Access Agilent 2016年10月号

多次元 GC/MS 分析による
船用燃料油中の化学種の測定

George Gonzalez, Agilent Global Segment Marketing Manager, Energy and Chemicals

船用燃料油は複雑な重質油留分であり、通常は船のベッセルの操作に使用されます (図 1)。燃料が混合されて化学種によって汚染されやすくなり、これがエンジンに付着して深刻な損傷をもたらす場合があります。汚染の原因は無数にあるため、化学種とその原因を明確に同定することが難しい場合があります。

図 1. 船用燃料油を動力源とするコンテナ船。

業界からのフィードバックと経験によって、汚染の原因となりうるいくつかの化学種が同定され、船用燃料油とバンカー燃料油のスクリーニングに役立っています。バンカー燃料油は船用燃料油の主要成分です。船用燃料油のスクリーニングにはさまざまなテストメソッドおよび手法が使用され、繰り返し可能な試験結果がないため、特定の汚染源の同定が困難でした。このような標準メソッドに対する業界のニーズに対応するため、米国試験材料協会 (ASTM) は、標準的なテストメソッドの開発に関する作業項目 #36704 を発行しました。この記事では、Bureau Veritas (テキサスのパサデナにある検査ラボ) が開発した、Agilent ガスクロマトグラフ (GC)質量分析計 (MS) での分析メソッド開発のプロセスについて説明しています。

参加したラボの協力により、前処理メソッド、データ、および GC/MS 分析の標準化に成功

分析メソッドの開発では、標準的な特定の化合物リストの指定、簡単なサンプル前処理、信頼性の高い定量データ、および正確な同定が必要でした。標準メソッドについて合意するには、このテストを実施するラボで使用されている化合物を含めることが重要でした。すべてのラボが使用した分析機器は、ガスクロマトグラフ質量分析計です。

船用燃料油の混入物をスクリーニングするすべての著名なラボが調査を実施しました。最終的に、調査したすべてのラボでテストされた化合物を含む共通の表 (ASTM D7845-16) がまとめられました (表 1)。この化合物表を使用して、船用燃料油に含まれる化学種の同定用に標準的なスクリーニングメソッドを開発しました。また、このテストメソッドは GC/MS を採用しているので、他の化合物の検出にも使用できます。

  定量下限 mg/kg
n-ブチルアルコール 10
シクロヘキサノール 10
n-ブチルエーテル 10
n-ブチルアクリレート 10
スチレン 10
α-ピネン 10
フェノール 20
α-メチルスチレン 10
β-ピネン 10
4-メチルスチレン 10
トランス-B-メチルスチレン 10
3-メチルスチレン 10
2-メチルスチレン 10
ジシクロペンタジエン 10
リモネン 10
インデン 20
1-フェニルエタノール 20
パラ、α-ジメチルスチレン 20
2、5ジメチルスチレン 20
2、4ジメチルスチレン 20
2-フェニルエタノール (フェニルエタノール) 20
2-エチルフェノール 50
2、4ジメチルフェノール 20
4-エチルフェノール (3-エチルフェノールと共溶出) 20
2-フェノキシ-1-プロパノール 50
2-フェノキシエタノール 50
4-イソプロピルフェノール 50
1-フェノキシ-2-プロパノール 20
スチレングリコール 50

表 1. 調査結果に基づく ASTM D7845-16 の混入化合物の概要。

Agilent GC/MS ソリューションおよびカラムによる高い分解能および優れた検出下限

調査で同定された高純度の化学試薬を使い、個別の標準混合化合物を調製してメソッド開発分析を実行しました。バンカー燃料油で調製されたこれらの標準混合物を使用して、Agilent 7890B GC の条件を定義しました。定義した内容は注入口、プレ分離用の Agilent J&W DB-1 GC カラム (1 M x 0.15 µm x 1.2 µm DB-1)、注入口ベント経由のバックフラッシュ用に構成されたAgilent パージ付きユニオンを用いたプレ分離手法、およびカラム分解能の要件です。分析カラムはAgilent J&W HP-1 GC カラム (100 M x 0.25 µm x 0.5 µm HP1) を使用しました。このカラムには高い分解能という特性があり、同じアナライザで別のメソッドを開発できるためです。

開発フェーズで使用した質量分析計の検出下限は優れていますが、新しいAgilent 5977B シリーズ GC/MSD システムの検出下限はさらに優れており、運用効率が上がりました。GC オーブンの条件は、化合物を最適に分離して燃料油の質量スペクトル干渉を解消するために、繰り返し最適化しました。MS の使用条件は、質量スペクトルデータを収集し、各化合物と十分な検出ができる特有の分子イオンを選択して定義しました。

図 2. 構成 A による TIC クロマトグラム。

図 2. 構成 A による TIC クロマトグラム。

耐久性と再現性を調査して、標準テストメソッドに含めることができる内容を確定できました。アジレントの機器に基づく分析メソッドは、テストメソッド ASTM D7845-16 (図 2) で標準化されており、船用燃料油の化学汚染のスクリーニングと信頼性の高いデータの取得に使用できるようになりました。ASTM の標準メソッドプロセスには、使用可能な最新技術と製品の仕様変更を反映した定期的なレビューとリビジョンが含まれます。アジレントは現在、テストメソッド ASTM D7845-16 の範囲を拡大して、船用燃料の仕様に関する ISO TC 28 SC4 WG 6 で指定されている化合物も含めています。

アジレントの幅広い GC、MS、および GC/MS ソリューション

アジレントは、時間に制約があるラボマネージャ向けに、幅広いガスクロマトグラフ質量分析計、GC/MS 機器、カラム、およびソフトウェアソリューションを提供しています。これらのソリューションによって、ラボの真度と効率を上げ、コストを削減して分析時間を短縮できます。アジレントのGCMSGC/MS ソリューションについて詳しくは、それぞれのサイトを参照してください。またアジレントの堅牢で高品質な製品、システム、消耗品、ソフトウェアについては、アジレントの担当者にもお問い合わせください。