Access Agilent 2016年10月号

Agilent ICP-QQQ による核アプリケーションの
独自ソリューション

Yasuyuki Shikamori and Glenn Woods
Agilent Applications Engineers
Naoki Sugiyama
Agilent ICP-MS Product Manager

ICP-MS は 1980 年代半ばに導入されて以降、その高感度、シンプルな質量スペクトル、および従来の液体サンプル導入との互換性によって、原子力産業で広く採用されてきました。最近では Agilent トリプル四重極 ICP-MS (ICP-QQQ) によって核アプリケーションの範囲が拡大し、ヨウ素-129ウラン-236、および ネプツニウム-237 などの放射性同位体の超微量測定や環境汚染の超微量元素の測定が含まれるようになりました。

分析者が核アプリケーションに ICP-QQQ を使用する理由

Agilent ICP-QQQ は、流出廃液の分析や職業被ばくのモニタリングなどの既存の核アプリケーションで、優れた性能を発揮します。特に高いマトリックス耐性によって、リアクタの冷却水やウラン燃料に含まれる微量元素の分析などの困難なアプリケーションも実行できます。また ICP-QQQ のタンデム MS 構成によって、リアクションセルメソッドによるスペクトル干渉の解決という新しいアプリケーションも可能になります。ICP-QQQ には非常に低いバックグラウンドノイズ、高感度、優れたアバンダンス感度という特長があり、以前は困難であった微量元素の測定や、直接的な同重体オーバーラップの分離が可能です。

微量な 236U 同位体比分析への課題

ICP-QQQ は、236U/238U の同位体比の測定に使用されていました。これは、濃縮ウラン燃料、使用済み燃料、および核廃棄物の偶発的放出の調査に使用できます。ここでの課題は、 236U+ に対する水素化物イオン 235UH+による干渉と、m/z 236 での 235U+238U+ のピークテーリングの寄与を解決することです。水素化物のオーバーラップとピークテーリングは、濃縮されたサンプルではより困難です。235U がより高い割合で含まれるためです。

化学反応の制御と高質量プロダクトイオンへのアクセスが解決方法への道

Agilent 8900 ICP-QQQ のアドバンス・アプリケーション構成は、高感度と拡張された質量範囲によって、ウランを酸化物 (UO+) と二酸化物 (UO2+) の反応プロダクトイオンとして測定できます。ウランはその二酸化物イオンである UO2+ によって測定されます。O2 セルガスを使えば、U+ から UO2+ に効率良く (ほぼ 100 %) 変換できるためです。

この方法によって、ウラン水素化物 (UO2H+/UO2+) からの寄与を、オンマス測定 (UH+/U+) と比べて 3 桁も減らすことができました。O2 セルガスを使った MS/MS モードでは、脱溶媒システムを使わなくても、水素化物の比率が 10-8 の範囲内でした。235U の天然アバンダンスがわずか 0.72 % であることを考えると、この結果は、このメソッドによって 236U に対する 235UH 干渉を十分に減らし、236U/238U を 10-10 の範囲内で測定できることを示しています。

ICP-QQQ メソッドによって、236U/238U 同位対比を迅速に微量分析し、核物質が環境に偶発的に放出された後の、全世界的な放射性降下物に関する貴重な情報を得られる可能性があります。8900 ICP-QQQ は機器のバックグラウンドノイズレベルが非常に低く、高感度であるため、0.34 fg/g というウランの DL を達成しました。

ウランが存在する場合のネプツニウム 237 の分析

プツニウム (Np) は原子力発電の副産物として生成される長寿命の放射性核種です。Np が含まれるサンプルには通常、はるかに高濃度の U が含まれます。環境サンプルと核物質 (燃料や廃棄物) に含まれる超微量の 237Np を ICP-MS で測定することは困難です。これは、238U の大きいピークからのピークテーリングによるオーバーラップが原因です。

図 1. シングル四重極 (SQ) モード (上) と MS/MS モード (下) の ICP-QQQ で測定した、10 ppm U マトリックスサンプル溶液中の 100 ppt Np のスペクトル。MS/MS モードでは、強い 238U ピークの低質量側でのピークテールを除去します。

図 1. シングル四重極 (SQ) モード (上) と MS/MS モード (下) の ICP-QQQ で測定した、
10 ppm U マトリックスサンプル溶液中の 100 ppt Np のスペクトル。
MS/MS モードでは、強い 238U ピークの低質量側でのピークテールを除去します。

Agilent 8900 の MS/MS モードの優れたアバンダンス感度が
解決します

ICP-QQQ にはダブルマスフィルタが付いているため、従来の四重極 ICP-MS と比べてアバンダンス感度 (ピーク分離) が非常に優れています。このため Agilent 8900 ICP-QQQ では、U が数桁高い濃度で存在していても、238 オーバーラップから 237Np を分離できます。これについては図 1 を参照してください。シングル四重極 (SQ) モード (上) と MS/MS モード (下) で測定した 10 ppm の U マトリックス中の 100 ppt の Np のスペクトルを示しています。ICP-QQQ スペクトルは MS/MS モードでは高いピーク分離を示しており、シングル四重極モードで質量 237 の Np に見られる 238U ピークによる寄与がなくなっています。

Agilent ICP-QQQ による幅広いアプリケーションへの対応

Agilent 8900 ICP-QQQ によって、核アプリケーションで問題となるオーバーラップと干渉に関する問題を解消できます。ICP-QQQ では、高感度、低バックグラウンド、優れたアバンダンス感度、制御された効率的なリアクションセルメソッド、および UO2+などの高質量プロダクトイオンの測定を独自に組み合わせています。

MS/MS による干渉の除去については、こちらの方法を参照してください。より詳しい情報については、アジレントのアプリケーションノート 5991-6553JAJP5991-6905EN、および 5991-0321JAJPを参照してください。

Agilent ICP-MS ジャーナル

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