Access Agilent 2011年11月号

先進的な GC/MS または GC/MS/MS による難しい食品中の農薬分析の課題に対応

Ruder Schill
アジレント GC プロダクトマネージャ

残留農薬の分析は、幅広い複雑なマトリックスに含まれるたくさんの化合物を分析する必要があるため、非常に難しい分析の一つです。また、検出下限を向上させることも求められるため、さらに厳しい状況になっています。GC で分析可能な農薬の場合、ほとんどの分析では質量分析装置 (MS) が使用されます。サンプル前処理の方法にかかわらず、注入されたサンプルには、システムの汚染や分析結果の低下を引き起こす可能性のあるサンプル内残留物がわずかに含まれます。この汚染によってカラム寿命が短くなり、MS イオン源の頻繁なメンテナンスが必要になることがあります。この問題に対するソリューションが、ガラスウール付きの新しいアジレントウルトライナートライナをアジレントマルチモード注入口(MMI)に使用した GC/MS または GC/MS/MS システムです。このソリューションを使用することで、数百ものサンプルを分析し、優れた結果と最小限のダウンタイムを達成することができます。

新しいウルトライナートライナがシステムをクリーンに維持

システムを劣化させる残留物がサンプルに含まれる場合は、使い捨ての注入口ライナでトラップするのが理想的です。これは大容量注入では特に重要です。ガラスウール付きのライナは広く使用されています。これは、ガラスウールがサンプルの均一な混合を促進し、サンプルの蒸発に役立つ大きい表面積を持っているからです。ガラスウールは、蒸発が起こる前に注入されたサンプルが注入口の下部に到達するのを防ぐため、不揮発性残留物の優れたトラップとなります。

ガラスウールのこのような特性がカラムの保護に役立ちます。ただし、ガラスウールには活性部位があり、また表面積が大きいため、過去には農薬分析での使用が制限されたことがあります。現在は、不活性化処理の進歩により、アジレントでは新たにリリースしたウルトライナート GC ライナには、非常に不活性なガラスウールが採用されています。不活性化されているため、これらのライナは、食品に含まれる少量の農薬の分析にも使用できるようになりました [123]。

10 ppb を添加した QuEChERS サンプルのマルチプルリアクションモニタリング (MRM) 分析の GC/MS/MS クロマトグラム。この分析では、ウール付きのアジレントウルトライナートライナ (p/n 5190-2293) とアジレントマルチモード注入口 (MMI) を使用しました

図 1. 10 ppb を添加した QuEChERS サンプルのマルチプルリアクションモニタリング (MRM) 分析の GC/MS/MS クロマトグラム。この分析では、ウール付きのアジレントウルトライナートライナ (p/n 5190-2293) とアジレントマルチモード注入口 (MMI) を使用しました(図を拡大)。

10 ppb を添加した QuEChERS サンプルのマルチプルリアクションモニタリング (MRM) 分析の GC/MS/MS クロマトグラム。この分析では、ウール付きのアジレントウルトライナートライナ (p/n 5190-2293) とアジレントマルチモード注入口 (MMI) を使用しました

図 1. 10 ppb を添加した QuEChERS サンプルの
マルチプルリアクションモニタリング (MRM) 分析の GC/MS/MS クロマトグラム。
この分析では、ウール付きのアジレントウルトライナートライナ (p/n 5190-2293) と
アジレントマルチモード注入口 (MMI) を使用しました

牛乳抽出物の 3 つの全イオンクロマトグラムで、バックフラッシュを行った場合と行わなかった場合の結果を比較。バックフラッシュにより分析時間が短縮されることがわかります。 [7]

図 2. 牛乳抽出物の 3 つの全イオンクロマトグラムで、バックフラッシュを行った場合と行わなかった場合の結果を比較。バックフラッシュにより分析時間が短縮されることがわかります。 [7](図を拡大)。

牛乳抽出物の 3 つの全イオンクロマトグラムで、バックフラッシュを行った場合と行わなかった場合の結果を比較。バックフラッシュにより分析時間が短縮されることがわかります。 [7]

図 2. 牛乳抽出物の 3 つの全イオンクロマトグラムで、
バックフラッシュを行った場合と行わなかった場合の結果を比較。
バックフラッシュにより分析時間が短縮されることがわかります。[7]

ポストカラムバックフラッシュ機能を使用した農薬アナライザの図

図 3. ポストカラムバックフラッシュ機能を使用した農薬アナライザの図(図を拡大)。

ポストカラムバックフラッシュ機能を使用した農薬アナライザの図

図 3. ポストカラムバックフラッシュ機能を使用した農薬アナライザの図

マルチモード注入口とウルトライナートライナによる注入モードの多機能化

食品に含まれる農薬の検出は、最高の選択性と感度を持つ GC 検出器でも困難です。GC カラムに導入するサンプルの量を増やすことは、検出下限を 1 ~ 2 桁下げるための方法の 1 つです。この場合、ピークの歪み、バンドの広がり、カラムおよび検出器の汚染や損傷を回避することが課題になります。このような問題は、Agilent 7890A GC システムのアジレントマルチモード注入口によって解決され、1 ~ 1000 mL のサンプルを導入できるようになりました (図 1)。

コールドスプリットレス注入を使用すると、10 mL までの容量を注入することができます。さらに、大容量注入オプション (溶媒ベントモード) を使用すれば、数百 μL の注入が可能です。この結果、導入される化合物の量が増え、結果システムの検出下限が向上します [4]。

大容量注入とコールドスプリットレスオプションを組み合わせることで最高の検出下限が実現します [5]。大容量注入のパラメータの設定には、統合された Solvent Elimination Calculator が役立ちます。

Agilent J&W ウルトライナートカラムによるピーク検出の向上

サンプルを一度注入したら、GC カラムでのピークの分離が次の課題になります。最新の Agilent J&W ウルトライナートキャピラリ GC カラムは卓越した低カラムブリードを提供します。このカラムは、ピークのテーリングや化合物の損失または劣化を最小限に抑えます。その結果、ピークを正しく特定できる大きい信号が得られ、検出下限が向上します。

バックフラッシュによりカラムと検出器をクリーンに維持

汚れたサンプルは、たくさんのサンプルを処理するラボでは問題となります。注入口ライナで固有の化合物をどれほど十分にトラップしても、その一部はカラムに入り、時間の経過とともに、カラムから質量分析装置 (MS) に移動することがあります。カラムのバックフラッシュ (図 2 を参照) によって分析時間が短縮され、カラム寿命が大幅に延び、これらの化合物が MS に入る可能性が非常に少なくなります。キャピラリ・フロー・テクノロジー(CFT)がアジレントのGCに導入されたことで、カラムのバックフラッシュが容易に行える様になりました。 [6]。

完全なソリューション

現在、アジレントにはいくつかの農薬アナライザがあり、これらのすべての拡張機能と技術に加えて、MSD 用のデコンボリューションレポート作成ソフトウェア(DRS)およびデータベース、数百種類の農薬を迅速にスクリーニングできるMS/MS 用の高い柔軟性を備えた包括的な MRM データベースなどが組み込まれています。図 3 にアナライザの例を図示します。実証済みの分析メソッドとアプリケーションに関連するチェックアウトサンプルを備えた、これらの出荷時テスト済みアナライザは、据え付け、設定、およびメソッド開発に必要な時間とリソースを大幅に削減します。

農薬を分析するのであれば、アジレント農薬アナライザ の詳細をご覧ください。これらのアナライザがラボに迅速に結果をもたらす方法については、 最寄りのアジレント営業所までお問い合わせください

References

  1. Limian Zhao and Allan D. Broske, “Evaluation of the Ultra Inert Liner Deactivation for Active Compounds Analysis by GC”, Agilent Application Note 5990-7380EN
  2. Limian Zhao, “Analysis of Pesticides in Food by GC/MS/MS Using the Ultra Inert Liners with Wool”, Agilent Application Note 5990-7706EN
  3. Ken Lyman and Doris Smith, “Ultra Inert (UI) Wool Liner Performance Using an Agilent J&W DB-35ms UI Column with and without an Analyte Protectant for Organophosphorous (OP) Pesticides”, Agilent Application Note 5990-8235EN
  4. “Agilent Multimode Inlet for Gas Chromatography”, Agilent Technical Overview 5990-3954EN
  5. Bill Wilson and Chin-Kai Meng, “Achieving Lower Detection Limits Easily with the Agilent Multimode Inlet (MMI)”, Agilent Application Note 5990-4169EN
  6. Philip L. Wylie and Chin-Kai Meng, “A Method for the Trace Analysis of 175 Pesticides Using the Agilent Triple Quadrupole GC/MS/MS”, Agilent Application Note 5990-3578EN
  7. Chin-Kai Meng, “Improving Productivity and Extending Column Life with Backflush”, Agilent Application Brief 5989-6018EN