ケーススタディ :合成生物学研究における新たな挑戦 - Matthew Chang 博士

Matthew Chang 博士
准教授、生物化学部門、Yong Loo Lin 医学部
臨床・技術革新に向けた NUS 合成生物学 (SynCTI)
シンガポール国立大学

合成生物学分野で基礎研究に取り組む研究者をアジレントが支援

Matthew Chang 博士は生物学を地球上のすべての人に有益なテクノロジーに変える取り組みを進めています。

これを実現する最適な方法は、電気エンジニアが市販の部品からコンピューター全体を組み立てる場合と同じ種類の標準を定めることだと、Matthew Chang 博士などの生物学者は考えています。

しかし、コンピューターの組み立てとは異なり、生物学エンジニアは細胞ベースの工場を組み立てて価値のある化学物質と薬を製造したいと望んでいます。さらに、がん、糖尿病などの疾患を治療するための治療用細胞を設計したいと望んでいます。

Chang 博士は「今、私にとって最も興味があることは、合成生物学をより系統的かつ安価で効率的にできる実現性についてです。」と話します。

シンガポール国立大学 (NUS) で Chang 博士は生物化学を教え、臨床・技術革新に向けた NUS 合成生物学 (SynCTI) を実現する NUS 合成生物学と呼ばれる学際的研究プログラムを率いています。プログラムには 15 か国から 60 人の研究者 (化学者、生物学者、臨床医、医師) が参加しています。博士のチームの現在のプロジェクトは、ヒトの健康、環境改善、生物化学的生産におけるさまざまな課題に対応するための微生物のリプログラミングに関するものです。

Chang 博士のラボではさまざまなアジレントの機器を採用しています。例えば、ガスクロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィー最先端の質量分析計を組み合わせて使用し、新しい微生物系が生成するように設計されたものを正確に提供していることを確認しています。

アジレントの科学者達と長い間共同開発を続けている博士は「アジレントはこの分野で業界をリードする専門知識があると思っている。」と述べます。

テストがワークフローの最終段階であり、Chang 博士は、合成生物学の研究に携わる世界中の科学者のコミュニティ全体で徹底して実現される標準化を目指しています。

Chang 博士は、「このコミュニティが直面している問題の 1 つは選択肢が多すぎることです。10 か所のラボを見ると、おそらく 10 か所すべてのラボで異なる標準が使用されています。」と話し、

この分野の研究者たちが必ずしも同じ手順を使用していないこと、さらには同じ用語で作業内容を説明していないことに気づいており、次のように続けます。

「このため、異なるラボおよび学術分野から集まった人達が情報を共有するは困難です。」

例えば、生物工学の最初のステップで、DNA のフラグメントを別のものに導入するために、ある生物から切断することを考えてみます。研究者達はこの最初のステップを実行するために、非常に多くの分解酵素を選択することができます。Chang 博士および他の生物学者が望んでいることは選択肢をほんの少数に絞り込むことです。

「私達は、分解酵素の標準セットを選択するようにすべての生物学者に促しています。同じ標準を使用することによって、たくさんの情報を共有して生物工学の研究を次のレベルに持っていくことができます。また、この方法で、さまざまな研究プロジェクトの関連コスト全体を低減することができます。」

電気工学は Chang 博士に、将来の合成生物学のあり方について適切な類似性を提供しています。

「物理学、すなわち電気工学の基本的原理の理解は標準化され一般化されているため、日常的に使用するさまざまな電子デバイスを構築するために効果的に使用することができます。」と Chang 博士は述べます。

携帯電話に、トランジスタ、半導体、回路基板、マイクロフォン、スピーカ、アンプ、メモリチップなどが使用されていることを考えてみます。

「この取り組みにおいて、さまざまな異なる分野の専門家について話していますが、すべてのパーツを組み立てている人は各パーツの基本となる物理学を十分に理解する必要はありません。同様に、生物学はきわめて複雑ですが、生物学的エンジニアリングに関連するいくつかの複雑さを抽象化できるでしょうか?ある程度の複雑さをマスクする何層かの手順を見つけることができるでしょうか?」と Chang 博士は自問します。

合成生物学の標準を採用することによって、研究者達は、電子機器で使用されている市販のパーツのような、十分に特性解析された生物学的パーツのライブラリを構築できるようにすべきだと Chang 博士は述べます。

「この方法で、効果的に、将来ライブラリにあるコンポーネントを組み合わせて整合させるだけで新しくて異なる生物系を構築することができます。」と彼は話します。

Chang 博士の国際チームおよび同様のチームは、疾患状態などの差し迫った課題に対応するための新しい生物系の開発を加速させています。

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