ケーススタディ : メタボロミクスの技術による新発見 - Adam Rosebrock 博士

Adam Rosebrock, Ph.D.

Assistant Professor
Donnelly Centre for Cellular and Biomolecular Research
Department of Molecular Genetics
University of Toronto

アジレントの技術による、マルチオミクス研究の
新しい生物学的パラダイムの解明

「文字どおり、教科書を書き直しているところです。」と Adam Rosebrock 氏は述べています。「ここでは、それも楽しみのうちです。」

「ここ」とは University of Toronto の Donnelly Centre for Cellular and Biomolecular Research and the Department of Molecular Genetics のことです。Rosebrock 博士のチームはここで、メタボロミクス技術を使って新しい生化学的反応を同定し、細胞が成長、分裂する際に代謝がどのように制御されるかを研究しています。

Rosebrock 博士は次のように述べています。「代謝について、細胞内で発見される物質がすべて解明されているわけではありません。我々の研究で最も興味深いのは、新しい代謝物と新しい反応を発見することです。」

Rosebrock 氏の研究は、新しい代謝反応を発見し、それを触媒するタンパク質を同定することで、知識の拡大に役立っています。

「mRNA やコード化されたタンパク質を読み取れるゲノムとは違い、メタボロームを予測することはできません。私のグループの研究目標は、細胞で作られる化合物と、これらの反応を引き起こす酵素を直接同定することです。」

Rosebrock 氏のチームは、独自に開発した新しいメソッドおよびツールとすべての Agilent LC/MS ソリューションを組み合わせて使用しています。これが、代謝のより詳しい研究に役立っています。

「我々の研究では、機器の信頼性と実験ごとの再現性が特に重要です。数か月から数年に渡る大規模プロジェクトでは、数万のデータファイルを生成します。堅牢なクロマトグラフィーによる分離と、質量分析の再現性によって、これらの膨大な回数の実験を比較し、さまざまな機器からのデータを統合できます。」と Rosebrock 氏は述べています。

「我々はあらゆる種類の Agilent LC/MS 機器を使用しています。例えば、6550 や 6540 などの高分解能 Q-TOF、6490 や 6460 などの非常に堅牢なトリプル四重極、および 6100 シリーズのシングル四重極などがあります。これらの機器にはすべて、超高圧の 1290 Infinity LC が搭載されています。アジレントのプラットフォームは非常に高感度であるため、複数の直交型機器とクロマトグラフィーで、貴重で限られたサンプルを分析できます。」

アジレントのソフトウェアを使用すると、ラボの機器をまとめて制御し、使いやすい分析ツールを使用できます。このため、学生やスタッフがまったく異なる種類の質量分析計からのデータを解析できます。

ただし、Rosebrock 氏はこの技術の単なるユーザーではありません。Rosebrock 氏のグループとアジレントは積極的に連携して、幅広い成分を分離して明確に測定するための、新しいクロマトグラフィーとメソッドを開発しています。

「メタボロミクスのおもな課題の一つは、異性体化合物が細胞内で基本的に異なる役割を果たす場合があるということです。我々は、まったく新しい代謝のパスウェイを発見しつつあります。また、かつてないパラダイムを解明できつつあります。」と Rosebrock 氏は述べています。

「生化学的状態を直接調べることで、細胞の振る舞いについてまったく新しい知見を得ることができます。それは、遺伝子発現やタンパク質レベルの測定とは根本的に異なるものです。」

Rosebrock 氏の主要な包括的見解とは、メタボロミクスにおける関係性を明らかにすることです。

「私のラボでは、細胞がゲノムとどのように連携して、空間および時間的に秩序をもって代謝反応を引き起こすかということについて、重点的に研究しています。活発に成長している細胞の生化学的状態は、不活発な静止状態を維持している細胞とは根本的に異なります。活発な細胞分裂時にのみ発生する反応の力を想像してみてください。その反応を止めたり、その進行を選択的に抑制したりすることができれば、活発に成長している細胞、つまり癌細胞や炎症細胞のみをターゲットにすることができます。」と Rosebrock 氏は述べています。

結局、癌細胞組織の遺伝子発現パターンは、その成長場所が培養プレートでもげっ歯類モデルでも非常に似ています。ただし、代謝は基本的に異なります。

「メタボロミクスには、遺伝子発現解析のバックグラウンドからたどり着きました。トランスクリプトレベルの測定において、いつも我々がついていたちょっとしたうそ (当時は良いうそだったのですが) は、遺伝子発現を調べれば細胞の振る舞いを予測できるというものです。私のグループの研究結果によって、今までは特定できなかった、細胞の生化学的状態の形成と維持のメカニズムが判明しました。すなわち、発現解析では見落としていた転写後、局在、アロステリックのメカニズムです。」と Rosebrock 氏は述べています。

「今では代謝状態を直接測定できるようになったため、生化学的表現型を直接調べられるようになりました。メタボロミクスは、細胞の実際の振る舞いに関する非常に優れた分析方法であると考えています。」

関連情報

Parts L, Liu YC, Tekkedil MM, Steinmetz LM, Caudy AA, Fraser AG, Boone C, Andrews BJ, Rosebrock AP. Heritability and genetic basis of protein level variation in an outbred population.
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Watson E, MacNeil LT, Ritter AD, Yilmaz LS, Rosebrock AP, Caudy AA, Walhout AJ. Interspecies systems biology uncovers metabolites affecting C. elegans gene expression and life history traits.
Cell. 2014 Feb 13;156(4):759-70.

He B, Caudy A, Parsons L, Rosebrock A, Pane A, Raj S, Wieschaus E. Mapping the pericentric heterochromatin by comparative genomic hybridization analysis and chromosomedeletions in Drosophila melanogaster.
Genome Res. 2012 Dec;22(12):2507-19.