Access Agilent 2012年4月号

ICP-QQQ と MS/MS を用いた微量分析でのスペクトル干渉除去

Ed McCurdy
アジレント ICP-MS プロダクトマーケティング

Glenn Woods
アジレント ICP-MS アプリケーションスペシャリスト

Noriyuki Yamada
アジレント ICP-MS R&D

Agilent 8800 ICP-QQQ の概略図

図 1. Agilent 8800 ICP-QQQ の概略図
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Agilent 8800 ICP-QQQ の概略図

図 1. Agilent 8800 ICP-QQQ の概略図

アジレントは 2012 年 1 月、世界初のトリプル四重極 ICP-MS システムの 8800 ICP-QQQ を発表しました。この記事では、8800 ICP-MS/MS の性能を既存の四重極 ICP-MS 技術と比較し、このシステムが搭載するタンデム質量分析計 (MS) 構成と MS/MS モードの分析上の独自の利点を説明します。

MS/MS に対応する ICP トリプル四重極

8800 タンデム MS 構成では、最初の四重極 (Q1) がコリジョン/リアクションセルの前に位置しているため、Q1 がマスフィルターとして動作する場合に (MS/MS モード)、ターゲット質量以外のすべての質量がはじかれます。そのため MS/MS モードでは、サンプル組成が異なる場合でも、コリジョン/リアクションセル (CRC) に入るイオンを一貫して制御することができます。MS/MS は、まったく新しい形で ICP-MS でのスペクトル干渉を除去します。マトリックス組成などの変動が、ターゲット物質の測定に影響を与えることはありません。

CRC を用いた従来の四重極 ICP-MS (ICP-QMS) では、サンプルに起因するすべてのイオンがセルに入ります。組成の異なるサンプルを測定する場合、セルに進入するイオンが変化すると、反応プロセスやセル内で生成されるプロダクトイオンも変化します。マトリックスによって左右されるこれらのプロダクトイオンは、分析対象質量に対する新たな干渉要因となることがあります。高純度半導体試薬のように、サンプルマトリックスが同じ場合でも、共存元素の濃度が異なることがあり、それが従来の ICP-QMS のセル内で生成されるプロダクトイオンに影響を与えることがあります。MS/MS を用いた ICP-QQQ なら、濃度やマトリックスの変化に起因する変動を排除することができます。

従来の ICP-QMS でセル生成プロダクトイオン  TiO+として測定した Ti のパターンは、理論上の同位体テンプレートと良好に一致しています

図 2. 従来の ICP-QMS でセル生成プロダクトイオン TiO+として測定した Ti のパターンは、理論上の同位体テンプレートと良好に一致しています
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従来の ICP-QMS でセル生成プロダクトイオン  TiO<sup>+</sup>として測定した Ti のパターンは、理論上の同位体テンプレートと良好に一致しています

図 2. 従来の ICP-QMS でセル生成プロダクトイオン TiO+として測定した Ti のパターンは、
理論上の同位体テンプレートと良好に一致しています

10 ppb の Ni (青)、Cu (緑)、Zn  (ピンク) が存在する場合の Ti (1 ppb) の ICP-QMS スペクトル。すべての TiO<sup>+</sup> プロダクトイオンに Ni<sup>+</sup>、Cu<sup>+</sup>、Zn<sup>+</sup> がオーバーラップしています

図 3. 10 ppb の Ni (青)、Cu (緑)、Zn (ピンク) が存在する場合の Ti (1 ppb) の ICP-QMS スペクトル。すべての TiO+ プロダクトイオンに Ni+、Cu+、Zn+ がオーバーラップしています
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10 ppb の Ni (青)、Cu (緑)、Zn  (ピンク) が存在する場合の Ti (1 ppb) の ICP-QMS スペクトル。すべての TiO<sup>+</sup> プロダクトイオンに Ni<sup>+</sup>、Cu<sup>+</sup>、Zn<sup>+</sup> がオーバーラップしています

図 3. 10 ppb の Ni (青)、Cu (緑)、Zn (ピンク) が存在する場合の Ti (1 ppb) の ICP-QMS スペクトル。
すべての TiO+ プロダクトイオンに Ni+、Cu+、Zn+ がオーバーラップしています

10 ppb の Ni (青)、Cu (緑)、Zn  (ピンク) が存在する場合の Agilent 8800 ICP-QQQ MS/MS モードを用いた Ti (1 ppb) のスペクトル。Ni、Cu、Zn  の影響をうけません。

図 4. 10 ppb の Ni (青)、Cu (緑)、Zn (ピンク) が存在する場合の Agilent 8800 ICP-QQQ MS/MS モードを用いた Ti (1 ppb) のスペクトル。Ni、Cu、Zn の影響をうけません。
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10 ppb の Ni (青)、Cu (緑)、Zn  (ピンク) が存在する場合の Agilent 8800 ICP-QQQ MS/MS モードを用いた Ti (1 ppb) のスペクトル。Ni、Cu、Zn  の影響をうけません。

図 4. 10 ppb の Ni (青)、Cu (緑)、Zn (ピンク) が存在する場合の Agilent 8800 ICP-QQQ MS/MS モードを用いた Ti (1 ppb) のスペクトル。
Ni、Cu、Zn の影響をうけません。

セル生成プロダクトイオンを確実に測定する MS/MS モードの ICP-QQQ

8800 ICP-MS/MS のセルで分析対象物と干渉イオンを分離する際には、2 種類の反応モードを使用することができます。

  • 選択したセルガスに対して、分析対象物の反応性が低く、干渉イオンの反応性が高い場合、反応により干渉を中性化するか異なる質量に移し、分析対象物を干渉のない状態で元の質量で測定します。
  • 選択したセルガスに対して、分析対象物の反応性が高く、干渉イオンの反応性が低い場合、元の干渉を受けない異なる質量で分析対象物のプロダクトイオンを生成し、分析対象物を干渉から切り離すことができます。

これらの反応モードアプローチは、従来の四重極 ICP-QMS でも使用することができます。図 2 は、セルガスに酸素を用いた 1 ppb の単元素チタン標準の測定を示しています。Ti は O2 と反応し、セル内で TiO+ を生成するため、質量 46、47、48、49、50 の Ti 同位体から形成された質量 62、63、64、65、66 の TiO+ プロダクトイオンとして Ti を測定することができます。TiO+ ピークパターンは、理論上の Ti 同位体アバンダンステンプレートと一致します。

一方、図 3に重ね表示したスペクトルは、この分析における従来の ICP-QMS の問題点を示しています。TiO+ プロダクトイオンは、共溶出する Ni、Cu、Zn (各 10 ppb) の同位体の干渉を受けます。Ni、Cu、Zn には、質量 62 および 64 (Ni)、63 および 65 (Cu)、64 および 66 (Zn) で自然発生する同位体が存在し、リアクションセル ICP-QMS を用いた測定では、これらすべてが Ti16O+ プロダクトイオン同位体にオーバーラップします。

それに対して、MS/MS モードの Agilent 8800 ICP-QQQ では、Q1 がターゲットの Ti+ イオン以外のすべての質量をはじくため、他のマトリックスや分析対象元素がオーバーラップしない状態で TiO+ プロダクトイオンを測定することができます。図 4に重ね表示したスペクトルは、図 3と同じサンプルマトリックスのものですが、測定には MS/MS モードの 8800 を使用しています。すべてのサンプルについて一貫した TiO+ ピークパターン (理論上の Ti 同位体アバンダンスと一致) が得られていることは、MS/MS モードの 8800 を使用すれば、共溶出する Ni、Cu、Zn が存在する場合でも、Ti を正確に測定できることを示しています。