Access Agilent 2015年10月号

アジレントの統合型ソリューションによる 水中の汚染物質のノンターゲットスクリーニングとプロファイリング

Sylvain Merel and Shane Snyder
アリゾナ大学、米国アリゾナ州ツーソン

Craig Marvin
アジレントグローバル環境産業マネージャ

水道水源 [1] および消毒処理済みの飲料水 [2] に微量濃度で含まれる規制対象外の新規汚染物質に対しても、水質および安全性に対する消費者の関心が高まっています。その一方で、水道施設は、深刻化する水不足と水質悪化という課題に直面しています [3]。加えて、給水量を確保するための再利用処理水のモニタリングは複雑化しています。これは、再利用に使用される廃水中に含まれる多種多様な化学汚染物質およびその代謝物の存在によります。これらの物質は、水の生物処理または酸化処理によって生じ、化学的にも毒性学的にも未知の複数の化学物質を生成する前駆物質となりえます [4]。

これらの分析に最適なツール

廃水を再利用するためには、新規汚染物質と副生成物をモニタリングできる高度な分析ツールが必要です。精密質量四重極飛行時間型 (Q-TOF) 質量分析計は、水中に微量濃度で含まれる数千種類の有機化合物を低 ppm の真度で検出し、定量することができます。これを実証するために、ZORBAX Eclipse Plus C-18 カラムを装着した Agilent 1290 Infinity II LC システムAgilent 6540 Q-TOF LC/MS を使用して、さまざまなオゾン濃度で処理した複数の廃水サンプルを分析しました。データ処理には、Agilent MassHunter ソフトウェアAgilent Mass Profiler Professional ソフトウェアを使用しました。

図 1 は、異なる濃度のオゾンに暴露した廃水サンプルを 3 回注入して得られたトータルイオンクロマトグラムです。このクロマトグラムから、サンプル間で一致している部分および組成の違いは目視でおおまかにわかりますが、詳細な解析はできません。

未処理の廃水とさまざまなオゾン濃度で処理した廃水の全イオンクロマトグラム (TIC)

図 1. 未処理の廃水とさまざまなオゾン濃度で処理した廃水の全イオンクロマトグラム (TIC)(図を拡大)

未処理の廃水とさまざまなオゾン濃度で処理した廃水の全イオンクロマトグラム (TIC)

図 1.未処理の廃水とさまざまなオゾン濃度で処理した廃水の全イオンクロマトグラム (TIC)

PCA により、異なるオゾン量で処理したサンプルを明確に区別できることがわかりました。また、各グループの 3 回の繰り返し分析結果はほぼ集束しています。

図 2. PCA により、異なるオゾン量で処理したサンプルを明確に区別できることがわかりました。また、各グループの 3 回の繰り返し分析結果はほぼ集束しています。
(図を拡大)

PCA により、異なるオゾン量で処理したサンプルを明確に区別できることがわかりました。また、各グループの 3 回の繰り返し分析結果はほぼ集束しています。

図 2. PCA により、異なるオゾン量で処理したサンプルを明確に区別できることがわかりました。また、各グループの 3 回の繰り返し分析結果はほぼ集束しています。

アジレントの包括的なソフトウェアによる汚染物質の抽出

Agilent MassHunter Workstation ソフトウェアでは、各クロマトグラム (図 1) から分子構造を抽出し、各サンプルの詳細なプロファイルを作成することができます。また、Agilent Mass Profiler Professional ソフトウェアの化合物アラインメント機能では、リテンションタイムと精密質量から、候補対象物質を絞り込むことが可能です。ブランク溶液で検出された化合物をフィルタリング処理の解析により、廃水サンプルから 23,574 種類の化合物が検出されました。そのうち 13,996 種類の化合物は、2 回以上 (同じサンプルの 2 回以上の繰り返し分析で、または 2 つ以上のサンプルで) 検出されたものです。これらの化合物に対して回帰分析を実行し、さらに偽陽性を排除しました。

回帰分析には、Agilent MassHunter Qualitative Analysis ソフトウェアを使用し、クロマトグラムで、最初のフィルタリングにより単離された 13,996 種類の化合物をもう一度調べました。化合物固有の検索を実行したところ、12,889 種類の化合物が特定されました。統計的に関連性の高い化合物 (p 値および倍率変化分析にもとづく) のみを残すために、Agilent MPP ソフトウェアを使用して、回帰分析で得られた化合物をさらにフィルタリングしました。これにより、ブランク (抽出済みの HPLC グレードの水) では検出されず、かつ少なくとも 1 つのオゾン濃度で処理した廃水サンプルの 3 回の繰り返し分析において 100 % 検出された化合物のみを解析するために選択しました。このフィルタリングで残った化合物は 9,493 種類でした。

オゾンへの暴露量にもとづくサンプルの特定には、主成分分析を使用しました。図 2 から、すべてのオゾン濃度を他と区別できること、また各オゾン濃度で処理したサンプルの 3 回の分析結果がほぼ収束し、優れた再現性を示していることがわかります。

廃水中に存在する化学物質に対するオゾン処理の影響をさらに分析するために、階層的クラスター分析 (HCA) を実行しました。その結果、オゾン処理への反応がそれぞれ異なる複数の化合物群が判明しました。そのうち 2 つの化合物群はオゾンにより除去されたもので、3 つの化合物群はオゾン処理により形成されたものです。また、化合物の中には、オゾン処理に対する耐性を持っているものもありました。

化合物を容易に同定

オゾン量によってアバンダンスが大きく異なる化合物を区別するために、Tukey法を用いて分散分析 (ANOVA) を実行しました。その結果、回帰分析により同定された 9,493 種類の化合物から、オゾン量によってアバンダンスが大きく変化する 8,244 種類の化合物を特定しました (p <0.05)。表 1 に、異なるオゾン量で処理した各サンプルを Tukey法で比較した結果をまとめます。この表から、アバンダンスが大きく異なる、またはあまり変化しなかった化合物の数がわかります。

 

オゾン濃度 (ppm)

オゾン濃度
(ppm)

 

0

1.5

3.0

4.5

5.6

0

8244

4548

5524

6083

6150

1.5

3736

8244

3083

4299

4843

3.0

2720

5161

8244

2476

3395

4.5

2161

3945

5768

8244

2226

5.6

2094

3401

4849

6018

8244

アバンダンスが変化した化合物
アバンダンスがあまり変化しなかった化合物
同じサンプルグループ同士の比較

表 1. オゾン量によってアバンダンスが変化した化合物の数 (ANOVA、p < 0.05)

ルーチンの廃水のターゲット分析では、水中に存在する多数の化合物のすべてを同定することはできません。水処理の過程で起こる水質変化のモニタリングには、Agilent MassHunter ソフトウェアAgilent 6500 シリーズ Accurate-Mass (Q-TOF) LC/MS を用いた廃水サンプルのノンターゲットスクリーニングが高感度のソリューションとして有効です。ノンターゲットスクリーニングによる環境水中の新規化合物の検出に関する詳細については、アジレント文献 5991-4417EN(英語) をご覧ください。

アジレントの幅広い水中汚染物質の分析ソリューション

アジレントは、LC/Q-TOF 以外にも、水中新規汚染物質の分析の効率および感度を高めるサンプル前処理ソリューションと自動化ソリューションも開発しています。例えば、Agilent 1200 Infinity シリーズオンライン SPE ソリューション (FlexCube) は、豊富な分析対象物に対応し、低い検出下限とハイスループットを実現するプロセスにより、マトリックスを除去することができます。

この SPE プラットフォームは、Agilent 6460 トリプル四重極 LC/MSMassHunter ソフトウェア、HPLC カラム、および複数のサンプルに繰り返し使用可能なアジレントの固相抽出カートリッジで構成されています。この統合ソリューションでは、少量のサンプル (2 mL 未満) を、新規汚染物質の高性能分離が可能な高速でコスト効率の高いプロセスで試験することが可能です。時間節約に貢献するアジレントの高感度ソリューションの詳細については、アジレント担当者にお問い合わせください。

References

  1. Kolpin, D. W. et al. Pharmaceuticals, hormones, and other organic waste contaminants in U.S. streams, 1999-2000: a national reconnaissance. Environ. Sci. Technol. 2002, 36, 1202-1211 (2002).
  2. Benotti, M. et al. Pharmaceuticals and endocrine disrupting compounds in U.S. drinking waters. Environ. Sci. Technol. 2009, 43, 597-603.
  3. Arnold, R. G. et al. Direct potable reuse of reclaimed wastewater: it is time for a rational discussion. Rev. Environ. Health 2012, 27, 197-206.
  4. Anon. Water Reuse: Potential for Expanding the Nation’s Water Supply Through Reuse of Municipal Wastewater; National Research Council of the National Academies, The National Academies Press Washington, DC. 2012.