ケーススタディ : 生物学におけるビックデータ解析 - John A. McLean 博士

John A. McLean 博士

科学部
ヴァンダービルト大学
テネシー州、ナッシュビル

大量の詳細情報の収集と解析を支援する
アジレントのソリューション


John McLean 博士は生物学におけるパラダイムシフトの一翼を担っています。

これは生物学におけるビッグデータ解析と呼ばれ、McLean 博士が率いるヴァンダービルト大学のチームは、Agilent 6560 イオンモビリティ Q-TOF LC/MS システムを使用したノンターゲット分析で 1 分間に 50,000 個の分子の詳細な情報を収集しています。

Agilent 6560 を用いた分析結果には、タンパク質、脂質、糖、ペプチドについての詳細な情報が、すべて含まれています。

McLean 博士は研究チームの手法を統合型オミクスと呼び、目的を実行するための唯一の方法だと考えています。

生物の中のさまざまな物質成分が相互に影響し合う未知のパターンをチームは解明しようとしています。例えば、テネシー州 (ヴァンダービルト大学の本拠州) の洞窟で発見されたバクテリアに内在する将来有望な新薬候補物質の要素を明らかにするパターンがそのひとつです。

「イオンモビリティと質量分析を組み合わせることで、ゲノミクス、プロテオミクスなどの個別のオミクス研究の古い枠が打ち破られ、標的を定めず、先入観にもとらわれない分子群の研究が可能になりました」と McLean 博士は語ります。

 
Agilent 6560 イオンモビリティシステムに搭載されたテクノロジーにより、大量の詳細を科学者は迅速に収集できます。

また、「予測の有無にかかわらず生物学的な疑問を調べ始めることができるようになりました。私たちが注目すべきことは分析結果が示してくれます」と McLean 博士は述べます。

ビッグデータから一つ一つを理解することは大きな課題となりますが、McLean 博士が率いるチームが優れているのはこの点です。

博士のチームは、数百万の顧客から蓄積した動向を取捨選択し、顧客が気に入りそうな本や映画を勧める、Amazon や Netflix などの企業と同じ手法を取り入れています。これらの企業ではコンピュータファームウェアを利用し、大量の顧客情報を調べて意味のある相関を見つけています。

McLean 博士は、このプロセスを子どもの頃に遊んだスライドタイルパズルに例えます。

「スライドタイルパズルと同じことをしています。6560 システムから毎分 50,000 個の分子を獲得しても、分子のタイルを移動させ絵を完成させるまでは分子を同定することはありません。これらの 50,000 個の分子の多くはノイズ、つまりバックグラウンド生物学に過ぎません。私たちが知りたいことは、薬や他の刺激物の影響を直接受ける分子から得られる相関が何であるかです。そしてその相関が何であるかを識別するために時間をかけるのです」

得られた相関がタイルとなると、ここから面白くなります。

「このビッグデータのすべての要素は、ゲームと同じです。では、パターンとは何でしょうか。データから詳細情報を取り除いてしまうと、巨大な一連の数となるだけです。そのため、数を調べ、何がそれらを生成するかを知っている人が全体を理解できます。インターネットで商取引をしているか生物学の解決に取り組んでいるかは重要ではありません。行っている作業はまったく同じことです」

McLean 博士はヴァンダービルト大学で、病気の診断、創薬、発症前でも問題の発現を示す可能性のあるバイオマーカー探索に関わる多くの研究プロジェクトを率いています。

有意義な結果をもたらしたプロジェクトの 1 つを彼のチームはバクテリアファイトクラブと名付けています。

この名は McLean の共同研究者の一人が洞窟探検家で酵素学者であるという簡単なきっかけから名付けられ、それについて、McLean 博士は次のように述べています。

「テネシー州およびケンタッキー州には 10,000 の洞窟があり、彼はそこに行き、これまでヒトでは発見されなかったバクテリアを収集しています。収集したバクテリアの遺伝子解析をすると、薬のような分子構造にエンコードできる特定の遺伝子群を見つけることができます。これまで知られていない、天然の攻撃的および防衛的な生物学的因子です。しかし、バクテリアがどのようにこの遺伝子群を合成しているのかを理解することが困難なため、これを解明するゲームをバクテリアファイトクラブと名付け、活動しています。新しく見つけたバクテリアについて個体培養を行い、良く知っているバクテリア、例えば大腸菌を育てた後に、共培養します。共培養した両方のバクテリアの菌株は、限定されたリソースを求めて戦わざるを得なくなります。すると突然、それらの遺伝子の多くに、通常ではめったに見られないスイッチが入ります。私たちはこのようにして新しい薬の分子を分離することに成功しています」

タイルをスライドすると絵が現れるのと同じように、同じインフォマティクス手法によってすべてが進行します。

「ここで計算を始めることができます。細胞培養のタイルの絵があるのであれば、固体培養からそのタイルの絵を差し引くことができます。すると、リソースを求めて遺伝子が戦う必要がある場合に生成される新しい分子のみが残ります」と McLean 博士は述べます。

「一般的に薬は異なる分子クラスの成物です。このため、脂質、糖、ペプチドを単体で扱ってはいけません。良い薬分子を作るこれらの異なる分子クラスの混合物を調べることになります。だからこそ統合型オミクスが不可欠です。他の方法では実現できません」

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参考文献

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