Access Agilent 2013年5月号

Agilent イナート注入口による GC 微量分析の向上

Ken Lynam
アジレント GC R&D/アプリケーションケミスト

食品、環境、法医学などの分野で GC/MS を扱っている方は、きわめて活性の高い化合物の微量分析を日常的におこなっているはずです。ご存じのように、活性の高い化合物が注入口で捕捉されたり分解したりすると、化合物が GC カラムや検出器に到達できず、正確な分析結果が得られなくなります。サンプルが GC を移動するあいだに、サンプルと接触する未処理の金属表面がほんの少しあるだけでも、活性の高い化合物が失われてしまうことがあります。また、活性の高い化合物で最高の回収率とレスポンスを得るためには、サンプルフローパス中で加熱される表面をすべて不動態化する必要があります。

不活性な注入口は、ガスクロマトグラフィ用の Agilent イナートフローパスソリューションの第一の重要なコンポーネントです。というのも、注入口は、システムに入る化合物が最初に接触するポイントであるためです。アジレントでは、ウルトライナートライナ、ウルトライナートゴールドシール、ウルトライナート注入口ウェルドメントなどの幅広いイナート注入口コンポーネントを提供しています。

活性の高い化合物の微量分析を簡単にするウルトライナートライナ

アジレントのウルトライナートライナは、微量分析、特に活性の高い化合物の微量分析に適しています。最高のライナ不活性を得られるように特別に設計された一連のテストを用いて、開発および製造されています。ウルトライナート GC 注入口ライナは、スプリットまたはスプリットレス、ウールありおよびウールなしで提供されています。優れたバッチ間均一性を備え、ブリードやバックグラウンド汚染はほとんど、またはまったく生じません。また、活性の高い化合物にも優れた対応力を発揮します。

Agilent ウルトライナート GC ライナの効果を実証するために、US EPA メソッド 8270 を用いて、同じ構成の標準ライナと比較しました。

Agilent ウルトライナートライナでは、半揮発性の 2,4 DNP などの活性の高い酸性化合物でも高いレスポンスが得られています。同じ構成のフローパスで標準ライナを用いた場合は、活性と吸着が生じているのがわかります。

図 1. Agilent ウルトライナートライナでは、半揮発性の 2,4 DNP などの活性の高い酸性化合物でも高いレスポンスが得られています。同じ構成のフローパスで標準ライナを用いた場合は、活性と吸着が生じているのがわかります。 (図を拡大)

Agilent ウルトライナートライナでは、半揮発性の 2,4 DNP などの活性の高い酸性化合物でも高いレスポンスが得られています。同じ構成のフローパスで標準ライナを用いた場合は、活性と吸着が生じているのがわかります。
 
Peak ID
  1. 1. 2,4-Dinitrophenol
  2. 2. 4-Nitrophenol
  3. 3. 4,6-Dinitro-2-methylphenol
  4. 4. 4-Aminobiphenyl
  5. 5. Pentachlorophenol
  6. IS1. Acenaphthene-d10
  7. IS2. Phenanthrene-d10

条件

カラム 1

Agilent J&W DB-UI 8270D、20 m × 0.18 mm、0.36 µm (p/n 121-9723)

リストリクタ

1.0 m × 内径 0.15 mm、不活性処理済みフューズドシリカチューブ (p/n 160-1625-10)

注入口ライナ

Agilent ウルトライナートシングルテーパ、ウール入り (p/n 5190-2293)

キャリア

ヘリウム、定流量、1.58 mL/min、40 °C に設定

オーブン

40 °C で 2.5 分間、25 °C/min で 40 ~ 320 °C (4.8 分間)

注入口

S/SL 1 μL パルスドスプリットレス、300 °C、1.4 分まで 44 psi パルス、
1.42 分で 50 mL/min のパージ流量、ガスセーバーオフ

MSD

トランスファーライン 325 °C、イオン源 300 °C、四重極 150 °C、範囲 30 ~ 550 m/z

Aux EPC

2 psi、分析中のブリードは 5 mL/min

バックフラッシュ

75 psi で 3.5 分間ポストラン、Aux EPC、注入口圧力 2 psi

GC/MSD

Agilent 7890 シリーズ GC/5975C シリーズ GC/MSD

オートサンプラ

Agilent 7683B オートサンプラ、5.0 µL シリンジ (部品番号 G4513-80206)

図 1. Agilent ウルトライナートライナでは、半揮発性の 2,4 DNP などの活性の高い酸性化合物でも高いレスポンスが得られています。
同じ構成のフローパスで標準ライナを用いた場合は、活性と吸着が生じているのがわかります。

活性の高い有機リン農薬を用いたこのピーク形状の比較では、標準ゴールドおよび Siltek シールを用いた場合と比べて、ウルトライナートゴールドシールのほうが優れたピーク形状が得られることがわかります。

図 2. 活性の高い有機リン農薬を用いたこのピーク形状の比較では、標準ゴールドおよび Siltek シールを用いた場合と比べて、ウルトライナートゴールドシールのほうが優れたピーク形状が得られることがわかります。
(図を拡大)

活性の高い有機リン農薬を用いたこのピーク形状の比較では、標準ゴールドおよび Siltek シールを用いた場合と比べて、ウルトライナートゴールドシールのほうが優れたピーク形状が得られることがわかります。
 

条件

カラム

Agilent J&W HP-5ms UI、30 m x 0.25 mm、0.25 µm (p/n 19091S-433UI)

注入口ライナ

Agilent ウルトライナートシングルテーパ、ウール入り (p/n 5190-2293)

オーブン

100 °C で 4 分間維持、10 °C/min で 100 ~ 280 °C、
6 °C /min で 280 ~ 300 °C (4.67 分間維持)

キャリア

ヘリウム、52.7 cm/s (2 mL/min)、100 °C に設定、EPC - 定流量

注入口

パルスドスプリットレス、0.73 分まで 35 psi パルス、
0.75 分で 50 mL/min パージ、ガスセーバー 2 分で 20 mL/min

シール

上の図に表示

検出器

MSD、スキャンモード 40~450 m/z、イオン源 230 °C、四重極 150 °C、
トランスファーライン 310 °C

図 2. 活性の高い有機リン農薬を用いたこのピーク形状の比較では、標準ゴールドおよび Siltek シールを用いた場合と比べて、
ウルトライナートゴールドシールのほうが優れたピーク形状が得られることがわかります。

イナートフローパスと標準フローパスを用いた場合の乱用薬物 250 ppb HP-5ms UI 分析結果の重ね表示。

図 3. イナートフローパスと標準フローパスを用いた場合の乱用薬物 250 ppb HP-5ms UI 分析結果の重ね表示。 (図を拡大)

イナートフローパスと標準フローパスを用いた場合の乱用薬物 250 ppb HP-5ms UI 分析結果の重ね表示。
 

ピーク番号

1. テマゼパム

4. ニトラゼパム

2. フルニトラゼパム

5. クロナゼパム

3. ジアセチルモルヒネ

6. アルプラゾラム

図 3. イナートフローパスと標準フローパスを用いた場合の乱用薬物 250 ppb HP-5ms UI 分析結果の重ね表示。

US EPA メソッド 8270 は、環境マトリックスに含まれる半揮発性有機化合物の濃度測定に広く用いられています。そうしたマトリックスの多くでは、酸、塩基、中性化合物が混在しています。分析対象物とフローパス表面のあいだで相互作用が生じるため、この分析は難しい分析の1つです。この研究で用いたテスト用混合物には、8270 メソッドで規定されている分析困難な化合物も含まれています。図 1 の分析結果では、活性および吸着の防止という点におけるウルトライナートライナの効果が実証されています。

わずかなリークも排除するウルトライナートゴールドシール

イナートシステムを使用する場合は、ゴールドシールの及ぼす影響を無視することはできません。ウルトライナートゴールドシールは、GC 性能に悪影響を与える可能性のあるわずかなリークもシステムから排除します。ここでは、その理由を紹介します。従来の機械加工シールと異なり、Agilent ウルトライナートゴールドシールは、金属射出成形を用いて製造されています。射出成形後、金めっきによりなめらかで一貫した表面を確保しています。これにより、リークのないシールが実現しています。その後、金めっき表面をウルトライナートケミストリで処理することで、活性化合物吸着の可能性をさらに低くしています。図 2 に示すように、ウルトライナートゴールドシールを使えば、レスポンスとピーク形状が明らかに向上します。

イナート注入口ウェルドメント
– スプリット/スプリットレス注入口用のイナートソリューション

スプリット/スプリットレス (S/SL) 注入口は、キャピラリカラムガスクロマトグラフィでもっとも一般的に使用されている注入口です。スプリットモードでもスプリットレスモードでも使用できるため、ほとんどの化合物の分析に対応できる、きわめて効率の良い組み合わせといえます。アジレントでは、微量分析をおこなう科学者のために、オプションとして S/SL 注入口のイナートフローパスバージョンを発売しました。S/SL 注入口ウェルドメントの不活性は、他のフローパスコンポーネントの不活性に劣らず重要です。そのため、アジレントのウェルドメントには、独自の不活性化処理が施されています。このウェルドメントの不活性化は、微量分析において注入量を増やす場合に特に重要となります。というのも、そうしたケースでは、ライナが過充てんされ、分析対象物が金属に接触するためです。イナートウェルドメントは、Agilent イナートフローパスソリューションの一部として、汚染を防止し、活性の高い化合物の微量分析の性能を向上させます。

真に不活性なフローパスを実現する完璧なソリューション

完全に不活性な GC フローパスを提供しているのは、アジレントだけです。ウルトライナート GC カラムおよびライナと、その他のアジレントのイナート注入口コンポーネントを組み合わせれば、微量分析で究極の信頼性が実現します。アジレントのすべてのイナートコンポーネントは、クロマトグラフィ QC テストにより適格性が確認されています。これにより、フローパス注入口全体で信頼性の高い、一貫した不活性が確保されています。アジレントは、時代の最先端をいくために必要なイナートソリューションを提供しています。