Access Agilent 2011年5月号

カスタマーストーリー: 最先端第 3 世代シンクロトロンにおけるキャピラリフロー LC の構築

Gabriel David、Javier Perez、
SOLEIL シンクロトロン、フランス

Michael Frank
アジレントマーケティングマネージャ、分析 HPLC

図 1. SOLEIL シンクロトロン施設 (上)。シンクロトロンと各種ビームラインおよび実験ハッチの概略図 (中)。SWING ビームラインに使用された Agilent キャピラリフロー LC システム (下) (図を拡大)。

フランスの SOLEIL (ソレイユ) シンクロトロンとアジレントのグループにより、X線小角散乱分析 (SAXS) における生物学サンプルの注入と精製を自動化する独自のサンプル環境を開発しました。この環境は、SOLEIL の「SWING」ビームラインの完全リモートコントロール式ワークステーションにより実現しています。

パリ近郊のサクレー台地に、フランスの第 3 世代シンクロトロン、SOLEIL があります。SOLEIL は電子を加速させ、赤外線から X 線までの波長をカバーするきわめて明るい光を放射させるための設備です。強度、焦点、安定性、偏光性などに関する SOLEIL の光の特性を用いれば、原子レベルの事象を観察することが可能です。あらゆる種類の物質の電子的、磁性的、構造的な特性を観察するための優れた手法として利用できます。生物学、化学、材料科学、環境科学、物理学、地球科学、古代物質学などの分野で、基礎研究、応用研究、産業研究などの実験が実施されています。

シンクロトンは「光源」として機能し、複数の「ビームライン」で使用されます。各ビームラインは、特定の分析や方法論的調査専用のものです。それぞれのビームラインは、ユーザーがサンプルを準備し、データを採取および解析できる形で設置されます。SWING は現在 SOLEIL にある 20 のビームラインのうちの 1 つです。

重要な要件を満たす自動 SAXS 実験

ビームラインは 24 時間稼動し、実験は 6 か月計画でおこなわれます。測定中は、安全上の理由から、ユーザーが実験ハッチ内に立ち入ることはできません。そのため、サンプル環境や装置には、堅牢で信頼性の高いリモートコントロール機能が求められます。

その他の重要な考慮点は、ユーザーに割り当てられるビームタイムの最適化です。この最適化の課題を解決するのが、ロボットによるサンプルハンドリングです。このサンプルハンドリングは、分析直前にサンプルを精製するうえで大きな利点となり、特に研究対象の生体分子が壊れやすい場合や、凝集しやすい傾向を持つ場合は、その効果は大きくなります。SOLEIL は現在のところ、SAXS 分析前に統合型の自動サンプラおよびサンプル精製 (HPLC) を提供できる世界で唯一のシンクロトロン施設です。

独自の 「2 イン 1」 システム

アジレントのエンジニアのサポートを受けた SWING 科学チームは、2 年にわたる研究と試運転を経て、ビームラインの「ハンズオフ (無干渉)」システムを開発および最適化し、ビームラインに組み込みました。

この機器の中核を担うのが、X 線ビームに配置された自家製のフローセル、SAXS Cell (図 2) です。このセルは、アジレントのキャピラリフロー LC システムとともに機能します。これを構築するために、チームは Agilent 1260 Infinity キャピラリ HPLC システムを採用しました (図 3 にシステム全体の配置図を示しています)。

このカスタマイズされたシステムは、フロー注入モードでも精製モードにも対応可能です。フロー注入モードでは、サンプルが循環ループを通って直接 SAXS Cell に運ばれます。そこで SAXS テクニックにより分析が実施されます (図 1 下: 矢印で示しているのがビームライン; 赤いボックスで示しているのがセル、実際の検出器は左の大型シルバーメタルシリンダーに配置)。

図 2. SWING ビームラインの高真空チャンバーに設置された特別設計のフローセル;LC システムからサンプルが循環し、光ファイバーとビデオコントロールを用いたオンライン UV-Vis 検出に対応できます (図を拡大)。

図 3. フロー注入および精製を可能にする HPLC システムの配置図。フロー注入モードを赤線で示しています (図を拡大)。

開発者を悩ませる作業

システムを適切に稼動させるために、アジレント/SOLEIL チームは多くの難問を解決する必要がありました。原則となる動作としては、2 つの気泡でフローとサンプルを分離させたまま、純水のフローでサンプルを注入します。エマルションを避けながら、フローラインのなかで空気-サンプル-空気の順序を維持しなければなりません。また、分析チャンバーが真空内に配置されるため、自家製の SAXS Cell を気密性のある設計にする必要もありました。さらに、UV-Vis 吸光 (タンパク質濃度) と SAXS データを同期的に測定するために、SAXS Cell に光ファイバーを設置しました。

複雑な信頼性と使いやすさを備えたシステム

Agilent ChemStation コントロールソフトウェアでマウスをクリックするだけで、サンプル導入から精製モードへプロセスが切り替わります。精製モードでは、サンプルが直接分離カラムに導入されます。通常はサイズ排除カラム (SEC) が使用されますが、必要に応じてその他のカラムに自由に交換することができます。

ユーザーはこの機器の再現性と信頼性に感嘆しているほか、柔軟性の高さも高く評価しています。また、ビデオカメラを用いて、ビーム内にあるサンプルの外見を追跡および確認できることや、サンプルの脆弱性に応じて SAXS 測定の期間を調節できる機能にも喜んでいます。

SOLEIL の SWING ビームラインは、完全自動 SAXS 実験を可能にするだけでなく、きわめて重要な信頼性と再現性を備えた有益なシステムを世界中の科学者に提供しています。SOLEIL/アジレントチームが達成したこの成果は誇るべきものです。この研究は、EU FP6 設計研究 SAXIER、交付番号 RIDS 011934 の援助を受けました。

Agilent 1260 Infinity Cap-HPLC システムにより得られるラボの利点の詳細については、アジレントの製品ページをご覧ください。

参考文献

David, G., Perez, J.,"Combined sampler robot and high-performance liquid chromatography: a fully automated system for biological small-angle x-ray scattering experiments at the Synchrotron SOLEIL SWING beamline", Journal of Applied Crystallography, 2009, 42(5): 892-900.