Access Agilent 2014年9月号

食品中農薬分析のサンプル注入量を 75 % 削減する Agilent 7010 トリプル四重極 GC/MS

Melissa Churley
アジレントシニアアプリケーションサイエンティスト

Agilent 7010 トリプル四重極 GC/MS の超高感度 EI イオン源を用いることによって、食品中残留農薬分析が飛躍的に向上します。新しいハードウェアデザインにより、これまでよりも高いレベルのレスポンスが得られるようになり、多くの分析アプローチの可能性が拓かれます。この超高感度性能により、サンプルを希釈したり、注入するサンプル量を減らすことにより、これまでのメソッドのスケールダウンが可能になります。注入されるマトリックス量が少ないため、稼働時間が長くなり、性能が維持されます。これにより、コストの削減が実現します。

このコンセプトを実証するために、アジレントの推奨する食品中農薬分析メソッドを用いて標準的な注入量の 25 %を注入し、0.01 mg/kg または 10 ng/g という EU MRL 規定閾値以下の分析困難な農薬を測定できるかどうかを検証しました。

0.5 µL を注入した場合のプラム中の 126種類 の農薬の %RSD 分布。

図 1.0.5 µL を注入した場合のプラム中の 126種類 の農薬の %RSD 分布。
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0.5 µL を注入した場合のプラム中の 126種類 の農薬の %RSD 分布。

図 1. 0.5 µL を注入した場合のプラム中の 126種類 の農薬の %RSD 分布。

きわめて分析困難な農薬の測定

この研究では、最大限のサンプル流路の不活性度を得るために、以下のカラムおよび部品を使用しました。Agilent J&W ウルトライナート HP-5ms GC カラム、寸法 5 m x 0.25 mm x 0.25 µm および 15 m x 0.25 mm x 0.25 µm (G3903-61005、19091S-431UI)、カラムバックフラッシュのために、Purged Ultimate Union で Agilent ウルトライナート 2mm ディンプルライナ (5190-2297) および Agilent UltiMetal Plus フレキシブルメタルフェラル (G3188-27501) を使用。

AOAC QuEChERS 抽出および分散キット (5982-5755, 5982-5058) を用いて、均質化したプラムマトリックスを抽出し、1 g/mL に調整しました。抽出したブランクマトリックスを 0.02~100 ng/g で添加し、126 種類の農薬および農薬異性体グループの混合物のキャリブレーション標準を作成しました (図 1)。10 セットの標準を 5 回連続して注入し、3 番目 (中間) のデータセットでキャリブレーションを行いました。重み付け 1/x の線形適合を用いて、それ以外のすべてのポイントを QC に指定しました。図 2 の直線回帰プロットでは、青のダイヤモンド型で示しています。各濃度についてパーセント RSD 値を算出し、%RSD = 20 を許容上限として LOQ を推定しました。

サンプルマトリックス注入量の減少により、機器稼働時間の向上とコストの削減が実現

測定したすべての農薬で、相関係数 (R^2) は 0.992 以上でした。図 1 に、算出濃度 5 および 10 ng/g をもとに、各 %RSD 値 (n = 5) となった農薬の数を示しています。注入量 0.5 µL で分析した 126 の農薬のうち、10 ng/g で %RSD が 20 を上回ったのは 2 種類 (キャプタンとフォルペット) のみでした。

分析した 126 の農薬すべてがプラムの MRL 以下

表 1 には、分析が難しいおもな農薬の R^2 値と LOQ 推定値を記載しています。126 の分析対象農薬のうち、キャプタンおよびフォルペットを除くすべてで、10 ng/g という規定 EU MRL をクリアする LOQ が得られました。ただし、キャプタンおよびフォルペットの LOQ 推定値はいずれも 20 ng/g で、これはキャプタンで 7000 ng/g、フォルペットで 20 ng/g とされているプラムにおける MRL 値と同じか、それを下回っています。キャプタンおよびフォルペットに関しては、重水素化 ISTD の使用を検証すれば、それよりも低い LOQ を安定して得られる可能性があります。この 2 つの化合物の回帰分析では、重み付けは用いていません。

農薬

CF R^2
(直線、1/x)

推定 LOQ
(ng/g)

農薬

CF R^2
(直線、1/x)

推定 LOQ
(ng/g)

ジクロベニル

0.9970

0.5

フォルペット

0.9987

20

エトリジアゾール

0.9987

0.1

ジノブトン

0.9961

5

THPI

0.9962

1

トリフルミゾール

0.9986

0.5

ジクロラン

0.9987

0.5

クロルデン-trans

0.9998

0.5

ダイアジノン

0.9975

0.05

エンドスルファン I

0.9980

5

ジスルホン

0.9987

0.5

テトラクロルビンホス、
E-異性体

0.9994

0.5

クロロタロニル

0.9992

0.1

エンドリン

0.9998

0.5

フベリダゾール

0.9922

1

エンドスルファン II

0.9993

1

ヘプタクロル

0.9996

0.05

DDT-p,p'

0.9998

0.5

メタラキシル

0.9991

0.1

レスメトリン I および II

0.9949

5

アルドリン

0.9980

0.1

プロパルギット

0.9969

5

メトラクロール

0.9988

0.05

フェノトリン I および II

0.9995

5

フェンチオン

0.9988

0.05

シペルメトリン

0.9995

1

キャプタン

0.9962

20

ジフェノコナゾール I

0.9934

5

アレトリン

0.9994

5

デルタメトリン

0.9992

0.5

表 1. 直線回帰分析結果および %RSD ≤ 20 (n = 5) にもとづく LOQ 推定値。

プラムに含まれる分析困難な農薬の 5 ng/g 添加標準のクロマトグラムと検量線。

図 2. プラムに含まれる分析困難な農薬の 5 ng/g 添加標準のクロマトグラムと検量線。(図を拡大)

プラムに含まれる分析困難な農薬の 5 ng/g 添加標準のクロマトグラムと検量線。

図 2. プラムに含まれる分析困難な農薬の 5 ng/g 添加標準のクロマトグラムと検量線。

マトリックス 0.5 µL では、50 回以上注入したあとでも、GC ライナに堆積物は見られません。0.5 µL 注入後 (上のライナ) および 2 µL 注入後 (下のライナ) のライナ。

図 3. マトリックス 0.5 µL では、50 回以上注入したあとでも、GC ライナに堆積物は見られません。0.5 µL 注入後 (上のライナ) および 2 µL 注入後 (下のライナ) のライナ。(図を拡大)

マトリックス 0.5 µL では、50 回以上注入したあとでも、GC ライナに堆積物は見られません。0.5 µL 注入後 (上のライナ) および 2 µL 注入後 (下のライナ) のライナ。

図 3. マトリックス 0.5 µL では、50 回以上注入したあとでも、GC ライナに堆積物は見られません。
0.5 µL 注入後 (上のライナ) および 2 µL 注入後 (下のライナ) のライナ。

図 2は、GC/MS 分析がきわめて難しい農薬のクロマトグラムと検量線の例を示しています。 注入量 0.5 µL における農薬量は 2.5 pg です。それに対して、注入量 2 µL では 10 pg です。サンプル注入量が減少しても、規定 MRL の半分にあたる 5 ng/g において、分析がきわめて難しい農薬で最適なクロマトグラフィー性能が維持されています。

各農薬について、5 ng/g におけるパーセント RSD (n = 5) を示しています。

図 3 は、一連のシーケンスで異なる量のサンプルを注入した 2 つの同じ GC 注入口ライナを示しています。より多くのサンプルを注入した写真の下のライナでは、ライナの汚染の増加が明らかです。ライナが汚れることで短期間に交換しなければなりません。サンプル注入量が少ない条件では、ライナの汚染がほとんど見られません。そのため性能が持続します。

食品サンプルの注入量を 75 % 削減する Agilent 7010 トリプル四重極 GC/MS

新しい Agilent 7010 トリプル四重極 GC/MS で既存の分析メソッドを使用し、これまで必要とされていたサンプル量の 25 %を注入したところ、分析対象となったプラム中残留農薬の 98 % 以上で 10ng/g という規定閾値を下回る定量下限が得られました。例外となった 2 つの農薬についても、規定の EU MRL 以下での分析が可能でした。このように、注入するサンプルマトリックス量が減少すれば、現行のメソッドに変更を加えなくても、機器の稼働時間を延ばし、分析コストを削減できるものと期待されます。

アジレントの推奨する農薬分析アプローチの詳細は、アジレントの包括的な GC/MS/MS 農薬分析参照ガイドに記載されています。このガイドは、弊社にお問い合わせいただけば入手できます。関連するアプリケーションノート (5990-1054EN) もご覧いただけます。

アジレントは、幅広い GC/MS 農薬ソリューションを提供しています。たとえば、食品試料中の農薬の有無を実用的なレベルで迅速判定することができ Agilent MRM Screening キットの詳細については、アジレントのウェブサイトをご覧ください。