コバラミンとも呼ばれるビタミン B12 は水溶性の微量栄養素で、メチオニンシンターゼ (MS) およびメチルマロニル CoA ムターゼ (MCM) に対して、コエンザイムとして機能します [1]。インドでは、このビタミンの欠乏が広がっており、すべての年齢層に対して影響が及んでいます [2]。そこで、John’s Research Institute の科学者は、Agilent トリプル四重極 LC/MS システムの技術を利用して、ビタミン B12 の吸光を測定しました。
体内でビタミン B12 が欠乏すると、血液と神経の合併症やメチオニンサイクルの機能不全を引き起こす場合があり、最終的に血漿ホモシステインが高レベルになってしまいます (心血管疾患の 1 つのリスク要因) [3、4]。もう 1 つの懸念は、ビタミン B12 が欠乏することによる、妊娠初期のエピジェネティック制御への潜在的影響が存在すること、およびその後の成人慢性疾患に関係するリスクです [5]。そこで 2 つの研究が必要になります。1 つ目は、ビタミン B12 吸光を測定するための高感度メソッドの開発に関連する研究、2 つ目はビタミン B12 欠乏の高感度バイオマーカーに関連する研究です。
ビタミン B12 吸光の測定手法は多数存在しますが、St. John’s が採用したのは 13C 安定同位体標識法です。この標識されたビタミンは、供給後の血漿内の代謝物の吸光の指標として使用することができることです。
この研究において、St. John’s の研究者は、Agilent GC/MS システムを使用して、ビタミン B12 のレベル低下を示す指標となる、血漿メチルマロン酸 (MMA) およびホモシステイン (Hcy) の濃度を測定しました (図 1)。Hcy のレベルは、葉酸のレベルが低下するとともに増加する傾向があるため、ビタミン B12 の検出が困難になり、その他のバイオマーカーの同定が必要になります [6]。この問題を解決する 1 つの戦略として、プロピオニルカルニチン (C3) の蓄積量をモニターする方法があります。これは、ビタミン B12 欠乏時に発生する、メチルマロン酸尿とプロピオンアカデミアのマーカーになります [1]。ただし、ここで課題になるのは、複雑な生体サンプルの中で、これらのバイオマーカーを測定することです。
St. John’s では微生物を用いて、安定 13C で標識されたビタミン B12 を合成し、Agilent トリプル四重極 LC/MS システムで分析を行いました。血漿内のビタミンとその代謝物の定量分析で、げっ歯類モデル内でこのトレーサーを使用しました。
St. John’s はアジレントと長期間にわたって協力し、アジレントのアプリケーションサポートとシステムを活用して、最低限のサンプル前処理により、これらのトレース代謝物に関する研究を行っています。ここでは、Agilent 1290 Infinity LC システムと、Agilent Jet Stream イオンソースが搭載された Agilent 6460 トリプル四重極 LC/MS システムを組み合わせて使用し、合成後に同位体標識されたビタミン B12 の化学的完全性と同位体分布について分析しました。トリプル四重極 LC/MS システムによる実験から得られた、標識されたビタミン B12 と標識されていないビタミン B12 のプロダクトイオンのスペクトルを図 2 に示します。St. John’s はメソッドの開発に成功し、ビタミン B12 吸光検出用の正確で信頼性の高い代謝特性ベースの手法を実際に確立しています。
John’s Medical Hospital の一部である、St. John’s Research Lab では、妊娠時のビタミン B12 欠乏の問題に注目してきました。研究者が、200 人を超える妊婦について、3 か月ごとに (ただし、最も重要なのは最初の 3 か月) 血漿中のビタミン B12 のレベルを測定した結果、妊婦の約 80 パーセントにおいて、レベルが低いことが認められました (< 150 pmol/L)。ここで重要になるのは、プロピオニルカルニチン (C3) のような別のバイオマーカーと、そのアセチルカルニチンとの比 (C3/C2) およびパルミトイルカルニチンとの比 (C3/C16) について評価することです。これらの比は、妊娠期間の最初の 3 か月において、母体のビタミン B12 のレベルと負の相関を示しています。[1]
現在、これらの代謝物を測定することによって、ビタミン B12 欠乏の理解を明らかにして、母親に是正措置を促すことができるようになりました。妊娠の初期段階では、欠乏を予測して補給を行う必要性を理解するために確立されたこのメタボロームの手法が非常に重要になります。
St. John’s Research Lab では、メタボロミクス手法を補完するために、Agilent 6495 トリプル四重極 LC/MS システムを使用して、詳細なバイオマーカー特性解析を行っています。目標は、ビタミン B12 欠乏のパターンについて詳細に理解するために、これらのバイオマーカーを同定して定量する、さらに高感度で精度の高いメソッドを開発することです。
お客様のラボにおいて、アトグラム〜ゼプトモルレベルの検出下限を用いた、高精度で高感度にバイオマーカー検出を実施する必要がある場合は、iFunnel 技術を搭載した Agilent 6495 トリプル四重極 LC/MS システムをご検討ください。Agilent 6495 トリプル四重極 LC/MS システムに関する情報はこのビデオをご覧ください。また、製品の詳細については、アジレントにお問い合わせください。
本製品は一般的な実験用途での使用を想定しており、医薬品医療機器等法に基づく登録を行っておりません。その他の目的にはご利用になれません。