Access Agilent 2010年4月号

Agilent 低熱質量 (LTM) クロマトグラフィシステムによる USP <467> 残留溶媒の分析の高速化

Roger Firor
アジレント シニアアプリケーションケミスト

医薬品中の残留溶媒の分析は、患者の安全を守るために極めて重要であり、品質保証 (QA) ラボは、この目的で USP (米国薬局方) メソッド <467> を使用します。ただし、このメソッドは、薬物開発またはスケールアップで使用する場合には、かなり時間がかかります。初期のスクリーニングを実行するためにメソッドの最適化が必要になる為です。この様なケースで、Agilent 7890A GC システムに取り付けられている Agilent LTM 加熱/冷却システムを使用すると、分析サイクルタイムを最大 6 倍短縮できます。

医薬品有効成分 (API) または最終製品の製造プロセスで、医薬品に残留溶媒が残る場合があります。安全性、結晶形態に対する影響、溶解度、生物学的利用能、安定性などの理由から残留溶媒のレベルをモニタおよび制御する必要があります。すべての原薬、合成物、および生成物においてモニタする必要があります。

この重要な分析のサイクルタイムを短縮するために、Agilent LTM システムを静的ヘッドスペースサンプリングと組み合わせた、USP <467> (改訂された General Chapter 2008) に準拠した医薬品中の残留溶媒の高速分析が実現しました。分析時間と全体のサイクルタイムを大幅に短縮するためにカラムサイズと温度プログラムを最適化したことを除いて、USP <467> のガイドラインに従いました。USP のガイドラインに準拠した分析メソッドを使用できますが、オリジナルの USP 手順に対するバリデーションと比較が必要な場合があります。

USP <467> では、クラス 1 およびクラス 2 の残留溶媒に対して次の 3 つの手順が指定されています。

 1. 手順 A : 同定と限界試験
 2. 手順 B : 確認試験
 3. 手順 C : 定量試験

手順 A では G43 相 (この分析では Agilent J&W DB-624 カラム) を使用し、手順 B では G16 相 (この分析作業では Agilent J&W HP-INNOWax カラム) を使用します。一般に、これらの液相の 1 つで分離ができない分析対象成分は、他の液相では分離が可能です。

図 1. LTM テクノロジーは、フューズドシリカキャピラリ GC カラムに直接ヒーターと温度センサーを織り込んだ構造をしています(画像を拡大するにはここをクリックします)。
図 2. このクラス 1、2A、および 2B 溶媒の分析では、120 ℃/分の高速 LTM 温度プログラム速度を使用します。これにより、トータルのサークルタイムがわずか 10.5 分に短縮されます(画像を拡大するにはここをクリックします)。

CFT スプリッタによりデュアルチャンネル同時分析が可能

図 1 に、LTM テクノロジーで使用される直接カラム加熱をするAgilent LTM システムのダイアグラムを示します。このシステムは、サンプル導入用の G1888 ヘッドスペースサンプラを用いてでデュアルカラム残留溶媒分析を実行します。Agilent キャピラリ・フロー・テクノロジー (CFT)の 2-way 流路スプリッタは、サンプルを 2 つのカラムに分割します。

LTM テクノロジーによる冷却の改善と高いカラム昇温速度

残留溶媒分析用ガスクロマトグラフィでは、オーブン冷却時間が全体のサイクルタイムに大きく影響します。LTM カラムモジュールは非常に低熱質量であり、冷却ファンがカラムアセンブリの直下にあるため、従来のカラムオーブンよりもかなり高速に冷却できます。LTM カラムモジュールは、非常に高い昇温速度にも対応できるため、サイクルタイムがさらに短くなります。実現可能な最大の温度プログラムは、カラムサイズ、相比、キャリアガス、必要な分離などの多くの要因により異なります。

従来のカラムオーブンメソッドを LTM 形式に変換する場合は、Agilent GCメソッドトランスレーション ソフトウェアを用いることで簡単に行えます。この例では、60 ℃/分~120 ℃/分の LTM を用いた温度プログラム速度で、特定の溶媒のピークに必要な分離能が満たされます。図 2 に、7 m DB-624 カラムにおける USP 限界濃度でのクラス 1、クラス 2A および 2B 溶媒の分離を示します。

分析サイクルタイムの比較によって示される LTM の優位性

表 1 に、従来の GC と LTM メソッドについて、さまざまなカラムサイズと温度プログラムを比較しています。表には、従来のカラムオーブン構成と LTM 構成において、同じサイズのカラム(7 M) の例があります。これにより全体的なサイクルタイムを比較できます。より高速な 220 V 仕様の7890A GC と比べても、LTM システムはサイクルタイムを 2 倍高速化しています。この例では両方の LTM モジュールを同じオーブン温度プログラムで測定していますが、それぞれのモジュールで別々の温度プログラムを使用してアプリケーションを最適化することもできます。


加熱 カラム
温度プログラム
冷却
サイクル
タイム
7890A 30 m x 0.53 mm x 3.0 μm 10 ℃/分で 40 ℃ (20 分) 3 分間のオーブン平衡化で 67 分
(120 V) Agilent J&W DB-624 ~240 ℃ (20 分) 6 分 50 秒 -

7890A 7 m x 0.25 mm x 1.4 μm 30 ℃/分で 35 ℃ (5 分) 3 分間のオーブン平衡化で 25 分
(120 V) Agilent J&W DB-624 ~240 ℃ (5 分) * 8 分 25 秒 15 秒

7890A 7 m x 0.25 mm x 1.4 μm 45 ℃/分で 35 ℃ (5 分) 3 分間のオーブン平衡化で 22 分
(220 V) Agilent J&W DB-624 ~240 ℃ (5 分) * 8 分 30 秒

LTM 7 m x 0.25 mm x 1.4 μm 60 ℃/分で 35 ℃ (5 分) 1 分 45 秒 15 分
(高速) Agilent J&W DB-624 ~240 ℃ (5 分) (1 モジュールシステム) 10 秒

LTM 7 m x 0.25 mm x 1.4 μm 100 ℃/分で 35 ℃ (5 分) 1 分 45 秒 11 分
(より高速) Agilent J&W DB-624 ~240 ℃ (3 分) (1 モジュールシステム) 45 秒

LTM 7 m x 0.25 mm x 1.4 μm 120 ℃/分で 35 ℃ (4 分) 1 分 45 秒 10 分
(最高速) Agilent J&W DB-624 ~240 ℃ (3 分) (1 モジュールシステム) 30 秒

* この GC と温度範囲で可能な最高速の昇温
表 1. 標準の 30 m カラムを使用した従来の 120 V 仕様GC システムでのサイクルタイムは 67 分で、LTM システムのサイクルタイムは 10.5 分 (6 倍高速) でした。

LTM と CFT によるラボの生産性の向上

標準メソッド (120 V仕様 7890A GC) から LTM ベースシステムに変換して、残留溶媒分析を行った場合、全体のサイクルタイムを最大 6 倍高速化することができます。キャピラリ・フロー・テクノロジーを利用すると、1 回のヘッドスペース注入により 2 つのカラム相で同時にサンプルを分析できます。7 m x 0.25 mm(内径) の LTM カラムサイズでは、USP <467> の要求される分離能を満たしつつ、スピード、使いやすさ、容量のバランスが保たれています。LTM テクノロジーは、USP 手順のバリエーションが適切で、高速メソッドの最適化が望ましい新薬開発には非常特に魅力的です。詳細については、Agilent アプリケーションノート ( 5/7 日本語版完成 5990-5094JAJP) をご覧ください。