誰もが安全な環境を望んでいます。良質な水を確保するためには、飲料水、廃水、表流水、および地下水に含まれる鉱物や汚染物質を正確にモニタリングすることが不可欠です。無機元素による汚染は、蓄積や、工業、農業、および家庭廃液の放出などが原因です。元素分析にパーキンエルマー社製機器をご使用のラボでは、アジレントの分光分析消耗品を使用して高品質の結果を得ることができます。
一般に、水の元素分析には、ICP-OES や ICP-MS など高度な機器テクニックが用いられていますが、フレーム原子吸光分光分析法 (FAAS) は、シンプルで運用コストが安く、Ca、Cu、Fe、Mg、K、Na、Zn など主な分析対象元素を比較的高速に分析できるという点で、望ましい分析法です。また、FAAS 法には、最小限のサンプル前処理により、環境水サンプルで通常予測される濃度の分析対象元素を検出できるという利点もあります。
最近実施した調査で、パーキンエルマー社製 AAnalyst 800 FAAS を用いて複数の都市用水およびボトル入り飲料水サンプル中の Ca、Cu、Fe、Mg、K、Na、および Zn を分析しました。パーキンエルマー社製 FAAS 機器では、アジレントの消耗品のみを使用しました。
すべてのサンプルは、1 % 硝酸 (HNO3) で酸性化して前処理しました。最終的な溶液には、Ca および Mg を分析するための放出剤として、また Na および K を分析するためのイオン化抑制剤として、0.1 % の塩化ランタン (LaCl3) が含まれていました。機器パラメータと、キャリブレーションに使用した標準液の濃度については、アジレントのアプリケーションノート 5991-7046EN をご覧ください。
水サンプルの分析結果を検証するために、2 種類の標準物質を使用しました。キャリブレーションの真度を確認するためにアジレントの ICP、AA、または GFAA 用初期キャリブレーション確認 (ICV) 用標準溶液を用い、水サンプルの測定結果を検証するために高純度の飲料水中微量金属認証標準物質 (CRM-TMDW) を用いました。これらアジレントの ICV 標準溶液の 100 倍希釈溶液を分析した結果、きわめて高い回収率が得られました (表 1 および表 2)。これにより、このメソッドの優れた真度と適合性が確認されました。
分析対象元素 | 測定結果 (mg/L) | 100 倍希釈後の分析対象元素濃度 (mg/L) | 回収率 (%) |
---|---|---|---|
Ca | 4.85 | 5.00 | 97 |
Cu | 0.25 | 0.25 | 100 |
Fe | 1.05 | 1.00 | 105 |
Mg | 4.86 | 5.00 | 97 |
K | 4.86 | 5.00 | 97 |
Na | 5.35 | 5.00 | 107 |
Zn | 0.21 | 0.20 | 105 |
表 1. アジレントの ICV 標準溶液で測定された各元素の優れた回収率
分析対象元素 | 測定結果 (mg/L) | 認証濃度 (mg/L) | 回収率 (%) |
---|---|---|---|
Ca | 36.6 | 35.0 | 105 |
Cu | 0.019 | 0.020 | 95 |
Fe | 0.102 | 0.100 | 102 |
Mg | 8.43 | 9.00 | 94 |
K | 2.33 | 2.50 | 93 |
Na | 5.90 | 6.00 | 98 |
Zn | 0.071 | 0.070 | 101 |
表 2 高純度の飲料水中微量金属認証標準物質 (CRM-TMDW) で測定された各元素の良好な回収率
同じキャリブレーションを使用して、飲料水、都市用水処理施設の再利用水、およびボトル入り飲料水の各サンプルを測定しました。その結果を表 3 に示します。
分析対象元素 | 都市 (飲料) 水 1 (mg/L) | 都市 (再利用) 水 2 (mg/L) | 都市 (飲料) 水 3 (mg/L) | ボトル入りミネラルウォーター (mg/L) |
---|---|---|---|---|
Ca | 3.85 | 13.92 | 4.88 | 1.17 |
Cu | 0.12 | 0.03 | 0.13 | <DL |
Fe | 0.05 | < 検出下限 (DL) | 0.03 | <DL |
Mg | 1.86 | 7.87 | 1.14 | 1.82 |
K | 0.59 | 20.56 | 0.61 | 0.53 |
Na | 4.10 | 範囲外 | 4.17 | 7.76 |
Zn | 0.04 | 2.47 | 0.14 | <DL |
表 3. 3 種類の都市用水サンプルと飲料水サンプルの測定結果
水 1 および 3 は、別々の地域で採取した飲料水ですが、水源は同じ貯水池です。元素濃度の違いは、配管の状態、貯水池からの距離、およびサンプリングまでの配管中での滞留時間によるものと考えられます。水 2 はクラス A の再利用水で、飲用には不適ですが、地域の環境保護機関 [1] および保健局のガイドラインに適合しています。
分析対象 元素 |
検出下限 (mg/L) |
---|---|
Cu | 0.003 |
Fe | 0.007 |
Zn | 0.004 |
表 4.高感度分析: パーキンエルマー社製 AAnalyst 800 FAAS とアジレントの消耗品により、低い検出下限が実現されました。
ボトル入り飲料水には、Cu、Fe、および Zn が含まれていませんでした。このことから、ボトル詰め前の精製時にこれらの元素が除去されたことが確認されました。Mg および K の濃度は、飲料水 1 および 3 で測定された濃度とほぼ同じでした。
Cu、Fe、および Zn の検出下限を計算しました (表 4)。その他の元素については、より高濃度で存在し、低感度条件で測定したため、検出下限を求めませんでした。
このメソッドは、都市上水道およびボトル入り飲料水サンプル中の栄養素および鉱物元素をすばやく簡単に測定する場合に最適です。Ca、K、Mg、および Na (すべて高濃度で存在) を低感度条件で測定することにより、同じサンプルに含まれる高濃度の元素と低濃度の元素をどちらも分析することができました。
アジレントの ICV 標準溶液および高純度標準物質 CRM-TMDW の測定において、低濃度および高濃度の元素についてきわめて高い回収率が得られたことから、優れた性能とダイナミックレンジが実証されました。詳細については、アジレントのアプリケーションノート 5991-7046EN をダウンロードしてください。パーキンエルマー社製 AA、ICP-OES、および ICP-MS 機器用のアジレント消耗品については、こちらでご覧いただけます。