ケーススタディ :環境ストレスに耐性をもつ農作物創出研究 - Ute Roessner 教授

Ute Roessner 教授
Australian Research Council Future Fellow
Metabolomics Australia 分析学主任、
Australian Centre for Plant Functional Genomics 支部リーダー、
University of Melbourne

アジレントが干ばつに強い農作物の探求を支援

小麦は、世界で最も重要な農作物の 1 つです。科学者にとって、この植物の干ばつに対する耐性を高めることは、やりがいとともに大きな困難を伴う研究です。

University of Melbourne の Ute Roessner 准教授は、このことを直に実感しています。

Roessner 准教授と Australian Centre for Plant Functional Genomics の同僚研究員は、アジレントの機器を使用し、オーストラリアで最も重要な 2 つの農作物である小麦および大麦に環境ストレスへの耐性を持たせる道を探るべく研究を行ってきました。

オーストラリア地域は、塩分を含んだ土壌と干ばつという 2 つのストレスを抱えています。

小麦の研究を特に困難にしているのが、そのゲノムのサイズです。実は、パンの材料として使われている小麦の細胞核には 3 つの全ゲノムがあり、そのそれぞれがヒトゲノムの約 2 倍もの大きさを持っています。

Roessner 准教授にとってこれは驚きの事実でしたが、それは変えようがありません。しかも、課題は決してこれだけではないのです。

特定の植物のストレスへの耐性を他の植物より高くするためのメカニズムを理解したければ、Roessner 准教授の専門であるメタボロミクスなどの要因も考慮しなければなりません (アジレントの機器が導入された Roessner 准教授のラボは、Metabolomics Australia の一施設です。Metabolomics Australia は大学および研究機関の連合事業体であり、オーストラリア国内のライフサイエンス研究者にハイスループットのメタボロミクスサービスを提供しています)。

Roessner 准教授は、業界で高く評価されているアジレントのシステムにもとづく GC/MS および LC/MS メソッドを確立し、その有効性を実証しました。現在、メタボロミクスをはじめとする「オミクス」の研究をいかに組み合わせれば、食物の持続可能性および品質の向上に役立てられるかを探求しています。

Roessner 准教授は「私たちの主な関心は根にありますが、深刻な干ばつ状態での現地調査では、根を調べることができません。根を土壌から取り出したところで、メカニズム解明の鍵をにぎる手掛かりを失うことなく、メタボロミクスのための前処理を行うことは不可能だからです。そこで、葉を調べるしかないのです」と述べています。

このような課題もありますが、明らかな利点もあります。

植物の良いところは、交配し、200 もの子の個体群を作り出せることです。これは、人間ではあり得ないことです。そして、ゲノムのどの部分がどの親から由来したものかを正確に突き止めることができます。収穫高、開花期、草高、代謝物の存在などの形質の測定も可能です。

「各代謝物プロフィールを、2 つの親間で異なるゲノム部分に関連付けることで、どの親がプロフィールに影響をおよぼしたかがわかります」と、Roessner 准教授は述べています。

この種の量的形質遺伝子座 (QTL) の解析は、目的とする形質を持つ農作物を開発するために選抜育種が長い間使用されてきた植物研究においては一般的ですが、QTL の解析とメタボロミクスを組み合わせたのは、Roessner 准教授のラボが初めてです。

Roessner 准教授の現在進行中の研究をきわめて実りあるものにしているのが、同教授が指摘するとおり、アジレントの高精度の機器 (シングル四重極およびトリプル四重極 GC/MS システム、四重極飛行時間型およびトリプル四重極 LC/MS システム、データ処理機器、および データ解析ソフトウェア) です。これらの機器は、同教授とその研究チームが迅速に正確な結果を得るためになくてはならないものになっています。

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