Access Agilent 2017年1月号

ICP-MS および ICP-OES 手法による抽出/浸出元素の包括的な分析と定量

Paige Solomon, アジレントマーケティングスペシャリスト
Jenny Nelson, アジレントアプリケーションサイエンティスト
Andreas Tei, アジレントグローバル医薬品マーケティングマネージャ

医薬品包装業界では、幅広い医薬品中に不純物として存在する抽出物および浸出物 (E&L) の分析が不可欠となっています。容器や包装構成材料に由来する潜在的な有害物質に関連した医薬品のリコールも発生しています。E&L には、以下のような多岐にわたる化合物が含まれます。

  • 潜在的な内分泌かく乱物質としての可塑剤
  • ニトロサミンや芳香族炭化水素などの遺伝毒性化合物
  • 毒性元素

図 1. E&L 分析ワークフローにより、容器密閉システムから溶出する可能性のある幅広い既知および未知の有機/無機化合物を検出します。

図 1. E&L 分析ワークフローにより、容器密閉システムから溶出する可能性の
ある幅広い既知および未知の有機/無機化合物を検出します。

図 2. Agilent ICP-MS および ICP-OES システムは、再現性のある正確な結果を提供します。

図 2. Agilent ICP-MS および ICP-OES システムは、再現性のある正確な結果を提供します。

図 3. この E&L の調査に用いたワークフローでは、さまざまな溶媒中での加熱や振とう、長期保管により、容器にストレスを加えています。

図 3. この E&L の調査に用いたワークフローでは、さまざまな溶媒中での加熱や振とう、長期保管により、容器にストレスを加えています。

E&L を正確に検出し、定量するためには、LC/MSGC/MSICP-MS など、特異性と感度に優れた分析メソッドが必要です (図 1)。この記事では、元素分析のための ICP-MS/ICP-OES ワークフローについて取り上げます。

元素不純物としての E&L の検出には信頼性の高い ICP-MS および ICP-OES が必要

現在、USP (米国薬局方) において、医薬品および原材料に含まれる元素不純物の測定に関する新たな総則の策定が進められています。USP<232> では成分の上限値を、また USP<233> ではサンプル前処理オプションを規定しており、分析には多元素を検出可能な ICP-MS や ICP-OES などの分析機器を使用することを推奨しています (図 2)。USP<233> が定める分析機器の適格性評価は性能試験にもとづき、真度、再現性、および分析対象物の確実な同定が可能であることを実証することが義務付けられています。

実験計画で保管状態をシミュレート

E&L の分析では、医薬品製造後の輸送、市場での保管、および家庭での保管時に生じる実際的なストレスを予測することが重要です。例えば、加熱、物理的な振とう、および長期保管は強度のストレス要因となり、容器材料の分解や医薬品への抽出物の放出を誘発する可能性があります。

先日実施した点眼薬の包装材料に関する調査では、多様な pH および極性の抽出溶媒でプラスチックボトルを処理することにより、これらの懸念をシミュレートしました。また、処理条件として高温、超音波、長期保管を組み合わせた試験も行いました。サンプルで検出された汚染物質の汚染源が包装材であることを確かめるために、別途、容器を完全にマイクロウェーブで分解して分析しました。最後に、サンプルを 50 日間保管して再度測定し、毒性プロファイルの変化を確認しました。この調査に用いたサンプル前処理を図 3 のワークフロー図にまとめます。

分析困難なサンプルマトリックスでも迅速に結果を提供

この試験には、ICP-OES または ICP-MS システムを使用できます。我々の調査では、E&L の元素分析にその両方の機器を使用しました。

ダイクロイックスペクトルコンバイナ (DSC) 技術を搭載した Agilent 5100 シンクロナスバーティカルデュアルビュー (SVDV) ICP-OES は、アキシャルビューとラディアルビューの光を同時に測定し、全波長範囲を 1 回で読み取ることが可能です。また、垂直配置トーチとソリッドステート RF システム (27 MHz) により安定性に優れたプラズマが実現されるため、E&L 実験の高有機サンプルを確実に分析することができます。SVDV モードは、微量元素および主成分元素の両方が分析対象となる E&L の調査に有効です。

Agilent 7800 および 7900 ICP-MS は、卓越したマトリックス耐性を備え、総溶解固形分 25 % のサンプルのルーチン測定にも対応できます。この機能は、塩を含む溶液など、医薬品マトリックスの分析に特に役立ちます。また、10 桁のダイナミックレンジにより、微量濃度および % レベルの濃度の元素を同時に測定することが可能です。検出下限の低さと検量線の直線範囲の広さが求められる分析には、ICP-MS が最適です。特に、経口医薬品より大幅に低い検出下限が必要となる非経口および吸入医薬品を分析する場合は、ICP-MS が有力な候補となります。

高度なデータマイニングおよび統計解析ツール

Agilent MassHunter ソフトウェアは、直感的なインタフェースを備え、検量線から希釈係数、品質管理まで、データの処理や確認を容易に行えます。どちらの四重極 ICP-MS システムを使用する場合も、MassHunter ソフトウェアに USP プリセットメソッドがプログラムされているため、USP にもとづく分析の設定を短時間で行えます。

Agilent Mass Profiler Professional (MPP) は、複数のデータセットのインポート、マイニング、計算、関連付け、および視覚的解釈が可能なケモメトリックスツールです。主成分分析 (PCA)、倍率変化、箱ひげ図、ベン図など、多様な統計解析を実行することができ、各サンプルパラメータを軸としたデータ解析も容易に行えます。

図 4. 抽出のみのサンプルと抽出後に保管したサンプルでは、両サンプルに共通の汚染物質と各サンプルに固有の汚染物質が検出されました。

図 4. 抽出のみのサンプルと抽出後に保管したサンプルでは、両サンプルに共通の汚染物質と各サンプルに固有の汚染物質が検出されました。

図 5. 両方の加熱サンプル (140 °C および 55 °C) で検出された汚染物質は 1 種類のみでした。これは、青色の円と緑色の円が重なった領域で示されています。

図 5. 両方の加熱サンプル (140 °C および 55 °C) で検出された汚染物質は 1 種類のみでした。これは、青色の円と緑色の円が重なった領域で示されています。

点眼薬の E&L の調査では、溶媒、温度、超音波、処理期間、保管など、さまざまなストレス要因について評価しました。MPP を用いることで、元素プロファイルに対する熱処理、保管処理、および溶媒処理の個々の影響を比較するベン図 (図 4 および図 5) をすばやく生成できました。専用のカリキュレータを搭載した Agilent MPP がなければ、この種のデータ解析には、不可能ではないにせよ多大な手間がかかることになります。

E&L の正確な検出と定量

医薬品中の抽出/浸出元素不純物の分析はきわめて重要です。この記事では、E&L を検出するためのワークフローとシステム構成について考察しました。医薬品中の元素不純物の分析に関する詳細については、アジレントの入門書 5991-0436EN をご覧ください。

進化する E&L 分析に関するさらに幅広い情報については、このトピックに関するアジレントのリソースページをご覧ください。また、ご不明な点は、アジレントの担当者にお問い合わせください。