Access Agilent 2016年7月号

高分解能 LC/MS/MS による、工程内の不純物の構造解析

Syed Salman Lateef、Agilent CrossLab グループ

消費者の安全が最も重要であることを念頭に置いた上での薬品中の不純物の特性解析は、医薬品開発工程におけるきわめて重要な規制項目となってきています。不純物の同定とその構造解析は、高分解能精密質量 LC/MS とデータ処理および構造特性解析用の包括的なソフトウェアツールとを組み合わせることにより、飛躍的に容易になります。工程内不純物は多くの場合、プロセスの原材料および中間生成物と構造的に関連しています。このため、未知化合物と既知化合物標準についての精密質量 MS、MS/MS、疑似 MS3 の直接比較は、構造解析に有用です。この記事では、薬品中の不純物の適切な解析のための 4 ステップ LC/MS ワークフローを使用した研究を検討します。

強力な Agilent MSC ソフトウェアが提供する適切なデータ解析

この研究では、Agilent パーソナル化合物データベースライブラリ (PCDL) ソフトウェアを使用して精密質量 MS データベースと MS/MS および擬似 MS3 スペクトルライブラリを作成するために、市販のアムロジピン不純物標準を使用しました。その後、工程内未知不純物についての精密質量を既知化合物ライブラリに対して探索して共通の部分構造を同定しました。次に不純物の元素組成とこれと関連付けられる構造が提案されました。この分析においてもインテリジェントなソフトウェアツール、Agilent Molecular Structure Correlator (MSC) が使用されました。MSC ソフトウェアは MS/MS フラグメントの精密質量および分子式と、提案された構造からの可能性のあるフラグメントイオンとをコンピュータで相関させます。フラグメントイオンの構造の決定とフラグメント経路の解析には、MSC ソフトウェアを使用しました。

図 1. 9 つの化合物と測定された精密質量を示す、工程内サンプルの TIC (バックグラウンド減算後) 。

図 1. 9 つの化合物と測定された精密質量を示す、工程内サンプルの TIC (バックグラウンド減算後) 。

表 1. 未知不純物のサンプルから検出された 9 つの化合物と計算された質量誤差。

表 1. 未知不純物のサンプルから検出された 9 つの化合物と計算された質量誤差。

図 2. 既知不純物について提案された構造とフラグメント部位。

図 2. 既知不純物について提案された構造とフラグメント部位。

図 3. m/z 630.2218 の未知イオンの提案された構造とフラグメント経路。m/z 459.1308 の疑似 MS3 は m/z 294.089 と m/z 192.0654 でのフラグメントイオンの中間生成物であることが明らかになりました。

図 3. m/z 630.2218 の未知イオンの提案された構造とフラグメント経路。
m/z 459.1308 の疑似 MS3 は m/z 294.089 と m/z 192.0654 でのフラグメントイオンの中間生成物であることが明らかになりました。

未知化合物の構造解析のための効率的な 4 ステップ
LC/MS ワークフロー

この分析では、4 ステップ LC/MS ワークフローを使用してアムロジピン不純物を適切に解析しました。

第 1 ステップで、MS、MS/MS、疑似 MS3 を、高および低フラグメンタ電圧でサンプルあたり 2 回注入して実行しました。その後、3 つの異なるコリジョンエネルギーでデータ依存 MS/MS 取り込みを実行しました。

第 2 ステップはデータ解析ステップで、MS モードでの未知化合物サンプル解析により、分子特性抽出 (Molecular Feature Extraction; MFE) アルゴリズムを使用し 9 種類の化合物 (図 1) が明らかになりました。表 1 は、各化合物の分子式と質量誤差を示しています。

第 3 ステップで、フラグメンテーションパターン解析を実行します。PCDL ソフトウェアを使用し、未知化合物をフラグメント検索することによって解析します。図 2 は、既知化合物と未知化合物との間のフラグメントの類似性、損失、相違を比較しています。

この例では、アジレントのパーソナル化合物データベースライブラリ (PCDL) ソフトウェアを使用して、既知化合物の不純物標準のカスタムスペクトルライブラリが作成されました。PCDL のフラグメント検索機能と既知化合物の不純物のフラグメント部位比較機能を使用することによって、未知不純物の構造が提案され検証されました。ピーク 4 の m/z 294.0880 での MS/MS フラグメントは不純物 E で見つかり、m/z 192.0653 でのイオンは不純物 H で見つかりました [1]。さらに、m/z 294.0880 でのイオンの疑似 MS3 スペクトルは、不純物 H および E の m/z 294.0880 でのイオンとフラグメンテーションパターンが類似していることを示しました。

第 4 ステップで、提案された構造を検査します。MSC と ACD ソフトウェアを使用して構造のフラグメント経路を検証します。

図 3 は、m/z 630.2215 でのイオンのフラグメント経路を説明しています。ACD ソフトウェアを使用し、提案された構造およびフラグメンテーションを確認しました。提案された構造は、ESI フラグメンテーションを選択することによってコンピュータ上で断片化されました。この結果から、フラグメント m/z 294.089 および m/z 192.0654 が生成され、予想されたフラグメンテーションメカニズムと一致しています。

Agilent LC/MS/MS による、医薬品中の不純物の
高速で高効率な分離

今回の例では、アムロジピン不純物の構造解析を説明しました。この解析の結果、9 種類の不純物化合物を分離して同定しました。それぞれの化合物はいくつか異なる化学構造があり、製品合成プロセス中に形成されました。市販の標準および工程内不純物サンプルを、Agilent 1290 Infinity LC システムQ-TOF-MS、疑似 MS モードを使用した高分解能精密質量 LC/MS および LC/MS/MS によって分析しました。既知化合物のフラグメンテーションパターンが求められ Agilent MassHunter PCDL ソフトウェアに保存されてカスタムデータベース内でのフラグメント検索を可能にしました。未知化合物について切断部位を確認し構造および部分構造を提案するために、Molecular Structure Correlator ソフトウェアを使用して既知標準化合物のフラグメンテーションの部位と経路を求めました。このように、インテリジェンスなソフトウェアと高分解能の精密質量データとの組み合わせにより、複数の不純物の構造を決定することができました。

この研究の詳細については、アジレントのアプリケーションノート 5991-6411EN を参照してください。

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