Access Agilent 2015年9月号

アジレントの GC カラムによる 高速かつ正確な PAH 分析が食品安全性の確保に貢献

Laura Provoost
アジレントGC カラムプロダクトマネージャー

多環芳香族炭化水素 (PAH) は、発がん性で知られる化合物群です。PAH は、環境から食品へと取り込まれたり、食品加工の過程で生成されたものがそのまま残留することもあります。一部の PAH は発がん性および変異原性があるため、規制対象となる PAH の範囲は定期的に見直されています。このような見直しにより規制が改正されると、それまでモニタリングしていなかった PAH の定量および分離が必要になります。

例えば、ベンゾ[a]ピレンは、食品中の発がん性 PAH の存在を判断する適切なマーカと考えられ、最近まで唯一の規制対象 PAH でした。現在は、ベンゾ[a]ピレンにクリセン、ベンゾ[a]アントラセン、およびベンゾ[b]フルオランテンを加えた 4 種 (PAH4) が欧州食品安全機関により適切な指標として推奨されています。

米国 EPA (環境保護庁) または EU が指定する優先 PAH (15+1 種) を正確に定量するには、質量分析またはクロマトグラフィー、あるいはその両方を用いて個々の PAH を分離しなければなりません。ところが、GC/MS 分析では、共溶出する一部の PAH がまったく同じ MS フラグメンテーションパターンを示します。そのため、確実な同定と正確な定量を行うには、最適化されたキャピラリカラムの が不可欠です。

継続的に改正される規制環境に対応していくために、この記事では、食品中の PAH の分析例をいくつか取り上げ、Agilent J&W Select PAH GC カラムを用いた GC/MS について考察します。この選択性の高い革新的なカラムにより、PAH の正確な分析が可能です。Select PAH は、関連する異性体を 1 回の分析ですべて分離できるため、偽陽性や不正確な結果を回避できます。

図 1. ベンゾ[a]アントラセン (20)、シクロペンタ[c,d]ピレン (21)、クリセン (24)、および干渉するトリフェニレン (23) の分離 (青: m/z 226、赤: m/z 228)

図 1. ベンゾ[a]アントラセン (20)、シクロペンタ[c,d]ピレン (21)、クリセン (24)、および干渉するトリフェニレン (23) の分離 (青: m/z 226、赤: m/z 228)(図を拡大)

図 1. ベンゾ[a]アントラセン (20)、シクロペンタ[c,d]ピレン (21)、クリセン (24)、および干渉するトリフェニレン (23) の分離 (青: m/z 226、赤: m/z 228)

図 1. ベンゾ[a]アントラセン (20)、シクロペンタ[c,d]ピレン (21)、クリセン (24)、および干渉するトリフェニレン (23) の分離 (青: m/z 226、赤: m/z 228)

図 2. ベンゾ[b]フルオランテン (27)、ベンゾ[k]フルオランテン (28)、ベンゾ[j]フルオランテン (29) の分離 (m/z 252)

図 2. ベンゾ[b]フルオランテン (27)、ベンゾ[k]フルオランテン (28)、ベンゾ[j]フルオランテン (29) の分離 (m/z 252)
(図を拡大)

図 2. ベンゾ[b]フルオランテン (27)、ベンゾ[k]フルオランテン (28)、ベンゾ[j]フルオランテン (29) の分離 (m/z 252)

図 2. ベンゾ[b]フルオランテン (27)、ベンゾ[k]フルオランテン (28)、ベンゾ[j]フルオランテン (29) の分離 (m/z 252)

Agilent J&W Select GC カラムによるサケ中の PAH の同定と測定

最初に、サケ中の PAH の分析例について考察します。この測定では、GC/MS を SIM (選択イオンモニタリング) モードで測定し、Agilent J&W Select PAH GC カラムを使用しました。サンプルには、認証物質に EU 規制対象の優先 PAH と、主な干渉物質であるトリフェニレンを添加したものを使用しました。PAH の濃度は 1~7 ppb の範囲で変化させました。

グループ

PAH

分子量

1

ベンゾ[b]フルオランテン (BbF)、
ベンゾ[k]フルオランテン (BkF)、
ベンゾ[j]フルオランテン (BjF)

252

2

クリセン (CHR)、トリフェニレン (TR)、
ベンゾ[a]アントラセン (BaA)、
シクロペンタ[c,d]ピレン (CPP)

226、228

3

インデノ[1,2,3-cd]ピレン (IcP)、
ベンゾ[b]トリフェニレン (BtP)、
ジベンゾ[a,h]アントラセン (DhA)

276、278

4

ベンゾ[b]フルオレン (BbF) および
ベンゾ[c]フルオレン (BcF)

216

図 1 および 2 に示すように、Select PAH カラムでは、4 つの主要なピークをクロマト分離することができます。トリフェニレンとクリセンが 50 % の谷で分離していることから、EU 規制対象の優先 PAH および PAH4 で指定されているクリセンを明確に定量することができます (図 1)。

図 2 では、ベンゾ[a]アントラセン (分子量 228) が、同じ質量数の 干渉物質と十分に分離しているのがわかります。また、ベンゾ[b]フルオランテン、ベンゾ[k]フルオランテン、およびベンゾ[j]フルオランテンが最適な状態で分離しています。

クリセンとトリフェニレン、および 3 種類のベンゾフルオランテン異性体をどちらも分離できるのは、Agilent J&W Select PAH GC カラム独自の機能です。また、このカラムは、高分子量のジベンゾピレンを、低カラムバックグラウンドで良好な S/N 比のシャープなピークとして溶出します。

この分析の詳細は、アジレントの文献 SI-02424 (英語) で自由にご覧いただけます。この文献では、EU 規制対象のすべての優先 PAH (15+1 種)、米国 EPA が指定する優先 PAH、サケマトリックスにおける干渉異性体などの PAH を 30 分の GC/MS 分析でより正確に測定する Select PAH カラムの可能性について説明しています。

図 3. ミルクチョコレート抽出物 (黒線) マトリックスと PAH 標準物質 (赤線) のクロマトグラムの重ね表示。10 ppb で良好なレスポンスが得られており、最後に溶出している成分群には干渉イオンがありません。カラムには、Agilent J&W Select PAH、15 m x 0.15 mm、膜厚0.10 µm を使用しています。

図 3. ミルクチョコレート抽出物 (黒線) マトリックスと PAH 標準物質 (赤線) のクロマトグラムの重ね表示。10 ppb で良好なレスポンスが得られており、最後に溶出している成分群には干渉イオンがありません。カラムには、Agilent J&W Select PAH、15 m x 0.15 mm、膜厚0.10 µm を使用しています。(図を拡大)

図 3. ミルクチョコレート抽出物 (黒線) マトリックスと PAH 標準物質 (赤線) のクロマトグラムの重ね表示。10 ppb で良好なレスポンスが得られており、最後に溶出している成分群には干渉イオンがありません。カラムには、Agilent J&W Select PAH、15 m x 0.15 mm、膜厚0.10 µm を使用しています。

図 3. ミルクチョコレート抽出物 (黒線) マトリックスと PAH 標準物質 (赤線) のクロマトグラムの重ね表示。10 ppb で良好なレスポンスが得られており、
最後に溶出している成分群には干渉イオンがありません。カラムには、Agilent J&W Select PAH、15 m x 0.15 mm、膜厚0.10 µm を使用しています。

チョコレート中の PAH をすばやく簡単に検出

多くの食品を直火で焼くと PAH が発生することが広く知られています。ココア豆やピーナッツなどに使用されるロースト加工も PAH 発生の原因となります。通常、これらのマトリックスから ppb レベルの微量成分を分離するのは困難で時間もかかります。ところが、理想的な形で GC/MS 用のサンプル精製を行えなくても、サンプルの PAH を抽出および分析することは十分に可能なのです。それを実現するのが、Agilent J&W Select PAH GC カラムと最適化されたGCオーブン温度プログラムです。この手法を用いることで、PAH 異性体を分離し、全体的な分析時間を最短化できます (図 3)。分析時間は約 60 分間で、すべての PAH が 30 分以内に完全に溶出します。共溶出するココアバタートリグリセリドのカラムベイクアウトには、さらに 30 分必要です。

GC カラムの寿命を維持するために、ウール入りの Agilent ウルトライナートライナを使用し、抽出物から非揮発性物質をトラップすることをお勧めします。

Agilent J&W Select PAH GC カラムと最適化された温度プログラムを使用すれば、PAH 異性体を十分に分離し、規制項目を満たすことができます。また、カラムの長さがわずか 15 m のため、トリグリセリド含有量の多いミルクチョコレートや油脂でローストしたピーナッツなど、実世界のサンプル抽出物の分析間で必要となるベイクアウト時間を抑えることができます。

アジレントのソリューションで PAH の分析ワークフローを改善

この記事で紹介した実験の詳細は、アジレントの文献 SI-02451 (英語)および 5991-2299EN (英語)でご覧いただけます。クロマトグラフィー性能を高め、食品中の PAH の定量を容易にするアジレントの幅広い装置、カラム、および消耗品をぜひご利用ください。アジレントでは、完全なワークフローソリューションの一環として、サンプル前処理、分析、およびレポートツールも用意しています。アジレントの製品ポートフォリオおよびソリューションがあれば、ラボのサンプルスループットを最大限に高め、最適な分析性能を維持することができます。食品安全性を守るラボ業務にアジレントのソリューションがいかに役立つか、ぜひご覧ください。