GC/MSD MassHunter with MSD ChemStation データ解析へ移行しながら既存のプロトコルとの互換性を維持

Anthony Gray
アジレント GC/MS ソフトウェア製品マネージャ

新しいラボ用ソフトウェアプラットフォームを導入する際の問題点の 1 つは、以前のプラットフォームで得られた既存のメソッド、データ、分析結果の移行です。数世代前のソフトウェアバージョンで既存のメソッドを作成し、ソフトウェアの新バージョンが出るごとに、そうしたメソッドを「徐々に」移行してきたユーザーにとっては、新プラットフォームへの切り替えは特に厄介です。

スムーズな移行の鍵は互換性

アジレントは、MassHunter プラットフォームの開発時にそうした問題点を認識し、Agilent MSD Productivity ChemStation と MassHunter の互換性をできるかぎり保ち、移行をスムーズなものにするために、あらゆる措置をとってきました。特に重視したのが、データ取込メソッドの分野です。(先月の記事[1] でも触れたように、MassHunter の GC/MSD バージョンには MSD ChemStation データ解析モード が含まれています)

アジレントがそうした問題点にどう対処したかを見ていく前に、まずは「下位互換性」と「上位互換性」という用語を定義させてください。どちらもよく使われる言葉で、ソフトウェアが旧バージョンまたは新バージョンのシステムや他のソフトウェアとどのように情報をやりとりするかを説明するものですが、この 2 つはしばしば誤用されます。

上位互換性とは、新しいバージョンの Agilent GC/MS ソフトウェアで、古いバージョンで作成したメソッドやデータ、分析結果を開いたり使用したりできることを意味します。[2] たとえば、MSD Productivity ChemStation で作成したデータ取込メソッドは、GC/MSD MassHunter Acquisition で使用できるため、GC/MSD MassHunter Acquisition はデータ取込メソッドという点で「上位互換性」があるということになります。

それに対して、下位互換性とは、古いバージョンの Agilent GC/MS ソフトウェアで、新しいバージョンで作成したメソッドやデータ、分析結果を開いたり使用したりできることを意味します。[3] たとえば、GC/MSD MassHunter Acquisition で採取した GC/MSD データは、MSD Productivity ChemStation で開いたり閲覧したりすることができるため、MSD Productivity ChemStation は GC/MSD MassHunter Acquisition のデータと「下位互換性」があるということになります。

メソッド、レポート、データの完全性を維持

Agilent GC/MSD 用 MassHunter のリリースにあたっては、MSD Productivity ChemStation から MassHunter へプラットフォームを移行する場合でも、最新ソフトウェアの導入によりラボ環境に負荷がかかることがないように、あらゆる措置がとられました。ソフトウェアのおもな要素に関する下位互換性および上位互換性について、以下で説明しています。

  • GC/MSD MassHunter Acquisition* は、MSD Productivity ChemStation GC および MS Acquisition メソッドとの上位互換性があります。MSD Productivity ChemStation E.02.02 SP1 で作成された GC/MSD メソッドは、新しい GC/MSD MassHunter Acquisition ソフトウェアで直接使用できます。
     
  • MSD ChemStation データ解析** は、MSD Productivity ChemStation データ解析メソッドおよびレポートとの上位互換性があります。MSD Productivity ChemStation E.02.02 SP1 で作成したデータ解析メソッドおよび分析結果は、MSD ChemStation Data Analysis F.01.00 で開き、使用することができます。
     
  • MassHunter Quantitative Analysis (定量) は、部分的に MSD Productivity ChemStation との上位互換性があります。MSD Productivity ChemStation 化合物リストおよびキャリブレーションレベルは、移行ツール***を用いて、MassHunter Quant へ変換することができます。この変換により、新たな MassHunter メソッドが作成されます。オリジナルの MSD Productivity ChemStation メソッドはそのまま残されます。
     
  • MSD Productivity ChemStation データは、MassHunter Data Analysis (定量および定性) 用に変換する必要があります。すべてのバージョンの MSD Productivity ChemStation で作成されたデータは、移行ツール***を用いて、MassHunter フォーマットに変換することができます。MassHunter Quant B.06.00 では、ファイルがバッチに追加されると、互換性のあるすべてのファイルが自動的に MassHunter フォーマットに変換されます。
  • 分析結果は他の分析プラットフォームとの互換性はありません。MSD Productivity ChemStation の分析結果は、MassHunter Quant(定量) または Qual(定性) との互換性はありません。MassHunter Quant および Qual の分析結果は、MSD Productivity ChemStation E.02.02 SP1 および MSD ChemStation Data Analysis F.01.00 との互換性はありません。
     

表 1 では、ラボ内でのデータ、分析結果、メソッドの継続的な完全性を確保するために、メソッドやデータなどの一般的なシステム移行要素について、MSD Productivity ChemStation から MassHunter へ移行する際の概要を示しています。

 

MSD Productivity
ChemStation

MSD ChemStation
データ解析

MassHunter Quantitative
Analysis(定量)

MassHunter Qualitative
Analysis(定性)

MSD Productivity ChemStation E.02.02 SP1

データ取込メソッド

--

n/a

n/a

データ解析 メソッド

--

T

x

データ

--

T

T

分析結果

--

x

×

GC/ MSD MassHunter Acquisition B.07.00+

データ取込メソッド

×

n/a

n/a

データ解析メソッド

CS

--

--

--

データ

分析結果

CS

CS

Quant のみ

Qual のみ

T – 変換が必要
CS – ChemStation 間のみ
* バージョン B.07.00 以降
** バージョン F.01.00 以降
*** 変換ツールは、GC/MS および LC/MS 用のすべての MassHunter に付属します。
 
表 1.システム移行の互換性
 

Bibliography

  1. A. Gray, "GC/MSD MassHunter with MSD ChemStation Data Analysis: Best of both worlds," Access Agilent, May 2013.
  2. Wikipedia, the Free Encyclopedia, "Backward compatability," 20 Feb 2013. [Online]. Available: http://en.wikipedia.org/wiki/Backward_compatibility.
  3. Wikipedia, the Free Encyclopedia, "Forward compatibility," 26 Feb 2013. [Online]. Available: http://en.wikipedia.org/wiki/Forward_compatibility.