Access Agilent 2013年1月号

カラム外ボリュームとディレイボリュームが分析結果に与える影響 ―Agilent 1290 Infinity LCと Waters Acquity UPLCの比較

Anne Mack
アジレントアプリケーションケミスト

LC システムのカラム外ボリュームとディレイボリュームは、分析結果に大きな影響を与えることがあります。ここでは、カラム外ボリュームとディレイボリュームの違いを説明したあと、6 種類の芳香族酸に対してグラジエント分析を行うことによって、分析結果にどのような影響を及ぼすのかを実証します。

分析には、Agilent ZORBAX Rapid Resolution High Definition (RRHD) Eclipse Plus C18 カラム、2.1 x 50 mm、1.8 µm を使用しました。表 1 に分析条件を示します。今回の検討では 以下の4 つのシステムを用いて比較しました。

 

Agilent 1290 Infinity LC システム

Waters Acquity UPLC システム

移動相 (A、B)

0.1 % 酢酸、アセトニトリル

0.1 % 酢酸、アセトニトリル

流速

0.6 mL/min

0.6 mL/min

グラジエント

時間 (分)

% B

0.00

2

5.00

60

5.50

60

5.51

2

6.00

2

時間 (分)

%B

カーブ

開始

2

開始

5.00

60

6

5.50

60

6

5.51

2

6

6.00

2

6

注入

0.01 mg/mL サンプル水溶液 4 µL、
ADVR On で最適化

0.01 mg/mL サンプル水溶液 4µL、
サンプルループ: ニードルオーバーフィルによる部分ループ

カラム温度

30 °C

30 °C

検出

Sig = 280、4 nm; Ref = オフ、スリット 4 nm、PW >0.0031 分 (レスポンスタイム 0.063 秒) 80 Hz

280 nm、4.8 nm分解能、20 ポイント/秒、高速フィルター時間一定

構成

Agilent 1290 Infinity LC システム: G4220A、G4226A、G1316C、G4212A、超低拡散キット (5067-5189)、超低拡散 Max Light カートリッジフローセルで最適化、V(ρE=0.6 µL (G4212-60038)、LC システムラック(5001-3726)

Acquity UPLC システム (BSM、SM) と Acquity UPLC PDA

カラム

Agilent ZORBAX Rapid Resolution High Definition (RRHD) Eclipse Plus C18 2.1 x 50 mm、1.8 µm (959757-902)

Agilent ZORBAX Rapid Resolution High Definition (RRHD) Eclipse Plus C18 2.1 x 50 mm、1.8 µm (959757-902)

表 1. Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムおよび Waters Acquity UPLC システムにおける芳香族酸分析に用いた分析条件

LCにおけるカラム外ボリュームとディレイボリュームの影響

カラム外ボリュームとは、サンプルがLCシステムに注入される箇所から検出される箇所までの流路の体積のことです。システムのカラム外ボリュームが大きくなると、拡散が起こりサンプルのバンド幅が広がってしまいます。特に、UHPLCカラムのような小さくて分離能の高いLCカラムで最良の結果を得るためには、カラム外ボリュームを最小限に抑えることが不可欠となります。

ディレイボリュームとは、溶媒が混合される箇所からカラムの入口までの体積を指します。ディレイボリュームは、混合された溶媒がカラムに到達するまでの時間に影響を与えるため、高速グラジエント分析では重要な要素となります。ディレイボリュームが大きくなると、ピークの溶出は遅くなります。この影響は、溶出の早い化合物で特に大きくなります。

Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムにおける配管および部品がカラム外ボリュームとディレイボリュームに与える影響。下の表では、システム構成の変更によるカラム外ボリュームとディレイボリュームへの変化を示す。

図 1. Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムにおける配管および部品がカラム外ボリュームとディレイボリュームに与える影響。下の表では、システム構成の変更によるカラム外ボリュームとディレイボリュームへの変化を示す。(図を拡大)

Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムにおける配管および部品がカラム外ボリュームとディレイボリュームに与える影響。下の表では、システム構成の変更によるカラム外ボリュームとディレイボリュームへの変化を示す。
 

通常の 1290 LC

超低拡散 1290 LC

超低拡散 1290 LC +
ADVR

カラム外ボリューム (µL)

11

4

4

ディレイボリューム (µL)

127

123

49

図 1. Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムにおける配管および部品がカラム外ボリュームとディレイボリュームに与える影響。
下の表では、システム構成の変更によるカラム外ボリュームとディレイボリュームへの変化を示す。

3 種類の構成の Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムを用いた芳香族酸の分析。通常の1290 LC (上)、超低拡散1290 LC (中央)、超低拡散1290 LC + ADVR (下)。

図 2. 3 種類の構成の Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムを用いた芳香族酸の分析。通常の1290 LC (上)、超低拡散1290 LC (中央)、超低拡散1290 LC + ADVR (下)。(図を拡大)

3 種類の構成の Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムを用いた芳香族酸の分析。通常の1290 LC (上)、超低拡散1290 LC (中央)、超低拡散1290 LC + ADVR (下)。
 

図 2. 3 種類の構成の Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムを用いた芳香族酸の分析。通常の1290 LC (上)、超低拡散1290 LC (中央)、超低拡散1290 LC + ADVR (下)。

Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムにおける
カラム外ボリュームとディレイボリュームの低減

図 1 では、通常の Agilent 1290 Infinity バイナリLC システムの構成 (左)、超低拡散システムの構成 (中央)、低ディレイボリュームシステムの構成 (右) を示しています。図の右側には、カラム外ボリュームとディレイボリュームに影響を与える部品を記載しています。システム構成図の下の表では、比較のために各システムの正確なカラム外ボリュームとディレイボリュームを示しています。図 2 は、図 1 の各システム構成で得られたクロマトグラムを示しています。

Agilent 1290 Infinity LC システム用の超低拡散 (ULD) キットと ULD Max Light カートリッジフローセルを適用し、Agilent LC システムラックを設置することにより、Agilent 1290 Infinity LC システムのカラム外ボリュームを簡単に低減することができます。超低拡散システムでは、通常のシステムよりもカラム外ボリュームが 64 % 少なくなっています。そのため、全てのピーク高さが明らかに高くなり、ピーク幅も 11~16 % 狭くなっています。ピーク幅が狭くなったため、分離能も 12~24 % 向上しています。

Agilent 1290 Infinity LCでは、非常に簡単にディレイボリュームを低減することができます。Agilent 1290 Infinity オートサンプラ用のソフトウェアに搭載された自動ディレイボリューム削減 (ADVR) 機能を使用することにより、ハードウェアの調整をおこなわずに、システムのディレイボリュームを 63 % 削減することが可能です。

ADVR を使用すると、ニードルを継続的に洗浄する通常のオートサンプラの流路が、サンプルがカラムに到達した後に注入バルブがバイパスポジションに切り替わるバイパス流路に変わります。この場合も、全てのピークのリテンションタイムが 6~9 % 短縮されました。短縮幅は、溶出の早いピークのほうが溶出の遅いピークよりも大きくなっています。さらに、ピーク幅も大幅に小さくなりました (2~7 %)。これは主に、リテンションタイムが短くなったためと考えられます。


同じ芳香族酸の分析をWater Acquity UPLCシステムで行った結果

図 3. 同じ芳香族酸の分析をWater Acquity UPLCシステムで行った結果(図を拡大)

同じ芳香族酸の分析をWater Acquity UPLCシステムで行った結果

図 3. 同じ芳香族酸の分析をWater Acquity UPLCシステムで行った結果

Waters Acquity UPLC システムのカラム外ボリュームとディレイボリューム

図 3 では、Agilent ZORBAX RRHD Eclipse Plus カラムをWaters Acquity UPLC システムで用いて、同じ芳香族酸を分析した結果を示しています。機器とカラムを適切に接続するために、Waters フィンガータイトリユーザブルフィッティングキットを使用しました。

公開されている機器仕様によれば、標準的な Waters Acquity UPLC システムのディレイボリュームは約 120 µL です。システムバンド拡散 (カラム外ボリューム) は公開されていません [1]。通常の Agilent システムでは、Waters システムに比べて全てのピークにおいて高さが低くかつ幅が広くなり、溶出も遅くなっています。この結果は、通常の Agilent LC のほうがカラム外ボリュームとディレイボリュームが大きいためと考えられます。

最適化した Agilent 1290 Infinity LC では、標準的な Waters Acquity UPLC システムよりも優れた性能が得られています。ディレイボリュームの減少により、リテンションタイムが 1~5 % 短くなっています。またピーク幅は 3~9 % 狭くなり、分離能は 7~14 % 向上しています。最適化した Agilent システムでは圧力がやや上昇していますが、それでも Waters Acquity LC で生じる圧力よりも 13 % 低くなっています。圧力が低いことから、アプリケーションに応じて流速やカラム長さを変更できるなど柔軟性が高まります。Agilent 1290 Infinity LC システムでは、最適化した構成を取り外すこともできるため、個々の分析に対して構成を都度変更することも可能になります。再度、通常のシステム構成に戻すため、元々の配管を再設置することもできます。

ピーク幅と分離能を向上させたい方は、いますぐ Agilent 1290 Infinity LC システムの詳細をご確認ください。

References

  1. “Acquity UPLC System: Instrument Specifications.” Waters Corporation, Inc. Publication Number 720000900EN, 2009.