Access Agilent 2013年10月号

空気中有機揮発性化合物測定の 新しいTD-GC/MSDソリューション

Laura Provoost
アジレント GC プロダクトマネージャ

大気汚染は、世界中の大きな懸念事項となっています。大気中の汚染物質は、室内にも屋外にも存在します。そうした有害な汚染物質や粒子は、自動車の排気ガスや調理用の火、森林火災の煙、火山の噴煙、産業プロセスで排出される揮発性物質や半揮発性物質など、あらゆるものから検出されます。そうした物質の分析を連続的に信頼性のある方法で測定するのは、容易ではありません。

アジレントでは、堅牢なソリューションを提供し、自動サンプリング、ガスおよび電力の省力化、揮発性化合物と半揮発性化合物の同時分析を可能にするために、Agilent 7890B GC システムおよび Agilent 5977A シリーズ GC/MSDMarkes UNITY 加熱脱着 (TD)を統合したシステムを提供しています。Markes UNITY TD は、サンプリングした大気中の有機汚染物質を加熱脱着によってガスクロマトグラフに導入することができます。また、Agilent 7890B GC および 5977A MSD と組み合わせれば、大気のサンプリング、加熱脱着、分析に対応できる完全なソリューションが実現します。この統合されたシステムのソリューションにより、EPAなどのメソッドに準拠した信頼性の高いサンプリングが可能になり、優れた検出下限が得られます。この記事では、このソリューションのパフォーマンスを2 つのアプリケーション例でご紹介します。

各種炭化水素の日中プロフィール。交通量の少ない時間帯と多い時間帯の違いが明確に示されています。

図 1. 各種炭化水素の日中プロフィール。
交通量の少ない時間帯と多い時間帯の違いが明確に示されています。(図を拡大)

各種炭化水素の日中プロフィール。交通量の少ない時間帯と多い時間帯の違いが明確に示されています。
 

分析条件

カラム

Agilent J&W GS-GasPro、30 m x 0.32 mm、
4 µm (p/n CP8568)

GC プログラム

40 °C (6 分ホールド)、
20 °C/min で 40~200 °C (1 分ホールド)


 

UNITY 2 パラメータ

プレパージ時間

1 分

サンプリングレート

25 mL/min

サンプリング時間

ケースにより異なる

コールドトラップ

U-T17O3P-2S (オゾン先駆物質)

コールドトラップ低

-30 °C

コールドトラップ高

325 °C

コールドトラップホールド

5 分

フローパス温度

80 °C

図 1. 各種炭化水素の日中プロフィール。交通量の少ない時間帯と多い時間帯の違いが明確に示されています。

24時間の無人大気分析

都市大気中の揮発性炭化水素は、スモッグの主要な構成成分である地表のオゾンを生成することがあります。こうした化合物は、一般にオゾン先駆物質と呼ばれます。オゾン先駆物質のおもな発生源は、自動車の排気ガスとされています。オゾン先駆物質にはベンゼン、トルエン、1,3-ブタジエンなどが含まれ、その揮発性は、アセチレン (エチン) からトリメチルベンゼンまで、さまざまです。欧州 [1] と米国の規制当局 [2] は、すべての主要都市部で特定の化合物を 24 時間モニタリングし、交通量の多い時間帯と汚染レベルとの関連性を評価することを求めています。こうした継続的なリアルタイムモニタリングをおこなえば、産業排気に関する知見が得られるほか、風向き、降水量、気温の変化といった気象上の影響を観察することができます。

フィールドにおける無人測定システムの性能を検証するために、樹木の多い準田園地帯の大気を分析しました。この地域では、平日は交通量が多いものの、週末には交通量がきわめて少なくなります。図 1 は、日曜の 午後4:40 から月曜の夜までの測定対象化合物の存在量の日中変動を示しています。

図1では交通量の少ない時間帯と多い時間帯の違いが明確に示されています。交通量の少ない時間帯では、ほとんどの炭化水素はきわめて少量しか検出されていませんが、通勤時間帯のピークには急激に増加しています。なお、このシステムでは、測定が無人でおこなわれており、測定中はオペレーターの操作は一切行っておりません。また、この分析のような比較的クリーンな環境でも、必要な検出下限が得られています。

オフィス、ラボ、屋外の空気サンプルをユニバーサル吸着剤チューブを使用して採取し、スプリットレス分析を行ったあとのクロマトグラム。

図 2. オフィス、ラボ、屋外の空気サンプルをユニバーサル吸着剤チューブを使用して採取し、スプリットレス分析を行ったあとのクロマトグラム。(図を拡大)

オフィス、ラボ、屋外の空気サンプルをユニバーサル吸着剤チューブを使用して採取し、スプリットレス分析を行ったあとのクロマトグラム。
 
 

分析条件

カラム

Agilent J&W DB-624、60 m x 0.32 mm、1.80 µm (p/n 123-1364)

キャリアガス

He

定圧モード

10 psi

温度プログラム

35°C (5 分)、5 °C/min で 230 °C (0 分)

MS イオン源温度

230 °C

MS 四重極温度

150 °C

MSD トランスファーライン温度

200 °C

フルスキャンモードの質量範囲

35~300 amu


 

UNITY 2 パラメータ

コールドトラップ

Markesトラップ (p/n U-T15ATA-2S)

チューブ

Markes分析チューブ (p/n C2-AXXX-5270)
Markesステンレスチューブ (p/n C3-AXXX-5266)、
Tenax、Carbograph 1TD、Carboxen 1003 を充填

コールドトラップ低温

25 °C

チューブ脱着温度

320 °C

チューブ脱着時間

10 分

トラップパージ時間

2.0 分

コールドトラップ高温

320 °C、3 分

スプリット比

スプリットレスまたは 10:1 アウトレットスプリット

トラップ加熱速度

40 °C/秒

TD フローパス

140 °C

ピーク ID

  1. メタノール
  2. 2-メチルブタン
  3. エタノール
  4. アセトン
  5. イソプロピルアルコール
  6. 2-メチルペンタン
  7. 3-メチルペンタン
  8. ヘキサン
  9. 酢酸エチル
  10. 2-メチルヘキサン
  11. シクロヘキサン
  12. 3-メチルヘキサン
  13. ヘプタン
  14. 酢酸
  15. 1-メチル-2-プロパノール
  16. トルエン
  17. ヘキサナール
  18. キシレン
  19. キシレン
  20. α-ピネン
  21. シクロヘキサノン
  22. α-ミルセン
  23. D-リモネン
  24. フェノール
  25. メントール
  26. 2-フェノキシエタノール


 図 2.
オフィス、ラボ、屋外の空気サンプルをユニバーサル吸着剤チューブを使用して採取し、スプリットレス分析を行ったあとのクロマトグラム。

空気汚染物質モニタリングのための EPA メソッド TO-17

オフィス、ラボ、準田園地域の屋外それぞれの空気サンプルを、Markes吸着剤チューブに採取しました。流量 50 mL/min で 20 分間採取し、総体積をそれぞれ 1 L としました。その後、フルスキャン MS メソッドを用いて、10~300 amu で各チューブについてスプリットレス分析をおこないました。結果を 図 2 に示しています。ラボおよび屋外の空気サンプルでは見られなかった半揮発性化合物が、オフィスのサンプルでは明らかに検出されています。これは室内装飾品の布地から放出されたものと考えられます。

一貫した精密な大気分析を実現する統合型ソリューション

Agilent GC/MS(7890B/5977A) および Markes Unity シリーズ 2 TD を組み合わせたシステムは、正確で一貫性と信頼性の高い空気中の揮発性化合物および半揮発性化合物の分析が求められる政府機関や業界のクロマトグラフィラボに適しています。システムの詳細の情報についてはアジレントの大気分析ソリューションや、新しい大気モニタリングポスター (5991-2380EN) をご覧下さい。

謝辞

クロマトグラムと説明文を提供してくださった Markes International Ltd に感謝します。

References

  1. EC directives 96/62/EC (1996) and 2000/69/EC (2000). http://ec.europa.eu/environment/air/legis.htm
  2. US Clean Air Act Amendments (1990). http://www.epa.gov/air/caa/