Access Agilent 2016年4月号

オイルフリーのラボ用真空ポンプが
オイルの汚れと処理費を低減

Roberto Cerruti,、アジレントグローバルマーケティングマネージャ、真空機器

GC/MS システムの重要な構成部品の一つに真空システムがあります。高真空のターボ分子ポンプを使用した機器では、ラフポンプが必要です。これまで、GC/MS ユーザーには、ラフポンプとして従来から低価格のオイルシールロータリポンプが用いられており、代替となる手頃な価格のポンプがありませんでした。オイルシールポンプは定期的なオイル交換などのメンテナンスが必要で、オイル漏れのリスクがあり、ポンプから排出されるオイルミストが原因でラボの汚染が引き起こされることもあります。従来から販売されているダイアフラムポンプはオイルフリーですが、メンテナンスの問題を抱える高価な代替品です。ドライスクロールポンプ技術の発展により、真空ポンプの管理が行いやすくなり、メンテナンスサイクルが延長し、ラボのオイルフリーの環境を実現します。

ドライスクロールポンプの動作について

ドライスクロールポンプは渦巻き型ロータとステータで構成され、両方の表面に螺旋溝が機械加工されています。プレートが旋回すると、ポンプは一定体積の気体を封じ込めて、「インボリュート」に従ってその気体がポンプの中心に移送されます。中心に移送されるに従って徐々に圧縮されます。オイルの薄膜を使用してガスの気密性を維持するロータリポンプとは異なり、ドライスクロールポンプは厳密な公差とスライド式ガスケット (「チップシール」) によって気体がポンプの入口に後戻りするのを防止します。

簡略化されコスト効率の高いメンテナンス性

ダイアフラムポンプは、ダイアフラムが破裂して大気開放状態になってターボポンプに損傷を与える可能性があるため、少なくとも年に 1 回の完全なメンテナンスが必要です。ダイアフラムポンプの完全なメンテナンスは、ドライスクロールポンプのチップシールの交換よりもきわめて複雑です。

オイルロータリポンプでは、アプリケーションに依存しますが通常 6 ~ 12 か月ごとに劣化して変色するオイルを交換し廃棄する必要があります。ラフポンプのコストを検討する際には、使用済みオイルの廃棄費用も考慮すべき重要な事項です。

ドライスクロールポンプでは約 1 年間の連続使用後に 2 個のチップシールと 1 個の O-リングの交換が必要です。このシンプルなメンテナンス作業はオイルにまみれることもなく、通常のメンテナンススキルがあれば 30 分以内に完了できます(チップシール交換のビデオをご覧ください)。

故障モード: 突発的な故障に対する予測

ダイアフラムポンプの摩耗は予測することができないため、一般的にメンテナンスを計画することはありません。さらに、コストのかかる外付けシャットオフバルブが取り付けられていない限り、ダイアフラムポンプの故障によって、ターボポンプが修復不能になるなどのより重大な結果を招く場合があります。

ロータリポンプの故障は通常、オイル切れまたは潤滑油経路内部の詰まりが原因です。ほぼすべてのロータリポンプのメーカーがオイルのサックバック防止装置を取り入れていますが、このようなシンプルなメカニズムであってもトラブルをなくすことは保証できず、アナライザ内部へのオイルの逆流によるトラブルが報告されています。

一方で、スクロールポンプのチップシールが摩耗するにつれて、ポンプの到達圧力はゆっくりと上昇し始めます。GC/MS のオペレータは通常この到達圧力の上昇を観察することはできませんが、定期的にチップシール交換などのメンテナンスすることによって、容易に管理できます。

ポジティブシャットオフバルブで機器損傷を防止

Agilent GC/MS のフィールドアップグレードの Agilent IDP-3 ドライスクロールポンプはポジティブシャットオフバルブがポンプ注入口に取り付けられています。異物粒子がフォアラインに入りポンプに損傷を与えるあらゆる可能性を排除するために、バルブの動作はポンプによって制御されます。ポンプのスイッチを切ると (または停電が発生すると)、バルブは即座に閉じてターボポンプや MS アナライザのフォアライン内の真空を維持し、機器を安全にシャットダウンすることができます。

図 1. MS のアサインと相対強度は、ロータリポンプ付きのGC/MS と Agilent IDP-3 ドライスクロールポンプ付きの GC/MS でほぼ一致しています。

図 1. MS のアサインと相対強度は、ロータリポンプ付きのGC/MS と Agilent IDP-3 ドライスクロールポンプ付きの GC/MS でほぼ一致しています。

図 2.アナライザとフォアラインの圧力をベースレベル (カラム流量 = ゼロ) に戻すための時間はロータリポンプと Agilent IDP-3 ドライスクロールポンプでほぼ一致します。

図 2.アナライザとフォアラインの圧力をベースレベル (カラム流量 = ゼロ) に戻すための時間はロータリポンプと Agilent IDP-3 ドライスクロールポンプでほぼ一致します。

比較可能な分析性能

Agilent IDP-3 ドライスクロールポンプとオイルシールロータリポンプの性能を比較するために、分析性能、真空性能、ポンプから発する騒音について確認をしました。分析性能を確認するために、GC/MS の出荷時の性能確認テスト、つまりオイルシールポンプ付き GC/MS に適用するのと同じテストを実施しました。図 1 は 2 種類のポンプオプションのバックグラウンドスペクトルを示しています。各分析性能テストで、Agilent IDP-3 ドライスクロールポンプはオイルシールポンプよりも同等かそれ以上の結果です。

真空性能: 回復時間の一致

サンプル注入後にシステムから排気する GC/MS ラフポンプの能力は機器のサンプルスループットと直接関係します。最悪の状況として、Agilent IDP-3 ドライスクロールポンプを取り付けた GC/MS に、30 mL/min の ヘリウムでカラムを洗浄した後に GC/MSの ベースライン圧力まで復帰す流ためのポンプ性能を試験しました (図 2)。

騒音低減によるより適切な作業環境の実現

一般的に、GC/MS 内のフォアポンプによって発生する騒音は GC/MS から発生する騒音の主な原因です。 5 台の Agilent IDP-3 ドライスクロールポンプの平均騒音を、オイルシールロータリポンプのものと比較した結果では、IDP-3 は 4 箇所のの相対的な観測位置のうち 3 箇所では一貫して 2 dBA 低い結果となりました。なお、残りの1 つの位置の結果については不確定でした。騒音の単位は対数的なデシベルスケールのため、騒音が 2 dB 低減することは大きな改善であり、GC/MS のオペレータにはとても嬉しいことです。

オイルフリーへの移行

オイルフリーの Agilent IDP-3 ドライスクロールポンプは、ターボポンプ Agilent GC/MS システムをオイルフリー技術へ移行するための鍵であり、簡単に行えるアップグレードです。このシンプルで手頃な価格のアップグレードの詳細をぜひご確認ください。維持コストが低く環境への負担の少ないドライポンプ技術を活用することで、面倒なオイル交換や使用済みオイルの破棄が不要になります。