DNA メチル化解析技術

エピジェネティックな DNA のメチル化は、DNA 配列そのものを変更せずに遺伝子発現を調節する遺伝性の修飾です。この現象は幅広い生物学的プロセスや遺伝病の調節メカニズムとして機能し、不規則なメチル化パターンはある種の癌と相関があります。遺伝子特異的な解析の制約や、クロマトグラフィーベースのメソッドに伴う操作時間にとらわれない マイクロアレイによる解析は、グローバルな in vivo での発現調節の研究を促進します。アジレントの CpG およびプロモーターマイクロアレイを使えば、全ゲノム規模で DNA のメチル化の状態を調べることができます。また、カスタムアレイでは、特定の領域にターゲットを絞り、より詳しい分析を行うことが可能です。SurePrint インクジェット技術、独自のプローブデザインアルゴリズム、有効性が実証されているプロトコルを備えた Agilent DNA メチル化解析ソリューションは、分析者にとってもっとも重要な DNA メチル化を特定するのに必要な柔軟性、感度、特異性を提供します。

おもなトピックス

補足情報

Agilent DNA メチル化解析システムにより実現するアプリケーション

DNA メチル化解析技術を使えば、効果的なツールがないために今までは調べられなかった重要な分野に、首尾よくフォーカスすることができます。DNA メチル化解析技術は、以下のことを可能にします:

  • メチル化プロフィールの比較測定による遺伝子発現調節および調節ネットワークの発見と確認
  • DNA メチル化に関連する分子の発見と特徴分析
  • DNA メチル化と転写制御の関係の理解による、化合物やターゲット遺伝子の作用機構および治療活性の解明

参考文献

マイクロアレイベースのメチル化 CpG アイランド回収アッセイを用いた全ゲノム解析により検討された肺癌におけるホメオボックス遺伝子のメチル化 ※アジレント外のWEBサイトへジャンプします。
Homeobox gene methylation in lung cancer studied by genome-wide analysis with a microarray-based methylated CpG Island recovery assay. ※アジレント外のWEBサイトへジャンプします。

Rausch T. ほか、(2007) PNAS 104(13):5527-32

CpG アイランドの de novo メチル化はヒトの癌でよく見られる現象ですが、癌に関連する DNA メチル化のメカニズムは良く知られていません。本研究では、タイリングアレイとメチル化 CpG アイランド回収アッセイを組み合わせ、全ゲノム規模および高分解能で CpG アイランドのメチル化を調べました。癌細胞株と初期の肺癌において、染色体 2、7、12、17 の 4 つの HOX 遺伝子クラスターすべてがDNA メチル化の選択的なターゲットになっていることがわかりました。SIX、LHX、PAX、DLX、Engrailed といった他のホメオボックス遺伝子に関連する CpG アイランドも、高度にメチル化されていました。全体としては、肺癌細胞株 A549 における CpG アイランドに関連する全ホメオボックス遺伝子のうち、半分以上 (192 個中 104 個) がメチル化されていました。パラロガス HOX 遺伝子の分析では、癌に関連するメチル化が全てのパラロガス遺伝子で同時に生じるわけではないことがわかりました。HOXA クラスターは、さらに詳しく調べられました。ENCODE 由来データとの比較では、CpG リッチな配列におけるメチル化の欠如が、HOXA 領域における活性クロマチンマークであるヒストン H3 リジン-4 のメチル化と相関関係にあることが示されています。肺原発性扁平上皮細胞癌における HOXA 遺伝子のメチル化分析では、ステージ 1 の癌において、HOXA7 および HOXA9 に関連する CpG アイランドがしばしばメチル化のターゲットとなっていることが特定されました。ホメオボックス遺伝子は、癌の初期診断における DNA メチル化マーカーとして利用できる可能性があります。ホメオボックス遺伝子で幅広いメチル化事象が確認されたことは、ヒトの癌におけるメチル化遺伝子の大部分がポリコーム群のターゲットであるという仮説を裏付けています。

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Agilent DNA メチル化解析システムのおもな特長と利点

包括的な全ゲノム解析と焦点を絞った解析の両方に対応
Agilent DNA メチル化解析マイクロアレイ (CpG アイランドマイクロアレイ) は、ヒトでは最大 24 万 4000 個のオリゴヌクレオチドプローブ、マウスでは最大 10 万 5000 個のプローブを搭載しています。プローブは、既知の CpG アイランド全体に 100bp 間隔で配置されています。CpG マイクロアレイのほかに、全ゲノムタイリング製品やターゲットを絞ったプロモーターマイクロアレイなども用意しています。

優れたマイクロアレイの性能と機能
最適な 60-mer オリゴヌクレオチドプローブを用いた独自のマイクロアレイ技術と、使いやすさを考慮した 2 色ラベリングシステムにより、1 色システムよりも優れた感度、精度、再現性が実現します。これらの独自の特徴により、微弱かつ数の少ない結合イベントを高い感度で測定できるほか、同一マイクロアレイ上で複数のサンプルを直接比較することも可能になっています。

柔軟性と汎用性の高いユーザー定義タイプのマイクロアレイフォーマット
柔軟性を備えたアジレントのマイクロアレイでは、タイリング密度、ゲノム領域、生物種といったコンテンツをユーザー自身でデザインすることが可能です (1 マイクロアレイあたり最大 244K プローブのデザインが可能)。

迅速な納期
アジレントの SurePrint 技術では、柔軟性の高い工業規模のインクジェット印刷プロセスを用いて、1" x 3" スライド上にオリゴヌクレオチドプローブが in situ 合成されます。マスクレスプロセスにより、絶えず移り変わるゲノム環境における急速なコンテンツ変化に対応し、マイクロアレイデザインを迅速に繰り返すことが可能になっています。そのため研究者は、関連性の高い豊富なコンテンツを搭載した高品質のアレイを利用することができます。

プローブ配列およびアノテーション情報へのアクセス
アジレントでは、公共データベース検索や生物学的情報の抽出を円滑化するために、プローブ配列およびアノテーションファイルへの一括アクセスを提供します。

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DNA メチル化解析ワークフローの説明

DNA メチル化解析ワークフローでは、各種のアッセイ前処理メソッドに続き、マイクロアレイへのサンプルのハイブリダイゼーションを実施したのちに、分析を行います。Agilent CpG アイランドマイクロアレイは、メチル化 DNA を濃縮する親和性ベースメソッドと制限酵素ベースメソッドの両方に対応しています。

図 1. 親和性ベースのメチル化 DNA 分離。

メチル DNA 免疫沈降 (mDIP) メソッドでは、5-メチルシトシンに対してモノクローナル抗体を用いて、ゲノムからメチル化 DNA を分離します。mDIP は、メチル化 DNA 濃縮手法の一例です。これにより得られたメチル化 DNA フラクションを精製し、シアニン 5 (Cy5) で標識し、同様にシアニン 3 (Cy3) で標識した「インプット」ゲノム DNA を用いて単一のマイクロアレイに競合的にハイブリダイゼーションします。マイクロアレイを洗浄およびスキャンし、Agilent Feature Extraction ソフトウェアで数値化したのち Agilent Genomic Workbench で解析します。各プローブ/ CpG アイランドの相対 DNA メチル化レベルは、シアニン 5/シアニン 3 比率の変化に反映されます。

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Agilent DNA メチル化解析マイクロアレイ

Agilent DNA メチル化解析製品プラットフォーム