Access Agilent 2014年6月号

アジレントの可搬型ハンドヘルド FTIRを用いた ポリマーのポジティブ材料識別 (Positive Material Identification : PMI)

John Seelenbinder Ph.D.
アジレントグローバルマーケティングマネージャ – モバイル FTIR

Alan Rein Ph.D
アジレントグローバルビジネス開発・商品化 – モバイル FTIR

最先端材料開発の進歩により、数多くのポリマー、プラスチック、複合材料、エラストマー製品等が生まれています。これらの物質は同じような構造を持っていますが、合成の際に若干の変化を加えれば、異なる用途や性質を持たせることができます。こうした材料の組成を迅速に定性および確認できる分析メソッドや技術が必要です。原材料の供給源が世界的に拡大していることから、成分の真正性を確認し、偽造品や表示の誤り、規格外のポリマー材料および成分を検出することが重要となっています。

そのためには、ポジティブ材料識別 (PMI) が求められます。こうした高度な材料の分析に特に役立つ技術が、フーリエ変換赤外分光光度法 (FTIR) です。最近発表されたアジレントのコンパクトな可搬型ハンドヘルド FTIRは、ポリマー、プラスチック、エラストマー、複合材料の分析に新たな次元を追加します。

Agilent 4300 ハンドヘルド FTIR (左) と 4500 シリーズ可搬型 FTIR (右) は、完全に非破壊で、分析対象物のサイズや形状にかかわらず、in situ 測定を可能にします。

図 1. Agilent 4300 ハンドヘルド FTIR (左) と 4500 シリーズ可搬型 FTIR (右) は、完全に非破壊で、分析対象物のサイズや形状にかかわらず、in situ 測定を可能にします。

サンプルを破壊せずに分析

可搬型ハンドヘルドFTIRを材料や測定対象のある場所へ運んで、化学的同定を実施できるようになりました。FTIR は完全な分析ですので、巨大構造物や貴重な物、あるいは切り取ってラボに持ち帰れないような物でも、サンプルを損なわずに測定することが可能になりました。

アジレントのコンパクトな可搬型 ハンドヘルドFTIRは、メソッドの実行を容易にし、分析結果を最適化する新しいソフトウェアとサンプルインタフェースを備えています。以下の 3 種類のデータ解析テクニックにより、PMI を実施することが可能です。

  1. 全体的な化学構造からポリマーの同一性を確認するためのポリマー材料の測定
  2. 特定のポリマーまたはポリマー成分の化学組成の測定により、必要な規格を満たしているかどうかを確認
  3. ポリマーに含まれる特定の化合物の濃度の測定により、物理的性能または消費者安全性に関する基準を満たしているかどうかを確認

これらの例ではいずれも、異なる分析アプローチが求められます。技術資料 5991-4122EN では、アジレントの可搬型ハンドヘルド FTIR システムを用いて、上述の 3 つの分析のシナリオを非破壊で達成できることを実証していますが、この記事では化学組成測定に焦点を当てて説明します。

材料の規格適合度を確認する判別分析

IR スペクトルのライブラリ検索は、物質の同定を行うための簡便な手法です。ただし、ポリマーシールの場合、より詳細な分析により、材料を識別および同定し、真正性を確認することが求められます。各シールは同様の IR スペクトルを有することがありますが、調合のわずかな相違から生じるパフォーマンスの違いがあります。一連の材料を調べて、あらかじめ設定された規格に関する各材料の適合度を測定する場合、 Agilent FTIR システム では、判別分析をベースにしたメソッドが用いられます。

このケースの場合、各種の材料の規格セットに相当する多くのスペクトルが保存されています。部分最小二乗法または主成分分析を用いて、当該クラスにおけるサンプルセット全体とサンプルとの共通性を測定します。簡単に言えば、この手法は、サンプルが「良いか悪いか」、偽物か本物かを迅速に測定できるパワフルな手段です。Agilent MicroLab ソフトウェア では、材料の識別情報を表示し、条件付きのレポートにより合否を決定することができます。

このモデルでは、化学組成をもとに、 FKM タイプ 1 エラストマーが正確に分類されました。

図 2. このモデルでは、化学組成をもとに、 FKM タイプ 1 エラストマーが正確に分類されました。(図を拡大)

このモデルでは、化学組成をもとに、 FKM タイプ 1 エラストマーが正確に分類されました。

図 2. このモデルでは、化学組成をもとに、 FKM タイプ 1 エラストマーが正確に分類されました。

図 2 に示すキャリブレーションにもとづいた FKM タイプ 1 エラストマーのポジティブ確認結果を示しています。

図 3.図 2 に示すキャリブレーションにもとづいたFKM タイプ 1 エラストマーのポジティブ確認結果を示しています。(図を拡大)

図 2 に示すキャリブレーションにもとづいた FKM タイプ 1 エラストマーのポジティブ確認結果を示しています。

図 3. 図 2に示すキャリブレーションにもとづいた
FKM タイプ 1 エラストマーのポジティブ確認結果を
示しています。

O-リングのタイプをオンサイト分析で分類

例として、FKM タイプ 1 O-リングを同定する判別モデルを作成しました。この O-リングは、石油業界でシール材料として用いられています。このモデルでは、部分最小二乗法判別分析 (PLSDA) テクニックを使用しています。

8 種類のカテゴリーの FKM 材料が含まれるキャリブレーションセットを採取しました。材料はすべて、きわめてよく似た製剤設計を持っていますが、各カテゴリーは独自の特性を持っているため、FKM の種類を区別することが重要です。

各種の FKM グループを良好に区別するために、FKM タイプ 1 のターゲットグループに 1 の数値を割り当て、FKM と他のエラストマーの両方を含めたその他の 7 つのグループから得られたサンプルのスペクトルには、ターゲットグループとの化学的差異の度合いをもとに、10~20 の数値を割り当てました。この数値範囲により、多種類のエラストマーを含む他の FKM タイプと FKM タイプ 1 を正確に区別することができました。クロスバリデーションを用いた分類結果を図 2 に示しています。

上述のキャリブレーションを Microlab PC メソッドに組み込みました。条件付きレポート作成機能を用いて、ターゲットグループ内のサンプルには「Confirmed FKM Type 1」 (図 3) 、それ以外のサンプルには「NOT FKM TYPE 1」というメッセージを表示させました。

現場分析によるポジティブ材料識別

ポリマー材料に関する規格の特定や確認、真正性の確認、偽造品の検出は、製造業界において世界的にきわめて重要となっています。Agilent 4300 ハンドヘルド FTIR および 4500 シリーズ可搬型 FTIR  は、3 種類の分析アプローチにより、ポジティブ材料識別を支援します。スペクトル検索でも判別分析でも、定量分析による材料の特性および規格の確認でも、堅牢なアジレント製のFTIRなら、分析のニーズを満たすことができます。

ポジティブ材料識別を実施する必要があり、必要なときに必要な場所で FTIR 測定を実施したい方は、技術資料 5991-4122EN の完全版で詳細をご確認ください。この検証に用いたサンプル材料と、エラストマーの用途に関する貴重な情報を提供してくださった Precision Polymer Engineering に感謝します。