ケーススタディ : 疾患に関連する脂質解析 - Markus Wenk 博士

Markus Wenk, Ph.D.
Associate Professor
National University of Singapore

脂質の役割に関する研究を支援するアジレントのソリューション

驚くべきことに、我々が脂質について知っていることはほとんどありません。研究者がこれまで広範囲にわたって研究を行ってきた、コレステロール代謝でさえも、完全に理解しているとは言えません。

大規模な研究の結果、高レベルのコレステロールは、概して心血管疾患の危険因子であると考えられています。ただし、詳細に観察しようとすると、全体像がぼやけ始めます。

「家族や個人のレベルでは、必ずしもこのような相関関係が成立するわけではありません。」と述べているのは、シンガポール国立大学で、リピドミクスに対する新たなアプローチの先頭に立っている Markus Wenk 博士です。「代謝には、我々がまだ知らない他の特性が含まれているかもしれません。この特性は、高コレステロールに関して何らかの説明になる可能性もあるため、切り離して考えることはできないでしょう。」

Wenk 博士とそのチームは国際研究コンソーシアムの一員であり、主にアジレントの液体クロマトグラフィーおよび高分解能質量分析技術を使用して、脂質に関する世界的な認識を深めるための研究を行っています。

コレステロールは最も有名な脂質ですが、この他にも数万もの脂質が存在しており、これほど数が多い理由を正確に説明できる人はいません。(脂質には、脂肪、ワックス、ステロール、脂溶性ビタミン、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドなどがあります)。

「我々は自然界における一部の例を入手しているだけなのです。この自然界においては、脂質分子と受容体の間に特定の相互作用が存在します。」と Wenk 博士は述べています。「脂質が存在する理由はいくつかありますが、これほど多数の異なる脂質が存在する理由を間違いなく説明することはできません。」

Wenk 博士が注目したのは、過去 10 年間にわたって遺伝子やタンパク質に関する新しい情報が急増してきた一方で、今までのところ、脂質に関する知識においては同等の進歩がなかったという事実です。

最初のステップは、さまざまな民族グループにおいて、健康な人々の脂肪レベルを示すデータベースを作成することです。シンガポールでは偶然にも、中国人、インド人、マレー人といった、多種多様な民族の人々が生活しています。この種のデータは (他の国々でも収集できますが)、ベースラインを確立します。

「健康な個人の体内で発生している自然の変異について理解することにより、癌、糖尿病、神経変性疾患の発病について理解するための基礎を提供してくれます。」と Wenk 博士は述べています。「次のステップは、脂質に関する我々の研究を、遺伝子、タンパク質、糖のレベルでの変動に取り組んでいる研究と関連付けて考えることです。」

このアプローチは Integrated Biology と呼ばれますが、新しいバイオマーカーを発見し、効果的な治療用タンパク質を開発するための最善の道であると、博士は確信しています。

「我々にとって、これは次のことを意味しています。つまり、遺伝子変異と我々が実施している変動に関する研究に関連する、この生化学的データをどのように理解すればよいのか。また、脂質レベルの変動を他の体内パラメータとどのようにして関連付ければよいのか、ということです。コレステロールは単なる 1 つの例です。我々は、赤血球の数、血小板の数、炎症マーカーなどを測定することができます。それは、流動する粒状体の種類を示しています。」と博士は述べています。

このレベルの詳細情報は、アジレントのような企業の生物学的分析機器に技術革新が起こることにより、作成が可能になります。

「我々は、少量の低濃度代謝物を測定するための、非常に高感度で再現性のあるメソッドを構築するという点において、アジレントと密接に作業を行ってきました。」と Wenk 博士は述べています。「アジレントは、プラットフォームのクロスサイトの再現性や統合性を確認するための支援も行ってくれました。このため、我々は韓国やオーストラリアのコンソーシアムにいる共同研究者と簡単にプロトコルを交換し、そのデータを組み込むことができたのです。」

アジレントの機器は、博士のチームが必要とする分解能と真度を提供するだけではなく、特定のワークフローに対してツールを最適化するための定評のある能力も備えています。

「この事実は、お客様が実際に強力な技術パートナーを得る際に実際に役立ちます。」と Wenk 博士は述べています。

「我々は、以前には説明できなかったいくつかの化学的性質を発見しました。ここには、まだ発見の余地が残されているのです。発見対象となるのは必ずしも新しいコレステロールではなく、その「兄弟」や「姉妹」なのです。これはまだ独自の考え方です。発見可能な領域がまだ存在するという、興味深い考え方なのです。おそらく全体像は、教科書で学習したように、完全には正確ではなく調整する必要があるかもしれません。この発見は研究と新しい知識の一部であると同時に、現在使用可能な技術を通して、実際に依然として進行中です。」

関連情報