Access Agilent 2014年2月号

水素キャリアを用いた水中揮発性化合物(VOC)の分析

Lakshmi Krishnan
アジレントグローバルマーケティングプログラムマネージャ、環境

従来、パージ&トラップ方式による揮発性有機化合物 (VOC) の分析には、一般的にキャリアガスとしてヘリウムが使用されます。しかし、世界的なヘリウムの不足や価格の上昇により、多くのラボでヘリウム使用量を削減する方法として、水素などの代替キャリアガスの使用などを検討しています。

アジレントではヘリウムガス消費量を減らすソリューションと水素キャリアのソリューションを提供しています。新たなヘリウムガス消費削減のGC システム用の新モジュールの概要は以下のリンクで紹介しています。Addressing the World Shortage of Helium (世界的なヘリウム不足に対応する)GC および GC/MS 分析での水素キャリアガスへの移行を支援するためのメソッドとツールを開発しました。

水素を用いたパージ&トラップ GC/MS による水中揮発性化合物の分析

ここで紹介する 最初の例は、キャリアガスとして水素を用いて、U.S.EPA メソッド 524.2 (キャピラリカラムガスクロマトグラフィー/質量分析による飲料水中パージ可能有機化合物の測定)を実行しています。このメソッドは、もっとも広く用いられている U.S.EPA 飲料水分析メソッドです。ここで紹介する水素キャリアのノウハウは、他の U.S.EPA 揮発性化合物分析メソッドでも応用できます。

ブロモフルオロベンゼンオートチューン評価レポート。

図 1.ブロモフルオロベンゼンオートチューン評価レポート。(図を拡大)

ブロモフルオロベンゼンオートチューン評価レポート。

図 1.ブロモフルオロベンゼンオートチューン評価レポート。

このメソッドは、Agilent 5977A GC/MSD システムAgilent 7890B GC を用いて開発しました。試料導入は Atomx Automated VOC パージ&トラップサンプル前処理導入装置を使用します。GCカラムは、Agilent J&W DB-624 ウルトライナート GC カラム (15 m x 100 µm) を使用します。

水素キャリアによる BFB チューニング

このメソッドでは、EPA 要件に準拠してブロモフルオロベンゼン (BFB) をMSのチューニングする必要があります。内標準とサロゲート標準を添加したサンプルとブランクをパージし、合計 150 回連続してブロモフルオロベンゼンを注入しました。標準 BFB チューニングレポートプロトコルを用いて、各注入を評価しました。その結果、水素メソッドにより、一貫してすべての EPA メソッド 524.2 BFB チューニング基準を満たせることが証明されました (図 1)。

アジレントの揮発性化合物分析アプローチの基盤である BFB オートチューンは、完全に自動化されたチューニングであり、ターゲットチューニングアプローチよりも一貫性、堅牢性、感度を高め、ダイナミックレンジが拡大されます。

BFB オートチューンにより、きわめて優れた安定性が実現します。ベータテストに参加したラボでも、継続的なキャリブレーション確認基準を満たせなかったりテストのやり直しをしたりすることなく、数か月にわたって水試料が安定して分析できたことが確認されています。

キャリブレーション標準中の 10 ppb の各化合物のトータルイオンクロマトグラム (TIC)。

図 2. キャリブレーション標準中の 10 ppb の各化合物のトータルイオンクロマトグラム (TIC)。(図を拡大)

キャリブレーション標準中の 10 ppb の各化合物のトータルイオンクロマトグラム (TIC)。

図 2.キャリブレーション標準中の 10 ppb の各化合物のトータルイオンクロマトグラム (TIC)。

クロマトグラフィー性能を最大限に高める
Agilent J&W DB-624 ウルトライナート GC カラム

今回の分析では、初期のキャリブレーション範囲は 0.2 ppb から 40 ppb でした。各サンプルには、20 ppb の内標準とサロゲート標準も含まれています。クロマトグラフィーでは全体的に左右対称の良好なピークが得られました。86 の化合物のうち、最後に溶出した分析対象は 11.01 分に溶出しました (図 2)。

キャリブレーション用標準に含まれる各化合物について、きわめて優れたピーク形状と左右対称性が得られました。VOC の高速分析や、未知化合物を含む環境および化学サンプルの分析には、Agilent J&W DB-624 ウルトライナート GC カラムが最適です。独自のウルトライナート不活性化処理により、ピーク形状とシグナル/ノイズ比が向上し、定量分析でも定性分析でも高い感度が得られます。

メソッド検出下限 (MDL) と相対標準偏差も、EPA メソッド 524.2 の基準を満たしています。キャリブレーションデータ品質も十分に高く、85 の化合物すべてについて、NIST リバースのMSライブラリ検索で高いスペクトルマッチスコアが得られました。

このメソッドは、GCキャリアガスとして水素、パージガスとして窒素を用いて、EPA メソッド 524.2 の基準を満たすようにアジレントが開発しました。詳細については、アプリケーションノート 5991-3358EN(英語版) をご覧ください。

U.S.EPAメソッド対応のアジレントHS-GC/MS VOCアナライザ

U.S.EPAメソッドに対応した水中の揮発性有機化合物分析用ヘッドスペースサンプラを用いたGC/MSシステムシステムもご用意しています。詳細はGC/MS 揮発性化合物分析アナライザご確認ください。アジレントのアナライザには、以下のような多くの利点があります。

  • アジレント・ファクトリーでU.S.EPAメソッドVOC分析に対応したメソッドの最適化と性能検査をしています。
  • GC カラム、消耗品、キャリブレーション/チェックアウト用サンプル、分析メソッドを含めた VOC 分析に合わせてシステム最適化により、納入後の各種設定に要する時間が短縮できます。
  • キャピラリ・フロー・テクノロジーを使用したバックフラッシュ機能により、分析の堅牢性が高まることに加え、分析時間の短縮とメンテナンスの負担が軽減します。

Agilent GC/MS 揮発性化合物分析アナライザのホームページから、このソリューションの詳細をご確認ください。

  1. H. Prest, D. R. Walker, B. J. Hom, A. Vickers. “Using Hydrogen Carrier Gas for US EPA VOC Methods on the Agilent 5975 and Agilent 5977 GC/MSD Systems”. Agilent Application Note 5991-3358EN.
  2. J. S. Hollis, H. Prest. “Volatile Organic Compound Analysis Using Purge and Trap”. Agilent Application Note 5991-0029EN (2012).