レスポンス

平均性能目標

許容下限

f2

≥ 60%

50%

15 分間溶出

80%

70%

30 分間溶出

90%

80%

45 分間溶出

100%

90%

表 1.この実験で開発された溶出試験メソッドの重要な品質特性

S-Matrix Corporation の Fusion QbD Software Platform を使って実験の計画を作成し、Agilent OpenLAB クロマトグラフィーデータシステム (CDS) でテストを自動化しました。また、このプラットフォームを使用して、データをモデル化し、QbD の結果を報告しました。実験は、パドル法、 1.0 リットルのベッセルで構成される溶出試験装置を使用しました。0、15、30、45、および 60 分にサンプルを採集し、UHPLC を使って、溶出された医薬品有効成分 (API) の割合を分析します。

Fusion QbD は、要求されたブランク注入と標準注入を含め、必要な溶出試験法を Agilent OpenLAB CDS で自動的に作成します。また、サンプルクロマトグラムの処理結果をインポートして、テストレプリケートのデータを平均放出プロファイルに集計することもできます。このソフトウェアは、プロファイルから f1関数 や f2関数を導き出し、ユーザーの指定したサンプリングポイントのレスポンスを取得します。例えば、15、30、および 45 分の溶出率を導き出します。

性能目標の達成に最適なメソッドを容易に検索

Fusion QbD Software Platform は、データの自動モデル化を使用して、すべてのユーザーの仕様性能目標を、同時に達成できる最適なメソッドを検索します。また、各レスポンスの許容限度に上限 (QbD 用語では不適合境界) を設定することもできます。指定されたレスポンスに対する個々の結果は通常、平均値あたりで変動するため、このソフトウェアは絶対的な許容限度ではなく、制限付き許容限度を使用します。表 2 に、この検索の結果得られたメソッドと、制限付き許容限度、および各レスポンスについて想定された結果を示します。

実験の変数

検索により予測された
最適な設定

pH

4.7

ベッセル内容量

625

パドル速度

50

界面活性剤

1.1

レスポンス

制限付き許容限度

予測された結果

API - f2

≥ 60

65

API - X での Y 平均 = 15

75

83

API - X での Y 平均 = 30

85

90

API - X での Y 平均 = 45

≥ 95

98

表 2.性能目標を満たすメソッド (データの自動モデル化による)

メソッドが失敗するリスクを軽減する堅牢性分析

制限付き平均性能要件をすべて満たすメソッドを 1 つまたは複数得られたら、制限付き許容限度を使用して、平均性能に対する予備的なデザインスペースを作成します。その後、このデザインスペースに堅牢性で不合格となるメソッドがあるかどうかを判断する必要があります。不合格とは、日常的な使用で実験パラメータに予測される変動があると、そのメソッドが許容できない結果を出す場合があることを意味します。この判断には、モンテカルロシミュレーションが使用されます。このソフトウェアは実験の変数で想定される運用上の変動量 (表 1 に示す ±3σ の変動) を使って、各レスポンスに対するメソッドの堅牢性を予想するモデルを生成します。

Fusion QbD 可視化機能を使って、メソッドが最小性能要件を満たさない設定に色を付けて表示し、メソッド開発時間を短縮

図 1. Fusion QbD 可視化機能を使って、メソッドが最小性能要件を満たさない設定に色を付けて表示し、メソッド開発時間を短縮(図を拡大)

Fusion QbD 可視化機能を使って、メソッドが最小性能要件を満たさない設定に色を付けて表示し、メソッド開発時間を短縮

図 1. Fusion QbD 可視化機能を使って、メソッドが最小性能要件を
満たさない設定に色を付けて表示し、メソッド開発時間を短縮

図 1 は、4 個の変数 (4D) を持つトレリスグラフの系列で、 Fusion QbD のグラフィック式解析と視覚化機能を使用して決定された実験パラメータに対する最終デザインスペース実証済みの許容範囲 (PAR) を示します。平均レスポンスと堅牢性レスポンスにはそれぞれ色が割り当てられている点に注意してください。メソッドが最小性能要件を満たせなかったグラフ内の領域は、この色で網掛けされています。あるレスポンスの網掛け領域とそうでない領域を区切る濃い色の線は、許容限度 (QbD 用語では不適合境界) です。

図 1 にある 9 つのトレリスグラフすべてに共通して、パドル速度とベッセル内容量の PAR は黒い長方形で表されています。トレリスの系列は、pH (±0.1) および界面活性剤 (±0.05) の PAR も表しています。したがって、図 1 にあるグラフ系列は、4 つの実験パラメータすべての最終的なデザインスペースと PAR を同時に可視化します。

この実験で、グラフィックな可視化ツールを使用したことは極めて重要でした。目標 pH 4.50 では、すべての変数について、要求された PAR 全体で堅牢なデザインスペースをサポートできないことがわかったからです。しかし、目標 pH を 4.70 に変更すると、堅牢性の目標を達成できました。

失敗のないメソッドを簡単に開発

実験デザイン (DOE) は、相互作用の効果を含む複数の実験パラメータの効果すべてを、共同研究の範囲内で効率的に調査、モデル化できるようにします。このモデル化は、メソッド候補の平均性能および相対的な堅牢性の両方の特性を表現します。Fusion QbD ソフトウェアに統合された QbD に沿ったアプローチと Agilent OpenLAB クロマトグラフィーデータシステム および UHPLC を組み合わせることにより、すべての性能要件を満たす堅牢なメソッドを迅速に特定できました。また、実験に使用した 4 つの変数について、堅牢な最終デザインスペースと PAR を確立し、可視化することもできました。

堅牢なディソリューションメソッドをさらに簡単に、信頼性の高い方法で開発する場合の詳細については、 Agilent 溶出試験の提供と Fusion QbD Software Platform をご覧ください。