血液の前処理を簡略化する乾燥マトリクススポッティングカード

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血液の前処理を簡略化する
乾燥マトリクススポッティングカード

William Hudson
アジレント研究者、アドバンスト

 

乾燥血液スポット (DBS:Dried Blood Spot) は、血液サンプルを採取、運搬、保管するための簡単な手法として、50 年にわたって用いられています。このテクニックでは、血液の滴を吸水性のペーパーの上に落とし、その後、空気乾燥させます。このペーパーを乾燥剤とともに室温で保管すれば、6 か月以上保管することができます。

DBS では、サンプル量が最小限ですみます。また、指に針を刺すだけでサンプルを採取できるので、DBS は、幼児から血液サンプルを採取する場合におもに利用されます。そのほか、治療薬剤のモニタリングにも広く用いられています。また、サンプルの運搬や保管が容易なので、たとえば熱帯病の治療の効果を調べる際に、血液採取を伴う試験を遠く離れた場所でおこなうことも可能です。

最近では、動物や人間での研究に関してコストパフォーマンスがよく、サンプルが少量で済むことから、製薬業界での新規化合物の臨床前および臨床試験において、DBS への関心が高まっています。

乾燥血液スポットから分析対象化合物を抽出するには、穴あけパンチを用いて、スポットからコア部分を手動または自動で採取します。その後、メタノールなどの溶媒を用いて、分析対象化合物をペーパーのコアから脱着し、LC/MS/MS で分析します。一般的にはセルロースペーパーが用いられますが、アジレントから、表面積が小さく、きわめてパンチが容易な新しい非セルロース材質のカードが登場しました。

ここでは4 種類の一般的な薬剤を用いた乾燥血液スポット分析を紹介します。これらの薬剤は、重水素化スタンダードが利用できることから、研究対象として選択しました。

化合物 濃度
(ng/mL)
回収率
(%)
RSD
(%)
ゾルピデム 5 102 6
500 110 6
クロザピン 5 98 5
500 110 4
パロキセチン 5 102 6
500 110 6
ノルトリプチリン 5 89 7
500 92 7
表 1. Analyte recoveries of four drugs from dried blood spots (n=6).

乾燥血液スポットの効果的な分析

ヒト血液 1 mL に各化合物標準 10 µL を添加し、0.1、0.2、0.5、1.0、2.0、5.0、20、50、200、500 ng/mL の検量線を作成しました。これらの標準各 15 µL を DBS ペーパーに落とし、2 時間以上乾燥させました。その後、乾燥したスポットから 3 mm を円盤状に切りとり、96 ウェルプレートに入れました。各ウェルに 0.1 % ギ酸を含む 80 % メタノール (重水素化内部標準混合物 0.066 ng/mL を含む) 300 µL を加え、ボルテックスしました。その後サンプルを乾燥させ、移動相 100 µL に再溶解しました。その後キャリブレーション標準の直線回帰をもとに、精度と回収率を計算しました。その際、中濃度 (5 ng/mL) と高濃度 (500 ng/mL) を選択しました。表 1 に、回収率を示しています。

Agilent Pursuit XRsUltra 2.8 カラムを用いて、抽出物を LC により分離し、質量分析により検出しました。図 1 に、クロマトグラムを示しています。

 

図 1. LC/MS/MS により乾燥血液スポットから抽出した薬剤 (図を拡大)。

乾燥血液スポットによる簡単なサンプル前処理

Agilent 1290 infinity LC と 6460 MS と Agilent Pursuit XRsUltra 2.8 カラムを用いた LC/MS/MS により、乾燥血液スポットに含まれる 4 種類の薬剤を問題なく脱着および分析できました。一次回帰により、優れた直線性が示されました。また、相関係数は 0.995 以上で、相対回収率は実際値の 10 % 以内でした。RSD は 10 % 未満でした。このことからもわかるように、乾燥血液スポッティングは、血液サンプルを効率的に保管できるだけでなく、不要なタンパク質を粉砕し、LC/MS/MS 分析における簡単で効果的なサンプル前処理手法にもなります。

アジレントの LC/MS/MS プロセスの詳細については、こちらで紹介しています。この分析の詳細については、アプリケーションノート 5990-8033EN をご覧ください。

 

 

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